Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ええかっこしい 評伝石津謙介

2012-02-05 | 読書
僕は「Men's non-no」を創刊号から読んでいたいわゆるDCブランド世代。成人式用のスーツに選んだのはニコルクラブ・フォー・メンだっけ。「ホットドッグ・プレス」読んでた友達に対抗して、自分はアイビー路線とはちょっと違うみたいなことを示していたけれど、それでもVANのロゴがつく衣類はクローゼットに今もいくつかある。この本に書かれているVAN全盛期の頃は小学生だった。それでもVANのかっこいいブランドロゴと、近所の紳士服店でVAN製品のバーゲンをやっていた光景は、おぼろげながら覚えている。大人達があのVANが倒産ねぇ・・・という反応を示していたことも。

創業者石津謙介氏の実像に迫るこの本。この人が出てこなかったら、男性の衣食住は今のようにはなっていなかったのではと思う。一過性のブームを作り上げた人なら古今東西いろんな人がいる。しかしファッションリーダーとしての石津氏が広めたのは、アイビールックだけではない。学生服とアロハシャツくらい(文中の表現)しか選択肢がなかった若い世代を目覚めさせ、また洋服の着こなし方を定着させた人でもある。正直なところ、僕はアイビールックをプライベートまでかちっとした格好をするファッションとしか思っていなかったところがある。”良質なものを大切に着る”という伝統が背景にあったということは、この本を読んで気づかされた。

VANのファッションが火付け役となり、ファッションやライフスタイルが変わりまさに風俗をつくるところに至る。おしゃれした若者がたむろする”みゆき族”のエピソードが面白い。彼らが風紀を乱すというので、VANが警察と組んでイベントを実施、石津氏の呼びかけで事態が収拾する。今こういう柔軟な発想、なかなかないと思うのだ。また石津氏が生み出した数々の造語は今でも活きているものばかり。「TPO(Time, Place, Occasion)」は、僕も学生にその大切さを説いていた側だけど、こうしたルーツがあるとは・・・不勉強でした(笑)。さらに「スタジャン」「トレーナー」など日常的に僕らが使ってきた言葉の数々。「ワードローブ戦略」とはこの本を読むまで意識したことはなかったけど、自然と着るアイテムを揃えることは実践してきているじゃない。石津氏の精神は今でも生きている。

そして読み終えて思ったのは、人生における人とのつながりの大切さ。仕事を支えてくれる仲間、商品を気に入ってくれた人々、着るものを通じて影響を受けた世代の人々。それらが苦しい時代から晩年までの石津氏の活躍を支えてくれている。また、豊かで自由な発想をできたのも、その裏に様々な経験、苦労と創意工夫があったから。そこを抜きに僕らは「かっこいい」とこの人を称えてはいけないと思うのだ。あなたがアイビーリーガーでも、そうでないと自負していても、この本で日本の男性ファッションを作り上げた男たちを学んでみるべきでは。その上で僕らは石津氏を「かっこいい」と言おうじゃないか。日々に流されてファッションにやや無頓着になりつつある最近の自分を変えなきゃいかんな・・・これもこの本を読んだ素直な感想でもあるw。



コメント (2)
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