亡国のイージス 福井晴敏 長谷川康夫 飯田健三郎 ジェネオン エンタテインメント 2005-12-22 売り上げランキング : 6887 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
監督=阪本順治
主演=真田広之 中井貴一 寺尾聰 佐藤浩市 勝地涼
阪本順治監督の映画はとにかく男のドラマだ。女性が入り込む余地はまったくない。僕は男臭い映画はどうも苦手としているので、この「亡国のイージス」もちょっと敬遠していた。海自・空自の全面協力で製作され、音楽にはハリウッドで活躍するトレバー・ジョーンズを迎えた。その意気込みを感じさせる力作となっていた。
この映画が扱っているテーマは、平和ボケと言われ続けている現代ニッポンに一石を投じてくれる。日本は「専守防衛」に徹する国だ。先に手を出すわけにはいかない。本当に敵と対峙したときには、劇中勝池涼演ずる如月が言うように”撃たれる前に撃つ”ことは本当は求められること。それができない日本。憲法9条のあり方が論議されている昨今、この映画を改正へのプロパガンダのように言う人もいる。でも最後まで人を信じたい・・・そういう思いがこの映画からは感じられるのだ。ラストの手旗信号や真田広之扮する仙石の台詞のひとつひとつに、そうした思いが込められている。爆弾落としてそれで終わりにするような国に日本はなっちゃいけないし、なるべきではない。ともあれ、こうした重い問題をエンターテイメントの形をとりながら提示してくれていることが重要なこと。
そりゃね、「ダイ・ハード」風にこの映画を観れば物足りなさも残るだろうし、中井貴一を始めとする個性の強い登場人物達を2時間強で描ききるのは困難。それに平和や国防といった社会的なテーマを描ききることにも中途半端だと酷評する人もいる。しかし、この映画はこれまで誰も正面見据えて扱えなかったテーマに、エンターテイメントとして挑んだところこそ評価するべきなのではないかと。爆弾落として任務完了とするようなエンターテイメントに毒された映画ファンこそが平和ボケなわけで、この映画で何か考えるきっかけになればそれはそれでいいじゃない。僕はそう思う。敵として戦っている者にまで「生きろ」と叫ぶ真田広之。犠牲は数が多い少ないの問題じゃなく、出しちゃいけない。それは公務員として、いや人としてあるべき姿勢だ。そして、平和憲法をもつ世界でも変わった国として、亡国と言われようが日本も生き続けていくべきなのだ。
それを貫こうとする姿がかっこいいですよね。
その人それぞれの考え方が、そう、美学にすら感じられる。
真田広之はいい役者になりましたよね。
「翔んだカップル」のチョイ役の頃とは大違いだ(比べるなっつーの)。