◼️「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち/Good Will Hunting」(1998年・アメリカ)
監督=ガス・ヴァン・サント
主演=マット・デイモン ベン・アフレック ロビン・ウィリアムズ ステラン・スカルスガルト
ロビン・ウィリアムズは大好きな俳優の一人。僕が映画に夢中になり始めて映画雑誌を買い始めた頃、「ポパイ」で映画デビューした記事を目にしていた。その後の大活躍。好きな作品もたくさんあるし、彼が演じた人物や台詞に勇気づけられたこともある。2014年に亡くなるまでその活躍を観ることができたのは、同時代に映画ファンでいられたからだ。主演作で高く評価されて人気もあった彼だが、アカデミー賞を受賞したのはこの「グッド・ウィル・ハンティング」の助演賞のみ。だからどうだと言うつもりはない。この映画のマグワイア教授と同様、決して世間の評価を気にしてなどいないだろうし。
初めて観たのは日本公開当時。生息地の映画館での試写会だった。世間は「タイタニック」にキャアキャア言ってた頃で、僕はハリウッド大作離れが激しくなり、ヒューマンドラマに飢えていたから、当時の僕にはまさに"アタリ"だった。ベン・アフレックとマット・デイモンが手がけた脚本、ガス・ヴァン・サント監督の映像のつくり、ロビン・ウィリアムズの演技。文句のつけようがなかった。
さて。2022年4月にNHKが「多様性を考える」番組の一つとしてこの映画を放送した。なんでこの映画なんだろう。性的マイノリティが登場する場面なんてなかったし。「トーチソング・トリロジー」の方がいいんじゃない?と思った。ところが今回改めて観て、この映画を選んだ意味を考えさせられた。
この映画に登場する人物には様々な人がいる。(多少ネタバレを含む)孤児、里親による虐待、若くして遺産を相続したリッチ、学会で賞を獲得した成功者、妻を亡くして立ち直れない者、場末でくすぶってる者、才能ある者。出自、生い立ち、ついて回る過去がそれぞれを縛り付ける。ウィルを中心にした人物それぞれが抱えているものが観客に示される。それは対比される関係もあれば、才能への嫉妬めいた一方的なものもある。
僕らは多様性という言葉に向き合う時に、誰かをカテゴリーにはめ込んでいるのではなかろうか。性的嗜好が昔と違って呼び名が増えているように、宗教や人種の違いなど世の中には様々な人がいる。人々の生い立ちや生き方、考え方だって同じように様々だ。それを多様性と呼ぶことは間違いではない。尊重されるべきだし、否定されるべきではない。
この映画を番組のひと枠に選んだのは、ロビン・ウィリアムズが言う
「君のせいじゃない」
の台詞とあの場面が決め手だったのでは。それは"赦し"ではなくて、目の前にいる相手を"認めている"こと。誰もが欲しいのは理解してくれる誰かなのだ。マット・デイモンとロビン・ウィリアムズのこの場面と台詞が、視聴者に訴えたかったメッセージだと僕は思う。
(蛇足)
社会人になって最初の会社を辞める前の時期。先輩たちから、
「なんでお前がここにいるんだよ。」
と言われて、疎外感を感じていた。それから数年が経って、この映画を観た。ベン・アフレックが「親友だから言うけどな…」と、マット・デイモンに諭す場面。ベン・アフレックの顔に先輩が重なった。