Straphangers’ Room2022

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素直な客を求める真意

2013-08-29 00:11:00 | 交通
いすみ鉄道の社長が自身のブログで、いわゆる「団塊の世代」を歓迎しない趣獅フ記事を掲載したことが波紋を呼んでいます。
確かに現役世代が苦しい中、逃げ切って年金を十二分にゲットし、旅行など悠々自適の生活を送っている様子が目立つのみならず、やたら騒々しいとかマナーが悪いとか、芳しい話を聞かない世代でもあるわけで、「よく言った」という評価も目立ちます。

記事で批判されている様子など、まさに膝を打つ部分も多く、私自身も旅先や街中の飲食店などで辟易することも少なくないだけに、きちんと声を上げることの意味は大きいです。

しかし、それで溜飲を下げるだけでいいのでしょうか。
「団塊」に対する一般論として語ったのであれば、相当毒はありますが、逆に「敢えての正論」と言う評価になります。
しかし、自社の環境、自社のイベントに絡めて語った今回の記事は、経営者が自社に関係した内容で発信した内容として考えたら、かなり問題と言えます。

自社の「イタリアンランチクルーズ」が舞台ですが、確かにそこに薀蓄を垂れまくる団塊が押しかけたら、挙句の果てにケチだけつけておしまい、他の参加者も気分を害してしまいかねない、という話です。
でも、そこで批判すべきはあくまで「手がかかる」までにとどめるべきでしょう。空気が読めずに雰囲気をぶち壊す、と言う批判もありでしょう。

しかし薀蓄云々はどうか。これ、「団塊は本物を知らない」と決め付けているわけです。もしくは、目や舌の肥えた団塊が来ると鬱陶しい、つまり、ごまかしがバレる、と言っているに等しいからです。
せっかく本物を知らない30代、40代を騙そうと思ったのに邪魔になるから、と言うようにも読めますよ。あの書き方は。

ついでに言えば、バブル期のように高い=上等、と思い込んでいるのが団塊、と決め付けていますが、そんなに底が浅くないのです。
それこそ「安くておいしい」というような「隠れた名品」こそが薀蓄の源泉です。団塊向けの「大人のナンタラ」という雑誌の特集を見れば分かるように、段階の興味の先はそういう希少価値の発掘にシフトしているのです。

そう考えると、余計に「いすみ鉄道プロデュース」の底が知れることを恐れてオミットしました、と白状しているとしか言いようがありません。開拓したいのは40代以下の素直なお客様、というのも、比較するだけの尺度を持ち得ないから騙しやすい、御しやすい、ということでしょう。

ここまで書いて気がついたのは、人気の国鉄型気動車も同じコンセプトだということ。
木原線には、とか、千葉気動車区には、と言うような薀蓄は邪魔なのでしょう。
大糸線時代の内装で、「国鉄型でござい」というやり方は、実は山スカにヘッドマークをつけて「『白い砂』でござい」というのと本質は一緒で、それで満足するお客がいるのだからそれでいい、という良く言えば割り切り、悪く言えば騙しです。

そして、それなりに評価を受けている団塊批判も経営者としては「失格」でしょう。
開拓したいとする40代以下の客層の消費に対する余力の小ささを考えたら、収入を抑制するような経営方針が本当に妥当なのか。
オーナー社長で成功しようが失敗しようがオーナーの懐具合次第、というのではなく、税金が投入されていて、それでも厳しい状況にある会社です。

税金で「道楽」を重ねた上に、収入に寄与する可能性の高い客層をオミットするのは背任でしょう。
地域の公共交通を維持するために、申し訳ないがオンボロ気動車を購入させてください。それで生み出す観光需要で経営を楽にすることで、日常輸送を維持できるのです。という立場ですから、本来土下座して、靴の底を舐めてでも団塊(など観光客)を呼び込むのが仕事です。

ネットで集客すればいいのかもしれませんが、ガイドブックなどの観光関連の出版物に勢いがない中、旅行関係の記事が目立つのは、それこそ団塊向けの「大人のナンタラ」と言うジャンルくらいです。
もちろん「いずれいなくなる世代」というか、いち早くいなくなる世代ですから、生きている間に搾り取ると言う焼畑的な対応ではなく、将来を見据えた持続可能な施策として考えたら団塊のオミットも意味はあるものの、そこまで客を選べる余裕がない現状を弁えるべき、と言う厳しい現実に向き合っていないように見えます。

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