コースター転落死、東京ドームなど捜索 安全軽視、浮き彫り
産経新聞 2月2日(水)7時57分配信
東京ドームは当初、転落を防ぐ安全管理について、マニュアルに加え、口頭で指導を徹底してきたと説明。「乗客に安全バーを倒すよう呼びかけ、目視やバーを手で押すことで固定を確認する」としていた。
ところが、事故後の聞き取り調査では、口頭で「手で押して確認」することを指導されたことがない係員が複数いたことが判明した。同社はそれでも「最低限でも目視での固定確認を指導していた。特に大柄な乗客や子供客には注意を払い、安全管理に努めてきた」と強調するが、事故は起きた。
日本大学の船山泰範教授(刑法)は「あらゆる危険を想定して予防策を尽くすのは運営者の義務。現場の過失だけではなく、安全管理態勢に欠けた部分があったのではないか」と同社の対応に疑問を投げかける。
さらに、船山教授はマニュアルの整備▽安全管理を係員に順守させる教育▽施設の危険箇所にネットを張る-などの対策が必要だとし、「管理責任者自身が現場をこまめにチェックすることも不可欠」と訴える。
日本大学の青木義男教授(安全設計工学)は「不況の影響で、安全管理に十分な費用が充てられないケースがある」とした上で、「安全装置があっても、運用者全員が遊具の危険性を認識しなければ、事故は根絶できない」と指摘している。
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安全バー確認は日頃から目視…聴取でバイト説明
読売新聞 2月2日(水)3時4分配信
東京都文京区の遊園地「東京ドームシティアトラクションズ」で会社員倉野内史明さん(34)が小型コースターから転落死した事故で、安全バーの固定状況を点検する担当だったアルバイトの女子大生が警視庁の事情聴取に対し、「確認は日頃から目視で済ませていた」と説明していることが、捜査関係者への取材でわかった。
遊園地を運営する東京ドーム社(文京区)は「従業員にはバーを手で触って確認するよう指導していた」としているが、同庁は、同社の安全教育が適切だったかどうかについても調べを進めている。
同庁幹部によると、女子大生は安全バーの固定状況を確認し、発車ボタンを押す業務を一人で担当していた。同庁の事情聴取には、「利用者の体格などによってバーの固定具合が不安な場合は手で触っていたが、それ以外は目視で済ませていた」と話しているという。
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1人で座席確認、走行監視=実務上無理な規定で業務か―コースター転落死・警視庁
時事通信 2月2日(水)16時25分配信
東京都文京区の東京ドームシティアトラクションズで、コースターから羽村市の会社員倉野内史明さん(34)が転落し、死亡した事故で、20代の女性アルバイト1人がロック確認と走行中の監視を担当する規定になっていたことが2日、捜査関係者への取材で分かった。
女性アルバイトは車両1台を発進させた後、次の乗客に対応しなければならず、警視庁捜査1課は実務上、無理のある規定で業務させていたとみて、管理責任を記した書類などを調べる。
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「手でロック確認指導受けず」=体格で乗車拒否経験なし―コースター転落死でバイト
時事通信 2月3日(木)12時47分配信
東京都文京区の東京ドームシティアトラクションズで、コースターから羽村市の会社員倉野内史明さん(34)が転落し、死亡した事故で、安全確認の担当だった20代女性アルバイトが警視庁捜査1課の事情聴取に「手で必ずロック確認する指導は受けていない」と説明していることが3日、捜査関係者への取材で分かった。
女性バイトは「体格で乗車を断った経験はない」とも話しており、同課は東京ドームの指導体制や人員配置が不適切だったとみて調べる。
捜査関係者によると、女性バイトは同遊園地で約2年勤務し、コースターを任されて半年だった。
同社からロック確認をするよう定めたマニュアルを渡されていたが、具体的な方法は書かれておらず、事情聴取に「手で必ず全員のロックを確認する指導は受けていない」と話している。
客と安全バーにすき間があった場合のみ、手でロック確認し、「体格を理由に乗車を断った経験はない」と説明。着席時、大柄で体とバーが密着していた倉野内さんについて、ロックが利かず、乗車できないとの認識はなかったとみられる。
コースター運行に携わっていたほかのバイトも同様の証言をしている。
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コースター「舞姫」の運行に当たり、必要な指導をしてきたとする東京ドーム側と、そんなことは聞いていない、指導は受けていないとするアルバイト女子大生の間で食い違いが生じている構図だ。担当者に落ち度があったとする雇い主の姿勢に、アルバイトであっても職員を守ろうとする意識のなさを感じ、他の職員も「自分たちは大事にされていない、何かあれば非を押し付けられる」と思っているのではないか。
コースターが1回発車するたびに、何名の乗客がいるのかわからないが、果たして1人で「手で押して確認」することなど、毎回出来るのだろうか。やることは単純かもしれない。確認して、発車ボタンを押し、走行状況を確認し、次の乗客への対応も行う・・・。
やらなければいけないことに対して、担当者の人数が少なすぎるのではないか。少なくとももう1名担当者を増員していれば、防げたのかもしれないと思えば、十分な人数の担当者を置かなかったことが、管理責任だ。
1名に課せられた業務が多すぎれば、担当者はやることを簡略化するか、それこそ“手を抜く”ことにならざるをえない。それが「目視」ではないか。バーがお腹に当たっている・・・、きっと固定されているだろうというのは推測か思い込みにすぎない。
人気のアトラクションほど、行列ができる。次々と運行させなければ、さばききれない。どんどん動かそうとする思いが強ければ強いほど、安全確認は疎かにならざるをえない。
そうさせたのは誰か。
先に、コースター自体の安全確保の構造にも改善の余地があったのではないか、と述べた。
一方、そういうコースターを使用する以上、それを扱うスタッフへの「指導」に問題があったのではないか。「指導」とすると、とかく指示、命令的に言うだけ言って、実態は担当者任せにしているケースが多いが、ここで考えておきたいのは、顧客のために間接的であろうと一緒になって取り組もうとしている姿勢のことだ。
薬局でもそうだ。待ち時間に追われ、早く薬をお渡しするために汲々となっていることが珍しくない。そこで調剤事故があれば、管理側は指導をしており、やることを疎かにした現場に責任があり、自分たちは立場上の責任にすぎないとする傾向がある。このようなことを最前線にいる薬剤師はどう思うのだろうか。
今回のコースターでの事故、そして東京ドームの姿勢は、薬局にとっても共通項が多いように思われてならない。