Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

いわば採算も怪しい「旅行商品」

2017-05-01 01:31:00 | 交通
「四季島」の運行が始まりましたが、それをNHKが21時のニュースで延々とやるというのもどうなんでしょうね。
確かに話題性はありますが、JRは社会派諸氏の伝手を借りれば「民間企業」であり、公共性よりも業績第一の企業でしょう。その「一企業」の「新商品上市」を企業名やブランド名を垂れ流しながら報じるなんて、一昔前のNHKでは絶対にありえなかったんですが、まあアマゾンの新サービスを宣伝していましたし、時代は変わったもんです。

ちなみにこれ、鉄道会社の新しい列車、という「勘違い」がニュースにしてる面もあるでしょうね。実際にはたまたまレールの上を走っているに過ぎないツアーであり、バス会社や旅行会社の豪華バスツアーと一緒ですから、なんでJRだけ熱心に「宣伝」してもらえるのか、公共放送のはずなのにずいぶんえこひいきが過ぎます。

ところで、ニュースの中で「四季島」の建造費が100億円と出ていました。もともと50億円以上、としてぼかしていた部分ですが、営業開始のお祝い気分でャ鴻bとしゃべっちゃったんでしょうね。
それにしても1編成で100億円とはすごいもんです。電気式ディーゼルと電車のデュアルモードと言う新機軸の部分も込みとはいえ、かなりのお値段です。

そうなると、どうやって建造費を回収するのか。鉄道車両の税法上の償却期間は、電車が13年、ディーゼルカーが11年ですから中を取って12年、とは単純にいえませんが、償却期間いっぱいで回収というのもプロジェクトとしては筋悪なので、計算上の簡便さも考えて10年で回収としてみましょう。

単純計算で年間10億円です。自己資金ということもないでしょうから、年間0.1%で単利計算で利払は年額1000万円から100万円、まあ無視しましょう。
で、収入はニュースによると最低でも1人25万円だそうで、まあこれはピンキリとはいえ、平均で50万円としましょう。定員は34名ですから1列車1700万円の収入になります。列車運行は概ね3泊4日ですから、4日走って1日休みで年間73運用。本当はもう少し少ないでしょうが、がめつく稼いで70回のツアー設定としましょう。

この時年間収入は11億9000万円です。設備投資の返済だけで年間10億円必要なのに、収入だけで12億円しかないのです。
ここから固定費、変動費や地上交通機関、立ち寄り先や旅館での宿泊への分配を引いて、いったいいくら残るのか。あり得ない設定ですが、1人100万円でも年間収入は24億円なのです。(100万円だと期間も確保して年間60回くらいの催行でしょう。だとしたら20億4千万円の収入にとどまります。ちなみに「ななつ星」の年間収入は5億円という話もあるとか)
なおこの手の豪華ツアーで利益率が5割を超えるなんてことはあり得ませんし、あったとしたら実はサービスの中身に疑義あり、というレベルです。

相当部分をデュアルモードの試験開発費名目にしてようやく事業として成り立つわけです。
企業イメージだ何だと定性的効果に逃げ込む「ななつ星」を前に批判しましたが、「四季島」はそれ以外の名目が立ちません。大票田の首都圏発着のツアーですから、東北、上越、北陸新幹線との相乗効果はないですし、東海、関西からはJR東海の新幹線、遠隔地やインバウンドは航空機で東京入り、と毎度の言い訳も効きません。

まあこうなると、社会派諸氏が顔を真っ赤にして反論してくる、「公共交通機関がこのようなクルーズトレインを・・・」という批判の方が妥当に見えてきますよね。それこそ社会派諸氏がドヤ顔で主張する「寝台列車は採算ガー」「新車は回収ガー」というのも、「公共交通」たる寝台列車では1円の赤字も許さないような物言いなのに、ただの「ツアー」に過ぎないクルーズトレインでは目を瞑って諸手を挙げて称賛というダブスタに見えますが。