Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

アメリカン・スナイパー

2015-05-02 | 映画(あ行)

■「アメリカン・スナイパー/American Sniper」(2014年・アメリカ)

●2014年アカデミー賞 音響賞(編集)

監督=クリント・イーストウッド
主演=ブラッドリー・クーパー シエナ・ミラー ルーク・グライムス ジェイク・マクドーマン

 イラク戦争に出征した狙撃手クリス・カイルの自叙伝を映画化。その射撃精度の高さから米兵からレジェンドと称されるのだが、その一方で敵側からは懸賞金をかけられ、自分自身は心に傷を負ってしまう。この映画化は戦績を挙げた人物を英雄視しているとか、米国万歳的な表現があるという感想もあるようだが、僕はイーストウッド監督にそういう意図があったとは思えない。史上最多の射殺者数で仲間を守った実在の狙撃手だけに、英雄視する見方があるのは仕方ない。キャサリン・ビグロー監督の「ハート・ロッカー」では、爆発物処理を担当する主人公が、それでも戦場に戻っていく姿が描かれた。戦争が麻薬のように人を蝕んでいく末路を描いた悲しいラストシーンだと受け止めるが、その後ろ姿に拳を振り上げ、歓喜を送ったアメリカ人は確実にいただろう。受け手によって印象が違うのは当然のこと。それは「アメリカン・スナイパー」も同じだ。ただ、上映時期がちょうど過激派組織ISの台頭と重なり、中東で活躍する米国兵士の物語に著しく関心が高まった。結果この映画は「プライベート・ライアン」を凌ぐ興行収入となったのだ。

 「アメリカン・スナイパー」で描かれたのは、戦場でクリスが悩みながら活躍する姿だけではない。戦争に関わった兵士や家族に突きつけられる厳しい現実と悲劇だ。戦地から戻った兵士たちを取り巻く現実の描かれ方は、「ディアハンター」や「ランボー」がベトナム帰還兵の問題を銀幕のこちら側に突きつけたように厳しい。何も映っていないテレビの前に座り続ける姿や、子供とじゃれる犬を抑えつけたりする行動。何よりも辛いのはアメリカに戻っているのに帰宅せずに酒場で過ごしている姿。イーストウッド監督は決して彼らを英雄賛美してはいない。主人公は作戦中に妻に電話して、自分の気持ちを話したり、帰りたいとつぶやいたりする。帰還後のクリスは帰還兵たちの力になるための活動をしていたが、凶弾に倒れてしまう。映画のラストシーンはクリスの葬儀。映し出される星条旗。そこに込められた気持ちは何だろう。僕は"米国万歳"だとは到底思えないが、感じ方は人それぞれだ。それでも男たちはこの国の為に戦ってきたんだという事実を、戦争による犠牲者として受け止めるのか、アメリカを守る為の功労者として受け止めるのか。「許されざる者」で映し出される星条旗もそうだが、そこに込められた思いは感じ方次第だろう。

 この映画が僕らをグイグイと引き込むのは演出の巧さ。砂嵐が迫る中での狙撃手との駆け引きが描かれるクライマックスは、かつてイーストウッド監督が出演していた西部劇の興奮を思い起こさせる。また決死の脱出劇は音声だけで表現される。オスカーを受賞した音響は本当に見事。妻となる女性と出会う酒場の場面、「男の人ってビール3杯で独身に戻れるのね」って台詞はうまい。

映画『アメリカン・スナイパー』予告編


アメリカン・スナイパー ブルーレイ&DVDセット (初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]アメリカン・スナイパー ブルーレイ&DVDセット (初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]

ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2015-07-08
売り上げランキング : 9

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ブログランキング・にほんブログ村へ 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする