Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

上海日記

2008-08-30 02:16:29 | Weblog
今日のお昼は、上海の都市部を探索する。思った以上に英語が通じないが、思ったほど町も悪くない。比較的外国人にとって住みやすい都市ではないか、と思う。しばらく歩いて、上海の人と少しずつ触れ合っている間に、日本人とさほど違いは無いな、と感じる。

午後は、外灘地区にあるスペースBund 18にて、大巻伸嗣さんの展示を見てくる。私は最初からこの展示を見る予定だったのだが、たまたま大巻さんが今日から上海へと滞在する予定だったので、ご一緒することに。Bund18のディレクターのキムさんや、たまたまご一緒した大御所コレクターの方にもご挨拶差し上げる。雑誌編集者、写真家の方などとお会いしてお話している間に、みんなでご飯を食べに行こうということになり、簡単に買い物をした後に、湖南料理を食べに行く。大巻さんは笑っちゃうような中国風Tシャツを購入していたが、私はShenzhenでのミュージアム・オープニング用に、シルクの中国風のシャツを購入。値切って9000円程度。かなり本格的な中国服を購入でき、満足。隣でマオジャケットを販売していたが、こちらは購入する気にはどうしてもなれなかった。

少し辛めだけれどとてもおいしい湖南料理を食べながら、ご一緒した方々の中に、内モンゴル出身の方がいらっしゃったので、オリンピックの時、どこのチームを応援してのか聞いてみる。(上海は、未だオリンピックの熱が冷めておらず、町中いたる所にオリンピックに関するものに溢れている)きっと内モンゴル出身の方なら、北京に対する敵対意識があるのではないか、と思ったからだ。答えは案の定、中国を応援していない、というもので、ほとんどの中国内部のマイノリティは、私と同じ考えだと思う、と言っていたのが印象的だった。

その後、上海のアーティスト・スタジオを訪問しながら、皆でお茶を飲みながら話す。とても有意義な夜であった。

上海特急

2008-08-29 12:48:30 | Weblog
展示終了後、最低限の作業を済ませ、そしてお世話になった方々へとへと挨拶してくる。その後、昨日は、ヨーロッパ人の美術愛好家の皆さまよりご自宅へと招いて頂き、おいしいワインをご馳走になりながら、芸術談義を交わす。

日本在住の外国人の方と話していつも思うのは、彼らが日本に在住して日本文化や芸術と真剣に触れ合いたい、と思っているにも関わらず、それをリプリゼントできる日本人があまりにも少なく、挫折してしまう事が多い、ということである。それは単に外国語が話せる、ということではなく、その方の文化背景を理解した上で、日本を説明するのが非常に苦手である、ということだと思う。これは根深い問題だ。

「何故、日本はハイカルチャーと大衆文化が混在しているの?」と聞かれた際に、美術に関する制度の違いや、そもそも美術という考えが輸入品である、ということを説明したら、それだけでとても喜んでもらえた。その後、美術マーケットや言語の問題、フランス語やドイツ語の抱えた問題とハイデガーとアレントの歴史(同席者の一人の方がNew School出身者であった)、政治、文学や歴史についてお話する。ロシアのエネルギー産業の事情からソクラテスの弁明、さらに土佐日記と日本語まで、幅広いジャンルについてお話した。なお、インド人の小説家の方がいたので、お土産に中村屋のカステラを持って行った所、とても喜んで下さった。日本では珍しく、ハイカルチャーの香りが漂った夜だった。

その後、私は上海へとやって来た。いくつか展示やスペースを見る為だ。私は香港には20歳の時に来たことがあるが、中国本土は初めてである。一人旅35カ国目だ。

到着したのが夜遅かった為、例のリニアモーターカーに乗ることができず、残念。仕方なく、バスで都心へと向かったのだが、そのバスのテレビの中でリニアモーターカーの映像を繰り返し流していた。リニアが本当に中国の夢であることが、よく理解できた。

バスに乗るときも、降りるときも、やはり中国人のマナー(というより、上海人のマナー)というのはとても気になる。皆、列を作らずに割り込んでくるので、私も負けていられない。

