◼️「トリコロール/白の愛/Trois couleurs: Blanc」(1994年・フランス=ポーランド=スイス)
監督=クシシュトフ・キェシロフスキ
主演=ズビグニェフ・ザマホフスキ ジュリー・デルピー ヤヌシュ・ガヨス
カップルの間でなにかすれ違いが起こると、ついつい頭をよぎってしまうのは、愛し愛されていることのバランス。“あいつ、オレが思ってるほど、オレのこと愛してないんじゃないだろか“、だの“あの人よりも私の方が絶対愛してるのとおもうのよね“。郷ひろみのバラード「僕がどんなに君を好きか、君は知らない」なんか聴いて、その歌詞に黙ってうなづいてしまう世代でなくとも、人生の経験値は日々確実に上がって、男と女について思うことも、次第に変わってくるものだ。
さて本題。フランス国旗の三色、トリコロールの白は“平等“。本作は、夫婦の愛し愛されることをめぐるバランスをテーマに、前作「トリコロール/青の愛」とは全く違うブラックコメディに仕上がっている。しかも前作が女の哀感ならば、本作は男の哀感。おセンチな「青」に気持ちが乗らなかった男性陣は、こちらの方が身につまされてしまうのではなかろうか。
ジュリー・デルピー演ずる美しい妻から、性的不能を理由に離婚を迫られる主人公のポーランド人男性。愛情を確かめ合うのにセックスを大切に思う妻の気持ちに応えることができない。金も希望もなく、失意のうちに祖国へ帰る。じめじめした話、と思いきや、そこから先は一転してコメディ色が強くなる。祖国でひと山当てた彼は、危険かつ奇妙な行動に出ていく。
クライマックスは、女の愛を確かめるのにそこまでするのか?とも思えるが、その一途さこそが男の性(さが)だし、悲しいところだし可笑しいところ。実は、今の年齢でこれを再度観たいと思っている。初見だった頃とは自分の経験値も上がっているだろうし、かなり違うところに気持ちが反応するんではないかと。いつ観たって映画は映画だけど、観るべき年齢があるし、その年齢で観るべき映画もあるだろう。
透明感のあるジュリー・デルピーの美しさには見惚れてしまう。まさに”白”の配役にふさわしい。