庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

国民の税金を海外に投資するよりも国内の削減費用に投資を。

2010-12-15 | 経済問題
温室効果ガスの削減には、新技術の採用をする為の費用、国民負担が生じる。
その費用を【削減費用】(円/tCO2)と呼び、日本は世界に中では割高となっている。
経団連をはじめとして産業界の大部分は、この割高な費用負担を強いられるのは、国際競争力の面で不利になると長年に渡って主張し、新聞などにも大金を使って全面広告を出してきた。

京都議定書による6%削減の目標に対しても、日本は既に省エネルギー効率は世界の先端を実施しているので、これ以上の削減に必要な技術は割高になる、と主張している。
その数値は、前回にあげた様に、25%削減に向けての対策を実施すれば、平均の【削減費用】(円/tCO2)は、3万2100円/tCO2になるとしている。

これが、世界における削減費用からは大幅に高い事は事実である。

しかし、この【削減費用】(円/tCO2)の算出に使う、機器の平均使用年数が短めに想定されている事実を、ほとんどの人は知らない。
別に隠していたわけではないが、本来の機器の使用年数よりも、あえて短めに想定した理由については、のちに触れるとして、実際の使用年数による【削減費用】(円/tCO2)を算出するとどうなるか。

国立環境研が提出した資料によると、平均【削減費用】(円/tCO2)は、1850円/tCO2になる。
これは、使用年数を短めに想定した場合よりも、17分の1の【削減費用】となる。
この削減費用は、国際的に見ても割高になっている数値ではない。

ちなみに、最近の海外との排出量削減枠の取引価格と比較してみる。
ポーランドから排出削減量の枠を、「400万トンCO2」を買取った価格は、約50億円である。
これは、「削減費用で、1250円/tCO2」に相当する。
この50億円は日本政府が国民の税金で、ポーランドにおいて、CO2排出削減事業」を実施したことと同じであり、せっかくの税金が海外の事業に使われてしまった。

この投資を日本の国内において実行すれば、派及効果によって、その資金の1.5倍~2倍の投資効果になることは知られている。
つまり、同じ50億円でも、日本国内で使えば、75億円から100億円を使った効果が出る。
ということは、「削減費用1850円/tCO2」は、海外で使う「削減費用で、1250円/tCO2」よりも、経済連関における波及効果が大きい。

この様な事実は経済の専門家ならば、当然の様に解っていることであるが、何故に、国内における【削減費用】が割高であって、日本経済の足かせになると主張しているのか。
温室効果ガスの削減に貢献する機器の【使用年数を実際よりも短めに想定】し、その上、海外における排出枠の購入に国民の税金を使いながら、国内での省エネ機器や再生可能エネルギー関連への投資を割高であるとして、抑制しようとしている。
この意図は、表面には出てこないので、推定するしかない。次回にそれについて書いてみよう。

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