「働くひとの価値」を上昇させる狙いで、最低保障賃金を大幅に引き上げ、「非正規雇用社員」の廃止を実施すれば、全体の給与水準は押し上げられていく。
当然のように「消費購買力」が上昇して、需要増加に対応する企業の活動が活発化して、「新規設備投資」が大幅に上向く。
慢性的に需要不足に悩まされていた市場経済は、デフレに歯止めがかかりインフレ傾向にも転換していく。
安倍自民党政権が願望していた「デフレ脱却」が早期に実現する手段が、目の前に提案されていたら、採用しない理由は見当たらないであろう。
どの実現策も、「政府与党が賛成すれば実施できる」手段であり、経団連や中小企業経営者団体のお願いを繰り返しているよりも、実現は早いであろう。
幸いなことに、最低保障賃金の引き上げは、野党第1党の民主党の政権公約であった「1000円/時」の目標に一致するから、反対する勢力はいない。
やる気になれば、この春にも実現できる「デフレ対策の入り口」となるであろう。
そして安倍首相の施政方針演説では、「同一労働・同一賃金」を打ち出しているのだから、賃金水準の差異が4割もある「非正規雇用社員」を廃止に向けるのだ。
この政策に反対する野党がいるとは想定できないから、今回の国会で議決して、来年度の早期の実施できるように、制度改定を実行すべきであろう。
では誰がこの制度変更に反対して、今のデフレの原因となっている「非正規雇用」を守りたいと言い出すのであろうか。
想像するに、できるだけ安く人を働かせて、すこしでも「価格競争力を維持したい」と考える経営者の企業が困ることになる。
それならば、給料の増加分のコストアップは、価格に転嫁すればよいことである。
それでは。企業競争に負けるから反対だと言い出しかねないが、同じ国内での市場競争ならば「対等の条件での市場競争力」は同等である。
「何を問題だと騒ぐのか」と問えば、「海外製品との競争」に負ける、と言い出す。
働くひとの給料をあげると「人件費が増えるので生産コストが上昇」する。
「だからできる限り給料は安いひと」で生産を続けるのが、日本経済にとって良いことだ、として「非正規社員」の枠組みを広げてきてしまった。
「輸出向けの生産品」に限って言えば、そのようであるが、国内向けの生産品、価格競争力に頼らない生産にまで、「非正規雇用」を増やしてしまった。
生産品とは関係ない「国内のサービス産業」の分野まで、低賃金の「非正規雇用」を無制限に増やし続けてきた。
こうして「低賃金で事業をすすめる」のが当然のような潮流になり、「ひとの価値を上げる本来の経済の目的」が、どこかに吹き飛んでしまった。
これを転換するのは、政府と自治体の主導力を最大に発揮するしか道はない。(続)