ホテルでも、「ああ、ここは上海だ」と思わせる様なことが何度かあり、感慨深い。民主主義が成立していない国家の、全体的なうごめきが、ここにある。

展示最終日、大成功でした

2008-08-26 16:22:02 | Weblog
展示最終日には、朝から本当に多くの方が来場して下さった。アーティストの、岡部昌生さん、京都造形芸術大学国際藝術研究センター所長の飯田高誉さん、茂木健一郎さん、アーティストのフランシス真吾さん、さらに本当に多くの皆様が来場して下さった。最終日の来場者は、100人を上回りました。

午後4時より最後のギャラリーツアーを開始し、その後、皆で集合写真を撮った。ようやく展示が成功のうちに終わる、と思うと、不覚にも感動してしまった。

展示に協力して下さった皆様、そして展示にいらっしゃった皆様、本当にありがとうございました。

ついに明日で展示終了!

2008-08-24 00:39:39 | Weblog
明日はついに展示最終日。どれだけのお客さんが来てくれるのか、楽しみだ。人が多くて困ってしまうくらいが理想です!皆さん、ぜひ足をお運び下さい。(写真は、ベルギーからの展示協力者と一緒に、「さかさまの日の丸」の前での記念撮影の様子です)

憲法メディアフォーラムの「直言」に、展示アーティストである柳幸典さんへのインタビュー記事「9条の倫理的普遍性について思考を」が掲載されています。ぜひご覧になって下さい。


森村泰昌さん、来場される

2008-08-22 12:44:06 | Weblog
昨日は多くの来場者があったのだが、朝には参加アーティストの森村泰昌さまがいらっしゃった。

今回の展示開催に関して、森村さまには大変お世話になった。彼とのやりとりを通じて、彼がいかに芸術に対して真摯な気持ちで作品を作っていて、そしてその芸術の可能性を心の奥底から信じているのに、私は本当に心打たれた。彼の様に優れたアーティストとご一緒できたことは、私にとっても大変大きな経験となった。

また、展示のファンドレイジング用に制作した「静聴せよ 大吟醸」の制作に関しても、制作を全て無償で引き受けて下さり、心よく芸術の為に、と一肌脱いで下さった森村さまには、私は感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございます。

森村さまと展示会場をご一緒した際、「この森村さんの作品を見て、『これ、盾の会のメンバーですか?』と質問をして来る、美術に疎い方がいるのですが、どうお答えしたら良いのでしょうね?」とお話すると、「横の会の人です、ゆーて返せばええんちゃう?」と言っておられたのが、とても森村さまらしく、素敵だった。

展示も、残すところあと3日。まだ来場されてない方、ぜひ24日までにご来場下さい。

休息の時間は来るのか?!

2008-08-19 21:35:54 | Weblog
毎日、暇を惜しんで作業をしている。そうしないと、仕事が終わらないのだ。

今回のアトミック・サンシャイン展は、今までの私のインディペンデント国際展の中では、最もオーガナイズされたものであったと思う。ボランティアさんも多く集まったし、またボランティアさんを統括してくれる方も現れ、さらに何と言っても会場側の協力が素晴らしく、会場での問題というのはほとんど発生しなかった。

しかし、資金や広報などの問題は、どうしても解決しない。やはり、展示の為のお金集めをするのは重労働で、自分が責任者としてやっている限り、数万円でも集める為に、全力でかけ回らなくてはならない。ファンドレイジングを他人任せにする訳には行かないし、それだけでは上手く行かない。問題は、自分の体が一つしかないので、ファンドレイジングに時間を割いている間は、プロジェクト進行の為の作業ができなくなり、プロジェクトが前進しなくなる、ということだ。

また、広報に関しても、今回の様にコアな展示企画に関しては、キュレーターの展示意図を正確に伝えるのは困難なので、広報担当のボランティアさんを探すのは、どうしても困難であった。結果、メディア関係者とのコンタクトは私自身で全てこなさなくてはならなく、それにかかる時間が、圧倒的に長かった。

また、輸送やメディアに関しても、海外とのやりとりが多く、やはりネイティブクラスの英語が話せるボランティアさんを確保するのは困難なので、どうしてもこれらのやりとりは、私が担当することになる。ヨーロッパとアメリカへとかける国際電話の時差を計算して、日本の平日の仕事をしていると、一体何時仕事をしているのか、分からなくなる。

