今年のノーベル賞において2人の日本人―――大村智・北里大特別栄誉教授が医学・生理学賞を、梶田隆章・東大宇宙線研究所長が物理学賞をそれぞれ受賞されました。お二人の偉大な業績に心から敬意を表し、その栄誉を大いにたたえたいと思います。
大村先生が苦難の末に開発に成功した感染症特効薬は熱帯地方の10億人の命を救ったといわれます。梶田先生はニュートリノに質量があることを証明し、宇宙物理学のブレイクスルーに貢献されました。分野こそ違いますが、ご両名に共通するのは「世のため人のため」という志の気高さ。これこそ世界最高賞にお二人を至らしめた最大の原動力でしょう。
それにしても、今回を含む近年の日本人のノーベル賞受賞ラッシュは、わが国の科学技術力の高さを証明するもので、たいへん好ましいことと思います。しかも2000年以降、医学・生理学賞2名、化学賞6名、物理学賞8名と、各賞をまんべんなく受賞しているのも立派なこと(受賞時に他国籍の方も含む)。これはわが国の自然科学分野全般の研究や成果がトップクラスの水準にあるとともに、人類の進歩に大きく貢献していることを示すものです。
もちろん自然科学だけではありません。「もののあはれ」に起源をもつ日本文学もまた、世界各国で広く評価されているところです。今回は残念でしたが、川端康成氏、大江健三郎氏に続き、村上春樹氏(あるいは他の日本人作家)が日本人3番目の文学賞の受賞者になる日もそれほど遠くないことでしょう。
さらにいえば・・・ノーベル賞のジャンルにこそないものの、芸術等の分野でも日本人の活躍は顕著です。音楽や舞踏などの有名なコンクールでは毎年のように多数の日本人が上位の受賞者に名を連ねます。彼ら彼女ら、将来有望な若き才能が、わたしたち日本人が持つ感性で世界中の人々を魅了することを期待したいですね。
こうしてみると、日本の各界の業績はあらためて世界の一級品だと感じます。このようすを大学の学部でたとえると、文学部、理学部、工学部、農学部、医学部、そして芸術学部と、どこにもピカ一のものがある、といったあたり。これほどの学究環境を築き上げた日本という国は稀有であり、本当に素晴らしいと思います。だからこそ若い人にとっては、語学や芸術などの特殊な分野を除けば、日本の大学あるいは教育機関を進路に選ぶのが賢明だと考える次第です。
しかし・・・あらゆる学問領域がノーベル賞レベルに達しているわが国にも例外―――自然科学などと比べて見劣りするどころか逆に人類の進歩や世界・日本の発展の足を引っ張るような分野―――があったりします。それが・・・「経済学」ではないか・・・