Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ぼくは怖くない

2013-09-09 | 映画(は行)

■「ぼくは怖くない/Io Non Ho Paura」(2003年・イタリア)

監督=ガブリエーレ・サルヴァトーレス
出演=ジュゼッペ・クリスティアーノ アイタナ・サンチェス・ギヨン

 イタリア南部の貧しい小さな村。主人公ミケーレ少年は廃屋のそばに掘られた穴の中で、鎖で足をつながれた少年を見つける。何故彼はそこにいるのか?彼と村の大人たちとの驚くべき関係とは・・・。「エーゲ海の天使」のサルヴァトーレス監督がイタリアのベストセラー小説を映画化した本作は、厳しい現実と少年の純粋さを見事にしかもスリリングに描いている秀作だ。

 イタリア映画のお家芸は家族を描くところだと僕は思う。そして貧困を描かせたらイタリア映画は実に巧い。「鉄道員」や「自転車泥棒」などはその代表である。イタリアは北部と南部との間に経済的な格差があるとよく聞く。穴の底にいた少年が、村の大人たちによって身代金目当てに誘拐されたのだと知ったミケーレの衝撃。自分と同い年の少年を助けたいと思う純粋な気持ちと、大好きな両親への思い。一方でその誘拐が大人には生活のためだったりもする。「この”仕事”が終わったら海に行こう」などと言う父親の涙ぐましさ。「裸のマハ」のアイタナ・サンチェス・ギヨンが演ずる母親も、善悪の狭間で苦しむ大人のひとり。「大きくなったらこの村を出るのよ」の一言は、観ているこっちまで胸に迫るものがあった。自分の一途な思いと大人の事情のギャップが少年を苦しめる。そしてクライマックスで少年が選んだ方法は・・・そして皮肉な結末・・・。

 戦場で決死隊を決める方法と父親が言うマッチのくじびきが、前半と後半で見事な対比となっているのも巧い。そして何よりも広大な黄金色の麦畑の美しさ。平穏そうな風景とその裏の厳しい現実というギャップが物語をいっそう印象的にする。映画を通じて異国の現実を知るとき、僕は映画を観ていてよかったと心底思う。今年初めてそういう思いを抱かせた映画だ。もっと多くの人に観て欲しい。

(2004年筆)




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