こんな日々を過ごしている度に、私にはアシスタントが必要だ、と感じられるのだが、それだけの予算が無い。本当は、広報やファンドレイジングをする人、さらに自身のアシスタントも雇って役割分担をするのが理想なのだが、それをする為には相当な金額が必要であるが、今の日本には、非営利の美術展にそれだけの支援をする企業や財団は、少ない。販売など、営利活動を通じて回収して行くしかない。インディペンデント・キュレーター道は、険しく遠い。

今朝、朝から作業をして、昼に買い物をしてから栄養ドリンクを飲んで、気合を入れていざ!とパソコンに向かって作業をしていたら、めまいがして、体から力が抜けて行った。今は仕事は楽しいので、ストレスはほとんど無いのだが、体がついて来ていない様だ。いつもの体を壊して一次休み、というパターンは避けたいので、そのまま休む。明日までには回復したい。

展示の反響に驚いています

2008-08-16 23:48:56 | Weblog
展示の反響の大きさに驚いている。

今日は海外からこの展示を見るためにやって来た日本研究の学者さんと、ギャラリーツアー後、いろいろと議論する。彼は、私がギャラリーツアー中、コータ・エザワさんがハンス・マーティン・シュライヤーをテーマとして扱っている、という話を、ドイツの秋との関連性の話をした際、東ドイツのローマをテーマとした劇作家の、うーんと、うーんと、と名前が出なくて困っている際に、「ハイナー・ミュラーでしょ?」と助け舟を入れてくれた。こういう人がいると、本当に助かるし、また現代美術のコンテクストがちゃんと共有できていることが認識できると、キュレーターとしての遣り甲斐を感じることができる。

その後も、ヨーロッパの大使さんがいらして下さったり、またギャラリーツアーにも、本当に多くの方が参加して下さり、ツアー終了後もひっきりなしに質問を受けた。本展示のキュレーターとして本望です。

明日日曜日も、午後1時と4時からギャラリーツアーを行います。皆様、ぜひご来場下さい。

森村泰昌 上原酒造株式会社 コラボレーション作品 「静聴せよ 大吟醸」販売のお知らせ

2008-08-14 12:21:23 | Weblog
森村 泰昌 上原酒造株式会社 コラボレーション作品
「静聴せよ 大吟醸」
販売のお知らせ

「アトミック・サンシャインの中へ-日本国憲法第9条下における戦後美術」東京巡回展にあたって、展示参加アーティスト森村泰昌氏と、上原酒造株式会社とのコラボレーションによって、素晴らしい作品が生まれました。

その名も「静聴せよ 大吟醸」。本展に展示された森村氏の三島由紀夫をテーマとした作品から作られたものです。

桐箱蓋とラベルに書かれた「静聴せよ」の墨文字は、すべて森村氏の手によるもので、20本限定作品の一点一点がユニーク、つまりたったひとつしか存在しないものです。なお、桐箱の中には、三島由紀夫の演説を元にした森村氏の演説「静聴せよ」全文が書かれた和紙が収められています。

お酒は、皇室献上酒として知られる新潟の酒造会社、上原酒造株式会社の「越後鶴亀大吟醸」です。主に清酒鑑表会や研究開発のために、蔵人たちが精魂をかたむけて醸し出した貴重な清酒です。精米歩合40%の山田錦特上米を使用した大吟醸は、角田山麓弘法の清水と、昔ながらの和釜により蒸米、箱麹法から造られた麹を使用しています。可能な限り極上の香味で保存する為に、少量の炭素による無圧濾過にて搾られています。果実を思わせる吟醸香があり、芳醇な喉越し、コクとキレのある味わいです。

また、作品販売による利益はすべて、本展運営資金とさせていただいております。これは、皆で表現世界を作り出そうというささやかな提案であり、この提案にご賛同いただいた皆様にも、この作品に込められた思いを静聴していただけましたら、この上ない幸せです。

「静聴せよ 大吟醸」 720ml / 限定20本 / 販売価格:3万円

購入に関する問い合わせは、
article9@gmail.com
までよろしくお願いします。振込み先のご案内を差し上げます。


協力:森村泰昌 & 上原酒造(上原誠一郎)

上原酒造株式会社
新潟県西蒲原郡巻町竹野町2580
TEL:0256-72-2039 FAX:0256-73-3875

来場御礼!

