Straphangers’ Room2022

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どさくさ紛れ2

2011-03-28 00:49:00 | 震災・災害
震災とそれに続く原発事故で、東電、東北電管内の発電所が軒並み停止し、復旧のスケジュールがなかなか見えないことによる電力不足が呼んだ計画停電は、長期化の構えです。

火力発電の復旧や再稼動はありますが、原発に関しては福島第一は廃炉の可能性が高く、第二も第一の退避圏内のうえに、再稼動に対する地元の理解、了承は絶望的です。
それどころか柏崎刈羽の操業も、今回の震災を踏まえた安全対策追加に伴う一時停止は必至ですし、それに伴う再稼動もあるかどうか疑問ですから、この電源不足の状態は、新規に原子力以外の発電所を整備するまで続くことになるからです。

こうした状況が続けば、市民生活の水準低下が長期化するばかりか、経済活動への悪影響も深刻化するばかりであり、この悪循環をどう打破するのか、国民各層の知恵を寄せ合って解決していく必要があります。

このような非常事態においてまず必要なのは何か、ということを考えると、やはり電力の確保です。
電気は備蓄や移送が出来ず、かつ発電量が限られている状態では、どんなに大金を積んでも1kwhたりとも増えないという厄介なものです。

そうなれば生産サイドではより多くの発電所を建設したり稼働率を上げるしかありませんし、消費サイドではより一層の節電が必要です。
しかし消費サイドの制限には限度があります。日本経済を守り、家計を守るために必要な消費量というものは実は減らしようがないのです。

こうした苦しい状況の中で出てくるのが、「反文明」的なスタンスの思想です。
需給ギャップがちょうど25%あるのなら、「国際公約」のCO2の25%削減の好機だとして、電力依存の生活をやめよう、というような主張はその典型です。
また、今回火力発電の稼動率向上や休止施設の復活に対し、この非常事態にCO2増加への懸念を優先するが如きスタンスもまたその典型です。

先にサマータイム導入がゾンビのように蘇っていると批判しましたが、こういう未曾有の大災害には、通常でない根本からの方法論や体制の見直しが不可避となるため、この機に乗じて自分たちの意見を押し込もう、実現させようという動きが活発になるので、そういったドサクサ紛れの動きには十分注意する必要があります。

こうした「反文明」のスタンスに共通する論調として、物質文明の否定やエコロジー礼賛がありますが、では我々が現在の文明を捨てきれるのか。もちろん過度の安楽、快楽を求めすぎたものもありますが、その多くはこれまでの人類の歴史を通じて獲得してきたまさに文明の所産です。

一方でそうした思想にシンパシーを感じる人たちの特徴としては、都市部において物質文明の恩恵を最大限に受けている層ということが指摘できるわけで、先行する文明化の恩恵を十二分に受けているからこそ、「もう十分」「行き過ぎでは」という贅沢な感情を抱けるともいえます。

ただ今回の震災ではそうした「なんちゃってエコ」の幻想を打ち砕いた面もあるわけで、計画停電や、湾岸部の高級住宅街の液状化による被害など、突然文明の庇護から投げ出されたのです。
エコロジーの「流行」の中で、江戸時代の生活がよく礼賛されていますが、江戸時代の生活が「木と紙」のエコな生活だったのは、薄暗い行灯の灯りや、障子や襖1枚で物音が筒抜けの生活といったデメリットの上に成立していた、つまり、」文明による庇護が無い状態だったのです。

そうしたマイナス面を見ないで礼賛していた層とも重なるわけですが、それでも私は耐えていける、それが永続化しても大丈夫と断言できる人は果たしてどれだけいるのでしょうか。

さて、今回の非常事態においてまず政府がすべきことは、「温室効果ガスの25%削減」の撤回です。
いや、2012年度まで続く京都議定書の一時離脱も宣言すべきでしょう。

そもそも温室効果ガスの削減において先進国だけが目標を課せられた理由が、途上国の経済発展に足枷をはめるな、というものでした。それならば未曾有の大災害に遭った我が国の復興というものは、こうしたプログラムからの離脱、不適用を主張するに足る事情ですし、おそらく日本の経済発展をよく思わず、この機に日本に替わってしまおうと考えている国々は当然建前を並べて反対するでしょうから、一方的に通告してしまえばいいのです。

今回の大震災で懸念されることに、日本経済の根幹である技術等の海外流出や、海外同業者へのスイッチがあります。これは日本経済の今後に与える影響が重大であり、こうした事態を極小化しないと我が国の将来はありません。

阪神大震災で神戸の経済が壊滅したあと、復興の過程でなぜか神戸に成り代わってある分野が発展した都市があったやの話を聞いたことがありますが、日本においてすらこのように生き馬の目を抜くような状態なのに、国際間競争においては万余の死者を出そうが一片の同情も無く潰しにかかってくる国が無いわけはありません。

こうした懸念を考えれば、まさに震災と原発事故という「心の隙間に忍び寄る」反文明のスタンスに安易に与する事は、将来の日本に大震災の比ではないダメージを与えるといえます。


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