次期アメリカ大統領に決定したトランプ氏の政策で、すぐにでも実行に移せる計画では、メキシコとの国境に長大な壁を作り、不法移民の遮断を図る公約だ。
この計画の費用はメキシコ政府に払わせる公約だが、その交渉は長引くので、象徴的な地域を優先的に選んで、アメリカ国民に国益優先を訴えるだろう。
トランプ氏は、もともとは不動産業やホテル業などの建設方面は得意分野だから、有言実行の証として、まず第一の取組みとしての実現を図るだろう。
低賃金労働者の流入が制限されると、安い労働力依存の企業は悲鳴をあげるだろうが、もう一方では法人税の減税により、企業の優遇も押し出そうとしている。
どちらの政策も、企業の投資行動を刺激して、アメリカの経済は一時的にでも活況を呈するだろう。
アメリカや日本の株式市場では。2ヶ月半ぶりの高値をつけて、経済成長に効果がでると期待が膨らんでいる。
これは、トランプ氏が勝利演説で「高速道路、橋、トンネル、空港、学校、病院。我々はインフラを誰にも負けないものに建て直す。そして数百万人の雇用を生み出す」としたことを、経済成長に前向きと受けとめられたからだ。
アメリカは、財政赤字に苦しめられて、各地のインフラの老朽化に対応できるインフラの建て替えが出来ていないのだ。
自動車大手のGMや自動車関連部品メーカーは、人件費の安いメキシコに生産を移転していたが、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを公約している。
このような生産の空洞化の歯止めをかけて、アメリカ人が購入する自動車などの生産を、国益優先をして国内生産に戻すように、大企業に働きかけるだろう。
具体的には、どのような政策を何年で実行するのか不明だが、少なくとも、今から生産移転をする計画は中止せざるを得ないだろう。
商品生産の将来にある対姿は、可能な限り、購入する消費者がいる国内で生産する方向で、調整が進んでいく始まりになる。
貿易自由化の流れの中では、最終到達地は人件費の安い国にほとんどの生産が移転して、アメリカのような大消費国が、軒並みに貿易赤字に苦しむ事態が来る。
トランプ新大統領が、理想をどのように掲げているかは、暴言の中には見えにくいが、少なくとも自国民の雇用を守ることには、最重点を置いている。
トランプ氏を新大統領に選んだアメリカ国民には、何よりも安定した雇用が大事であり、こんな自明のことが、ヒラリー候補には切実にはわかっていない。
民主党の政策で、雇用の確保を最優先事項にできなかったのはなぜか。
トランプ氏の陣営が訴えてきたことは、民主党も、経済界から多額の献金を受けているので、企業経営にマイナスに働く「NAFTAの見直し」は、できないのだ。
企業献金を受けていないで自前の資金で選挙戦を戦うことができるのは自分だけだ!と訴えていた。
アメリカの民主主義は、企業寄りになって不健全なのだ。(続)