Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

アメリカの病と処方箋

2006-10-11 14:28:05 | Weblog
昨日はオーストラリアから帰ってきたばかりの照屋勇賢さんとご一緒する。勇賢さんは多忙が祟り、完全に時間と生活が崩壊しているそう。でも、そんなプレッシャーの中でも展示を成功させているのがすごいと思う。久しぶりに会ったのだけれど、多忙すぎて、小一時間しか話せなかったのが残念。またキャッチアップしなくては。。。

今日はDCから友人のRが私を訪ねに来てくれた。Rと会うのは2年ぶり以上。それでも連絡が途絶えないのは、お互いアートと社会、という感じで、やっている分野が近いからだと思う。

最近、Rはアフリカとインドに行ってきたそう。特にマリ共和国でのドゴン族との出会いは素晴らしいものだったそう。またRはインドにて顔面奇形の子供に無料の整形を供給するというNPOに所属していて、その活動をしてきたそう。そんなNPOがあるのにも驚き。なんとアメリカ的な発想なのだろう。

Rはアメリカ国籍なのだが、ムンバイとハバナとモントリオール、そしてオックスフォードの大学院にて教育を受けた豪傑。こんな人は俺は他に知らない。パーリ語とスペイン語、フランス語という外部性を持ったアメリカ人は、さすがに視座が深い。

会って早々、アメリカの奴隷制度が今日に与えている影響や、アメリカにおけるクリスチャン・ファンダメンタリズムやユングの集合的無意識の話など、矢継ぎ早に話しが進む。特に奴隷制度と人種の話は、本当に面白かった。

私の周りの黒人、特に黒人男性は、自己嫌悪が激しい人が圧倒的に多い。それの根底には、奴隷制度以降連なる、アメリカの病がある。これは当分直らないだろう。Rの場合は黒人率が75%を超えるワシントンDCに住んでいる訳で、その社会的プレッシャーは計り知れない。

最近、Rが激しい交通事故を起こし、DCからバージニアに行く高速道路に、時速70マイルで突っ込んで、大怪我を追ったらしい。その際、黒人の貧民が多く住む住宅街に高速のバリケードを突き破って入り込んでしまったらしいが、救急車が来るまでの数分間の間に、朦朧としている意識のRから、財布や宝石類など、みぐるみ全てはがされてしまったそう。その時に、この国は本当に病んでいる、何とかしなくては、と思ったそう。そこまで追い込まれた状態で、そこまでポシティブシンキングができるRには、尊敬の念を抱かすにはおけない。

日本は深刻な人種問題がないだけ、幸せだと思う、ということを真面目に言われた。本当にそう思う。アメリカのそれは、もはやタブーである。でも、日本人はきっとアメリカ人より幸せだと思う、という言葉はどうしても聞き捨てならず、私なりの見解をいろいろと述べた。

Rと私がこれだけ腹を割って人種の話ができるのは。R自身の人種の入り組んだルーツと関係していると思う。見た目は白人でも、それは関係ない。それこそ、イマジナリーなものなのだ。

昔、Rと一緒にボブ・マーリーのTalking Bluesを聞きながら、セバスチャン・サルガドの写真集を見たことを思い出す。何も話さなくても、お互い何を考えているのか、なんとなく分かった。

人種に関してこれだけ突っ込んだ話ができる(いわゆる)異なる人種の友達を持った私は、幸せだと本当に思う。NYに来てよかったと思った。

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