Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

検討と出来る限りの実施

2015-07-05 23:23:00 | 交通
新幹線の放火事件(火災事故)を受けて、新幹線や鉄道のセキュリティ体制への批判やその見直しが叫ばれているのに対し、「鉄」やおそらく「本職」と思しき人たちから、「新幹線でセキュリティチェックは現実を見ていない空論」「新幹線は出来たとしても在来線や都市内電車はどうする」という批判が出ています。

現実をよくご存じの方らしい意見であることは間違いないのですが、現実を絶対としているだけとも言えるわけです。要は何を優先するのか。これまではすぐ乗れる利便性を絶対的な価値として置いていたわけですが、今回のような事件、さらには外国では現実のものとなっているテロへの対応を考えた時、今の新幹線、いや、鉄道全体のセキュリティ対応は本当に正しいのか。それが問われているのであり、現状をまず疑う、現状にとらわれない議論が求められていることに気が付くべきです。

処理能力(=通過時間=利便性)と言う意味では、改札機の導入で実は低下しているのですが、不正乗車防止、確実な運賃収受という命題を優先させているわけです。あるいは「エスカレーターで手すりにつかまろうキャンペーン」も同種でしょう。歩くより遅いESで立ち止まるのですから、階段よりも処理能力は落ちますが、バリアフリー、ユニバーサルデザインを優先したわけです。安全性の優先と言う意味ではホームドアも然り。停車時間が伸びれば利便性の象徴でもある運転間隔が伸びますが、これも優先度をどちらに置いたかは自明です。

気が付きにくいだけで、他の優先すべき命題が発生したことで、利便性を低下する方向に動く例は既にあるわけですが、今回は乗客の「安全」「生命」にかかわる話であり、利便性を絶対視していい話ではありません。

そもそも問題なのは、対策が不十分、というよりも対策が無きに等しい、という現状です。
いろいろ検討したけど現状はこれが精いっぱいで、それで十分対応できる、と考えたところに想定外の事態が発生した、というのであればまだ情状酌量の余地はありますが、以前から「航空機と比較して...」とセキュリティの甘さが指摘されている状態で、何もしないに等しい状態で事態が発生した場合、事業者、そして監督官庁の責任は強く問われます。

現状の対応にしても、防犯カメラが全くに役に立たなかったわけです。火が付いてなお通報は乗客による非常ブザーであり、犯行を防ぐと書く「防犯」ではなく「傍観」カメラです。これでは。確かに後から犯人の挙動や人相風体はわかるでしょうが、もし大勢の犠牲者が出た後でそれが判ったからといって犠牲者の命は還りません。

まずは新幹線に何らかのセキュリティチェックエリアを設ける、という対応を検討することは必要でしょう。
幸か不幸か新幹線は専用改札で分離されているため、そこでチェックをすることが可能です。
山形、秋田のミニ新幹線がネックですが、それとて主要駅は分離されていますし、途中の小駅であれば列車本数がそんなに多くないのですから、列車別改札にするといった対応も考えられます。

チェック方法も、航空のような厳格な対応は無理としても、大きな荷物だけX線検査にかけるとか、あるいはランダムに中身を確認するとか、抑止効果が見込まれる対応を出来る限り実施すると言うことが考えられます。

その意味で一つ参考にしていいと思われるのは、先日終了した成田空港到着時の「検問」でしょう。
到着時ですから想定されるケースの逆ですが、鉄道の到着旅客「全員」に対して(いちおう)セキュリティチェックをしていたという意味では先例になるわけで、最大で毎時京成が9本、JRが4本の到着であり、時間帯によっては京成とJRがほぼ同時到着ですが、実際に捌いていたわけです。(乗客数はもちろん新幹線の比ではないですが)

もちろんあの「検問」はザルもいいところでしたが、いつ何時呼び止められるか、という抑止効果はあるわけで、実際、検問所で荷物を開けさせられている旅客はそこそこいたわけです。

ですから新幹線の場合も、キャリーバッグ、スーツケースの方はこちら、と言う感じでまずはスタートするのであれば負荷は小さいでしょうし、それなりに効果はあるでしょう。そしてなによりも「やっている」という実績になります。

とにかく、どうすればいいのか。をまず考えるべきであり、出来ないから現状で十分、ではないのです。
目の前の人に「逃げたほうがいいですよ」というような小心者の犯行でもこれだけの被害と犠牲を出したのです。それがもっと意思を持った犯行だったらどうなっていたのか。そのリスクを想定した時、「すぐ乗れる利便性」や「コスト」を絶対視していいのか。業界的には常識であっても、リスク管理的には非常識の域に見えるのです。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