Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

トリコロール 赤の愛

2013-04-17 | 映画(た行)

■「トリコロール 赤の愛/Trois Couleur Rouge」(1994年・フランス=ポーランド)

●1995年セザール賞 音楽賞
●1995年シカゴ批評家協会賞 外国語映画賞
●1994年LA批評家協会賞 外国語映画賞
●1994年NY批評家協会賞 外国語映画賞

監督=クシシュトフ・キェシロフスキ
主演=イレーネ・ジャコブ ジャン・ルイ・トランティニャン

 「トリコロール」三部作の中で唯一観ていなかったのが「赤」。映像と音楽の調和がこの上なく美しかった「青」、洗練されたセックスコメディだった「白」。今回やっと観た「赤」が描くのは人間関係の難しさ。でもそれ故に人生は深いし、面白い。フランス映画だからなし得る人間観察のドラマだ。登場する人物は誰もが何かしら問題を抱えている。それらは不思議な共通点で結ばれているのだが、それらの対比が実に見事なのだ。

 例えば、人と人とのコミュニケーションの道具である電話。冒頭、ドーバー海峡を渡る電話線をカメラはハイスピードで撮り続ける。ヒロインのイレーネ・ジャコブはイギリスにいる恋人と遠距離恋愛中。だが嫉妬深い彼氏は、言い寄られることが多いモデルの仕事にも理解を示してくれないし、ちょっと電話に出ないだけで妙な勘ぐりを入れてくる。一方、犬を轢いたことで知り合った退官した判事ジャン・ルイ・トランティニャンは、その電話を盗聴することを楽しみにしている人物。彼はそこに真実があるとまで言う。人が人に関心を持つことが行き過ぎると醜い。ヒロインにとって電話は恋人と自分をつなぐ心の拠り所なのに、電話を通じて彼女は不快な思いをすることになる。他にも法律書のエピソードやラストのドーバー海峡での事故のエピソードなど、判事の思い出と現実とが不思議な接点で結ばれていく。そして全三部作を結ぶラストシーン。これはとってつけたような印象もあるけれど。運命とは不思議なもの・・・淋しい法律家青年とイレーネ・ジャコブのこれからを暗示するようなツーショット。それをTV画面で確かめた後、退官判事は静かに微笑む。トランティニャンが次第に心を開いていく様子は見事な演技だ。

 不思議な伏線が張られた物語の面白さや役者陣の演技もいいのだが、何よりもこの映画は絵になる。その映像美にとにかく酔わされるのだ。巨大な広告とされたイレーネ・ジャコブの赤を背景にした表情、劇場の真っ赤な椅子、赤い自動車・・・。フランス国旗の赤は”博愛”の意味だそうだ。この映画は香り豊かな赤ワインのイメージ。人生のように少しだけ苦い。カンヌ映画祭で受賞を逃したことで、現地の新聞は「審査員たちは”赤”を観ていないのか!」と書き立てたとか。そのときのパルムドールが・・・「パルプ・フィクション」。うーむ。タランティーノファンの僕としてはどちらを擁護すべきなのかなぁ?。

(2004年筆)





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