■「千年の恋 ひかる源氏物語」(2001年・日本)
監督=堀川とんこう
出演=吉永小百合 天海祐希 常磐貴子 渡辺謙
配役にあたって
「光源氏を演じられる男優って今誰かいるかね?」
「いっそ宝塚のノリでやったらどうでしょう。」
ってな会話が東映社内で展開されたかどうかは知らないが、おそらく近いノリはあったのだろう。かくして東映女優のあまたさぶらひ給ひける正月映画のできあがり。
80年代のアニメ版(ちなみに光源氏の声は風間杜夫)のときは現嫁サンにずーっと解説してもらっていたんだよねー。恥ずかしながら「源氏物語」の知識が乏しい僕には、このテンポのよい2時間30分はなかなか楽しいものだった。お陰で自分の中の雑然とした「源氏物語」がすっきり整理できた気がする。これからいろんな事を知っていけばいいのだ(・・・と勉強不足の自分を正当化する)。
和歌を詠んで思いを伝え合うのは当時の恋愛コミュニケーションの重要な手段である。この映画のテンポのよさは、文語の世界と出てくる和歌をじっくり鑑賞する時間を与えない。それが残念だ。むしろ感情込めたナレーションでも入れてくれればよいのにと思うところも。道長が式部の部屋へ来て壁越しに和歌詠み合うあたりも、今の若いコたちは何やってんだろ?と思うんだろうな。ああいう情緒がいいと思うのだけれど。それに説明的な台詞がやたら多いのは気になった。
「藤壷様に私の子かどうか確かめねば・・・」
そんなこと口にしながら歩かねぇだろ。それに明石の入道が見た「お告げ」の仰々しい演出!(波をバックに行くのじゃぁぁ!)。あれは台詞で十分なのでは。
松田聖子の揚羽の君はやたら悪く言われているけれど、ディズニーアニメなんかだったら、登場人物の感情を説明するべく歌を挿入するのはよくあること。日本がやるとどうしてこうも浮いてしまうのだろう?(まぁ聖子は文字通り宙に浮いていたけど)。それにしても、吉永小百合の紫式部はお見事。知的で人間的で芯の強さを持つ式部像は実に魅力的。常盤貴子演ずる紫の上と抱き合うシーンがあーだこーだ言われているけど、あの後の物語をどうしようか式部は考えていた訳だし、囲われずにいることが幸福だと決断する紫の上と、道長の元を去る式部とが重なるいい場面だと僕は思ったんだけどな。常磐貴子もいいけど、僕は南野陽子(朧月夜)がよかった。
(2001年筆)
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