2008-08-11 01:56:40 | Weblog
展示1週目の土曜日は、かなりの来場者があった。美術に関心のある方は、常にアンテナを立てている様で、異なるメディアを通じて知った展示に足を運んでくれている様である。

客層は、大学生くらいの方からお年寄りまで、代官山のオシャレ系の若者から大学教授まで、美術関係者からあまり美術に興味の無い人までと幅広く、良いバランスで混じっていると思う。外国人率も10-20%以上と高いのが印象的だ。MetropolisとJapan Timesに記事が出たのが大きいのだろう。特に外国人のお客さんは、英語版のカタログに大変喜んで下さり、とても嬉しい。ご年配の方が三島を模倣した森村さんの作品に反応していたり、若い方がテーマそのものに関して私に質問して下さったりすると、とても嬉しい。

また、展示会場に松澤宥さんのご遺族の方がいらっしゃり、大変喜んで下さったのが印象的だった。アーティストのご遺族の方に喜んでもらえるのは、キュレーターとしても大変光栄なことだ。本当に嬉しい。

また、展示を見に来た人がかなりポリティカルなものだと思っていたが、そうではなかったので驚いた、というご意見が多く聞かれる。どうしても9条という言葉を冠してしまった以上、政治的な部分は拭えないのだけれど、私は美学のコンテクストの中でやり遂げたいと考えている。それが鑑賞者に伝わっているのであれば、本望だ。

北京五輪の関係で客足が心配されるが、ぜひ多くの方に展示を見て頂きたいと思います。まだ来場されていない方、ぜひ足をお運び下さい。

ついにオープン!

2008-08-07 23:41:46 | Weblog
8月6日、ついに展示がオープンした。

今回の展示に関しては、「もう一つの万博」展などと比べ、皆様の積極的なご協力もあり、展示準備を円滑に進めることができた。特に茜さんの紹介でご一緒した、gift_の後藤さんの存在が大きかった。実は私、仕事の現場で空間デザイナーさんとご一緒したことは何度もあるものの、自分がキュレーターとして空間デザイナーさんとご一緒したのは初めてだったのです。しかし、空間デザインに関しては後藤さんが制作を担当してくれたので、私の仕事量が減り、とても楽でした。本当に感謝しています。そして、素晴らしい空間が出来上がったと思います。

それでも、正直、オープニングトークの30分くらい前に、疲れがドっと出て急にボーっとしてしまい、本当に俺は大丈夫か!?と心配だったのですが、多くの人を前にしてしゃべりながら、スタッフみなさまの顔を見ていたら、なんだか安心してきました(笑)皆の顔にはどうやら沈静効果がある様です。

そして、パネルディスカッション開始前に突如判明した、中原佑介先生の体調不良によるディスカッションへの不参加。ある程度こういう形で進めたい、という形を私の方で構想していたのだけれど、それが突如崩れてしまった。そこで急遽!会場にいらしていた東京画廊の山本氏(しかも初対面)に中原先生の代わりに70年の東京ビエンナーレともの派について語って頂き、3人の参加アーティスト、柳幸典さん、大浦信行さん、エリック・ヴァン・ホーブさんにもパネルに参加してもらうことになった。

突然の荒療治にも関わらず、アーティストの3人はいやな顔一つせず、引き受けてくださったのがとても嬉しかった。そしてこの案が功を奏し、パネル・ディスカッションはかなり有意義なものとなった。そして、太田昌国さん、鈴木邦男さんも大変素晴らしい話を聞かせて下さったと思う。参加して下さった150人ほどのお客さんも大満足だったのではないだろうか。(ちなみに、この様子はyoutubeにアップを予定しております)

なお、このトークの効果あってか、日本語版+英語版パンフも良く売れた。やはり、展示の企画意図が上手く伝わったのだと思う。とても嬉しい。

仕事の後の乾杯は最高ですね。これは打ち上げの席での一こま。なお、多くの記事やインタビューなどが掲載されておりますので、ぜひご覧になって下さい。

Cinraインタビュー: 天皇と9条から見る日本戦後美術~大浦信行インタビュー

"Japan Times: Making Art Out of Article 9"

見る:アトミックサンシャインの中へ--来月から代官山ヒルサイドフォーラム /東京 毎日新聞

Studio Voice Online 松澤宥やオノ・ヨーコら出品、日本の戦後美術を検証する展覧会、本日より