《 気候変動への対応 》 【 地球存続をかけて取り組みたい 】 2014/11/5 地方紙「社説」記事より
[国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、「人類への最後通告」ともいえる統合報告書を発表した。急速な気候変動の影響を避けるため、温室効果ガス排気量を今世紀末にほぼゼロにする必要性を指摘したのだ。
気候変動防止については、各国の経済発展に伴う利害などが対立し取り組みが遅れてきたが、もはや国ごとのエゴが許される時代ではない。子孫につけを残さないために、国際社会の早急な意識改革と具体的行動が必要だ。
報告では、このまま放置すれば今世紀末には、20世紀末に比べ平均気温が最大で4・8度、海面水位が最大82㌢上昇する。生物は絶滅にひんし、魚種や穀物は分布が変わり食料安全保障が脅かされる。水害や高潮などの災害で環境難民が激増。貧困が悪化、紛争が起きるとしている。
事態回避のため人類に許される排気量は残り1兆㌧と明記。温室効果ガスを段階的に削減し、再生可能エネルギーの導入や二酸化炭素の地中埋設などで、今世紀末にほぼゼロにする方法を示した。
これほど切実な危機に人類は直面したことがない。ヒトとすべての生物の存続がかかっていることを、あらためて認識しなければならない。
報告書の意味は、重い。来年度に開かれる、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(CОP21)で採択を目指す、2020年以降の新枠組みへの指針となるからだ。
新枠組み採択に向け、米国や中国など「排出大国」は、削減目標案の提出へと方針転換。欧州連合(EU)も先月末、呼応するように明確な削減目標を設定した。
そんな中、日本だけ国際社会の動きに鈍感だ。9月の国連気候変動サミットでも、削減内容や目標の提出時期を示さなかった。排出量5位という自覚がないまま取り残されつつある。地球の未来という大局的視点が欠けていよう。
むろん各国とも産業界の反発は強い。しかし報告書では、対策が遅れるほど、後世にコストを強いることを指摘している。先延ばしにすれば、失われる損失が利益を上回ることは、各国の研究チームが検証済みだ。
報告書は千年後の地球も描いてみせた。このままではグリーンランドの氷床などが解け、海面は7㍍上昇する。回復不能な最終局面だ。それを招くのも阻止することができるのも「人類」である現実を、各国が共有する必要があろう。
無秩序な経済活動停止と、思い切った産業構造の転換が必要な時代に入ったと認識しなくてはならない。資源は有限であり地球は閉じた生態系を持つ。このままだと、地球は未来の世代まで存続できない。「ゼロ炭素社会」実現に向け今こそ正念場である。]
[国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、「人類への最後通告」ともいえる統合報告書を発表した。急速な気候変動の影響を避けるため、温室効果ガス排気量を今世紀末にほぼゼロにする必要性を指摘したのだ。
気候変動防止については、各国の経済発展に伴う利害などが対立し取り組みが遅れてきたが、もはや国ごとのエゴが許される時代ではない。子孫につけを残さないために、国際社会の早急な意識改革と具体的行動が必要だ。
報告では、このまま放置すれば今世紀末には、20世紀末に比べ平均気温が最大で4・8度、海面水位が最大82㌢上昇する。生物は絶滅にひんし、魚種や穀物は分布が変わり食料安全保障が脅かされる。水害や高潮などの災害で環境難民が激増。貧困が悪化、紛争が起きるとしている。
事態回避のため人類に許される排気量は残り1兆㌧と明記。温室効果ガスを段階的に削減し、再生可能エネルギーの導入や二酸化炭素の地中埋設などで、今世紀末にほぼゼロにする方法を示した。
これほど切実な危機に人類は直面したことがない。ヒトとすべての生物の存続がかかっていることを、あらためて認識しなければならない。
報告書の意味は、重い。来年度に開かれる、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(CОP21)で採択を目指す、2020年以降の新枠組みへの指針となるからだ。
新枠組み採択に向け、米国や中国など「排出大国」は、削減目標案の提出へと方針転換。欧州連合(EU)も先月末、呼応するように明確な削減目標を設定した。
そんな中、日本だけ国際社会の動きに鈍感だ。9月の国連気候変動サミットでも、削減内容や目標の提出時期を示さなかった。排出量5位という自覚がないまま取り残されつつある。地球の未来という大局的視点が欠けていよう。
むろん各国とも産業界の反発は強い。しかし報告書では、対策が遅れるほど、後世にコストを強いることを指摘している。先延ばしにすれば、失われる損失が利益を上回ることは、各国の研究チームが検証済みだ。
報告書は千年後の地球も描いてみせた。このままではグリーンランドの氷床などが解け、海面は7㍍上昇する。回復不能な最終局面だ。それを招くのも阻止することができるのも「人類」である現実を、各国が共有する必要があろう。
無秩序な経済活動停止と、思い切った産業構造の転換が必要な時代に入ったと認識しなくてはならない。資源は有限であり地球は閉じた生態系を持つ。このままだと、地球は未来の世代まで存続できない。「ゼロ炭素社会」実現に向け今こそ正念場である。]