何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

ポイントカードから見えるもの

2011-02-11 17:58:12 | 薬局経営
 以前から問題視されていたものの、昨秋より具体的に表面化してきた調剤ポイントカード。厚労省からの通知を受け、日本薬剤師会では自粛を呼びかけるものの、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)では会員に「冷静で常識的対応を」と言うに留まっている。派手にやらなきゃいいでしょ、1%であれば「過度には当たらない」のでお咎めなし、といった受け止め方だ。

 ポイントカードを行う“会社”に見られるのが、「行政に確認し、大丈夫」「厚労省に確認を取り、お墨付きをもらった」といった言い分である。当局が、具体的にどのような文言で伝えたのかは明らかではないが、ポイントカードを始めるにあたり、何らかの懸念、不安があったのは確かなようだ。そして調剤の自己負担金に対してもポイントを付与したかったのだ。

 ポイントとは、その店であれば使える金券と同じで、集客を目的とした道具である。「(調剤に際して)患者のためのもの」と述べる経営者もいるが、患者にとって支払い面に寄与するだけで、医学薬学的に意味のあるものではない。詭弁のように聞こえる。

 溜まったポイントを自己負担金の支払いに使用するのは減免にあたり、健康保険法に抵触するものの、ポイントを加算するだけで他の物品の購入に当たるのであればそれにあたらないとするのは、法的な解釈以前に「実質的な値引きと考えるのが普通の市民感覚」(RISFAX 2010.12.6)ということだろう。オブラートや包帯、絆創膏を買えるのだ。

 その“薬局”がポイントカードサービスを導入するという行為に対して、消費者はその組織が、その“薬局”はポイントカードで間接的に値引きを行い、患者を囲い込もうとしているのだということを瞬時に理解するだろう。下心以外の何ものでもなく、難しい話ではない。

 小売業なら構わない。しかし、薬局は医療提供施設である。一部負担金は「調剤」という医療行為によって発生するものだ。社会保障のひとつとして税金で賄われている行為にポイントを付与するのは、あなたの治療に支払われる税金の一部を肩代わりしますよ、と言っていることに等しい。税の一部を代わって支払うくらいなら、最初から今の調剤報酬の額を支払わなくても大丈夫ですね、と言われても仕方ないことになる。

 明確に禁止する規定がないことから、厚労省は最近の通知でも明らかに減免に当たれば「違反」であると述べるに留まっている。現在の状況は「シロ」ではなく、限りなく「グレー」ということではないか。
 ポイントカードを行う“薬局”も「グレー」だと思ったから、当初、厚労省に問い合わせたのだろう。「グレー」であれば、そこからはその組織の見識に委ねられる。照会した時点で「制限するものはない」とはいうものの、それはそのような法解釈に至ったのではなく、法律が追いついていないのだから、一部負担金に付与するという行為の意味を自ら考えて、常識的な対応をして欲しいという意味に解釈すべきだったと思う。

 ポイントカードを実施する“薬局”に対して透けて見えるのは、自己負担金の一部を還元して、集客してさらに売り上げを上げたいとする姿勢だ。売上げを上げる、伸ばすことを目的としている組織だ、ということだ。
 いかなる活動も維持、発展させるために相当の利益は必要であるが、医療費の一部を肩代わりしてまで売上げを上げようとするのは、もはや医療提供施設とはいえない。医療提供施設は、自身の職能や専門性を持って評価を受けるのを基本とすべきだろう。だからポイントカードがアリならば、医療法を再度改正して、医療提供施設から外してはどうかとさえいわれてしまう。

 ポイントカードを是認するのは、自らが小売業に立脚しており、売上拡大を活動の重要な目的とする会社であると宣言しているようなものだ。
 果たして6年生を経たこれからの薬剤師が就職するに、ふさわしい就職先と言えるだろうか。グレーな部分に対して理性的な判断が出来ないという側面も露呈した。ポイントカードさえしていなければ良いと、ただちに逆を言う事は出来ない(売り上げ優先で、医療提供施設を基盤としていなければ同じ)。
 ポイントカードを導入しているかどうかは外からも見える、わかりやすい指標である。将来、医療従事者としての薬剤師として活躍したいのであれば、どんなに求められても、そのようなところへの就職は、私ならお勧めしない。

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iPadが面白いほどわかる本

2011-02-11 10:21:05 | Book Reviews
「iPadが面白いほどわかる本」 ITCリサーチ・プロジェクト、中経の文庫、2010年9月1日

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