Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

デフレマインドでは人は来ない

2023-04-12 20:11:24 | 交通
物流業界の「2024年問題」ですが、結局これもデフレマインドだから「問題」なんですよ。連続労働時間、休憩時間の制約から運行時間に必要な要員が増えるが人材が確保できない、という問題の本質も、ドライバーの数が一定(以下)という前提で話をしていますよね。要は出すものを出したらドライバーの数が増える、という当たり前の話が出来ていません。一足早くこの逆に陥っているのが路線バス業界で、大型2種持ちがより稼ぎの多いトラックに流れて人材確保が出来ず、それで減便、さらには究極の減便である路線廃止に追い込まれているのです。

トラックの場合は荷捌きの問題もあり、本来ドライバーは「運ぶ」だけが仕事なのに、積み下ろしがサービス残業よろしく負担させられているとか、積み込み荷下ろしの時間をピンポイント指定されて遅延は許されないので待機場所もない状態で早着して無駄に回っているとか、依頼側が本来負担すべきコストやリスクを負担していないのを温存して議論しても意味がありません。

要は労働に見合った対価を払わない、安ければいい、というデフレマインドに囚われているわけです。
「官製春闘」ではないですが、最低報酬を決めてもいいんでは? 消費者物価も上がりますが、それに応じて労働報酬(分配)も増える、というプラスのスパイラル並行すれば解消する「問題」でしょう。日本以外ではそんなことはないですから、物価は高いが賃金も高い、というのが多くの国なのに対し、物価も賃金も安い、という日本は輸入に頼っているので、輸入価格の上昇をスタート地点に物価が高騰してしまいスタグフレーションになりますね。賃金も上がりませんし。物価も賃金も上がる方向に持って行かないといけません。その意味でも「2024年問題」と煽る内容にデフレマインドがあるのは問題なのです。

だから路線バス業界もいっしょですよ。運転手不足で、という事業者の大半が非正規や契約社員として安く労働力を買い叩いているわけです。経営者のマインドというのがまた露骨で、どんなベテランでも自社に入るときは初任給で買い叩くのが茶飯事ですから。さらにはそれならもう働かない(地方だと高齢だし田畑もあるしというケースが多い)、という至極もっともな判断をしたら「不良社員にそそのかされて入社しない」と逆ギレする経営者もいましたからね。デフレ経営者も極まれりです。

まあ利用者も路線維持には出すものを出さないといけない、という理解が必要です。物流で荷主の改善が必要なのと同じように。ただ路線バスの場合は路線がなくなれば負担金額が比較にならないタクシーしか移動手段がなくなるとか、タクシーも満足にないとか、利用者を直撃しますから、だったらマイルドだが実効性があるレベルの値上げを受け入れることへの理解は出来るでしょう、いや、させないといけません。自治体がタクシー代を負担、というの福祉的施策として称賛されやすいですが、これも経緯を踏まえるとデフレマインド溢れる政策です。

一つ言えることは、交通の世界、交通論の世界で、我々ヲタもそうですし、専門誌や商業誌、また学会や監督官庁とあらゆるプレイヤーがデフレマインドで行動してきました。そう、原価計算に基づいた認可賃率で運賃を得ていた路線バスに対し、100円均一とか安価な均一運賃を掲げたコミュニティバスを称賛してきたことは、今から振り返ればデフレを定着させる方向性だったということです。都市部で収入の増加が期待できる、幹線系統のフィーダーで幹線と一貫で考えるべき、という路線がはじまりでしたが、公共の補助が前提のローカルバスがそれを始めたわけです。なかにはコミバスの「ダンピング」で既存路線バスが維持できなくなり、コミバスとして自治体が面倒を見る破目になったケースとか、一見安くて便利になったように見えて、実は持続可能性という面では問題だったわけです。

物価高で必要コストが上がるなか、税金からの支出項目もまたあらゆる分野で上がっていきます。収入サイド、すなわち税金を上げるのは租税法定主義もあり困難ですし、交通事業ももともと採算度外視で抑えていた運賃ですから、利用者にとっては大幅でも収支から見たら中途半端な値上げでは到底及ばず、交通よりも必要な支出項目を維持するためには、交通が切り捨て、となるしかありません。

それでも少しでも破局を先延ばしするためにも、値上げで路線を守る、というマインドが必要です。運転手の確保のためには原資が必要ですからね。手っ取り早いのが「ワンコイン」的均一運賃を上げること。300円均一、500円均一というように、近場ではタクシーよりは安い、というラインまで上げて、1人でも乗せれば100円均一と違いそれなりの運賃収入を確保できるようにするのです。長距離であれば500円でも割安感が維持できますし。全国を見渡すと「ちょっと高めの均一」はそこそこありますから。





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1 コメント

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Unknown (リリカルゆかりん)
2023-04-14 11:18:23
ワンコインバスは徒歩や自転車で移動するような距離で100円なら乗ろうかという需要を掘り起こしであり収益は0→100の場合が多いので各事業者が積極的に導入したのではないでしょうか。一方で地方の比較的長距離の路線で片道2000円以上の区間ではそのような利用をする地元客は既に皆無に近く、いても観光客向けの乗り放題パスなどを持っている客だけというのが現状です。また福祉乗車証(行政発給のものだけでなく事業者が経営判断で発行しているものを含む)での利用も多く、定価を払って乗る利用者が少ないようでは値上げによる増収の効果も限定的でしょう。ローカルバスの場合もはや収益事業として成立し得ないという路線が多く、そうなると結局は行政が主体的に関与して必要な路線を維持する、一方で原資が税である以上もはやこの地域に公共交通は必要ないという判断も求められます。ただしそうなると運転免許を返納したお年寄りのモビリディ確保と言う問題がありますが(交通の便利な都市部への移住を促すといっても、そうした地域に住みたい人は多く、住宅の貸主は選べる立場で単身のお年寄りは避けたいでしょうし、高齢者限定の公共住宅を便利なエリアに税負担で建てれば現役世代との公平性が問われます)
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