今回の大統領選挙で勝敗の決定の大きな要因には、アメリカの製造業の衰退が影響している。
ミシガン州などの自動車産業が盛んであった地帯が、「北米自由貿易協定」によって、メキシコのような人件費が格安の国の生産に移転して、雇用は縮小した。
大量に生まれた失業者は、賃金の安い臨時雇いの仕事につくか、失業したままになり、蓄えを失って最低レベルの生活水準で暮らしている。
このような生活に落ち込んだままで20年以上もいれば、既製の政治家饒波完全に失望して、この境遇から救われる可能性があれば、その候補者に投票する。
その候補者がトランプ氏であったのだ。
8年前の大統領選挙で「チェンジ」をスローガンにして大きな期待で登場したオバマ大統領は、前任者のブッシュ政権が、破壊した経済の立て直しで苦戦した。
その時期から、アメリカの製造業は「新自由主義経済」のかけ声のもとに、自由貿易至上主義一色で染まった経済界に対して、なすすべが限られていた。
マネーゲーム市場と変化してしまったアメリカ経済界は、投下資本の回収が早い産業にしか、投資をしないで、高収益産業に力を入れている。
金融業がもっとも高収入を得られる産業であり、ほんの一部の人だけが勝ち残って、1%の富裕層と99%の貧困層と非難されきくらいに格差が拡大した。
これが「新自由主義経済が行くつく社会の分断」であることにやっと全世界が気がついて、問題として大きく浮上している。
アメリカの製造業が復活するには、まず、この「新自由主義経済」から離脱しなければ成功はしない。
トランプ氏が、いくら不動産王としてのビジネスの力を最大に発揮しても、製造業は、世界中での競争的な商品市場での取引が浸透している。
新自由主義的な政策手段である「法人税の減税」を優先的に実行するとしているが、自由貿易協定を破棄して関税制限をかけても、雇用の復活は困難である。
しかし、オバマ大統領自由貿易主義の究極の「TPP交渉」を政権の主要経済政策として進めてきた。
トランプ次期大統領は、TPPはアメリカの製造業にとって不公平だから、現状の交渉案では、即座に拒否するとしている。
つまり、自由な貿易ではなく、関税や輸入制限を課した「制限貿易の世界」に戻すことが、トランプ政権の最大目標になるだろう。実業家出身の次期大統領は、企業活動の活力を最大に生かすことを公約しているが、それも、アメリカ国内に置いて、勤労者の給与を高く維持し、雇用を最大に増やす条件のもとで、企業を誘致するというのである。
この公約は、人気中の4年間では「実現するのは超難関」であろうとなかろうと、貫き通すだろうし、場合によっては8年間も続くのだ。(続)