Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

横浜美術館でのトークビデオ+法学館のインタビュー+エリック・ヴァン・ホーブ インタビュー

2008-07-29 15:31:39 | Weblog
7月4日に横浜美術館にて開催された茂木健一郎×照屋勇賢 クロストーク:太陽(ティーダ)―もうひとつの「顔」 ( モデレーター:渡辺真也)のビデオが全編youtubeに掲載されました。ぜひご覧になって下さい。

また、渡辺真也へのインタビューが法学館のHPに掲載されています。憲法と近代の問題について私見を述べました。ぜひご覧になって下さい。

さらに、参加アーティストのEric van Hoveのインタビューが、Shiftマガジンに掲載されています。日本語版は近日中にアップの予定です。ぜひご覧になってみて下さい。

松澤宥をめぐる2222章

2008-07-29 01:27:16 | Weblog
先日、長野県の諏訪を訪れ、参加アーティストである松澤宥さんのご遺族のもとを訪ねて来た。

松澤氏は、私がもっとも会いたかったアーティストの一人である。しかし、その願い叶わず、私がNY滞在中の、2年ほど前にお亡くなりになられた。

私が大学院時代、デカルトの思想や西田幾多郎の思想の延長線上にてクザーヌスの思想に興味が湧いて調べていた時、美術史家の富井玲子先生が扱っていた資料の中に、「松澤宥」というアーティストがクザーヌスの名前を挙げて自身の芸術論とを述べているのに大変な興味を惹かれた。以来、松澤さんに関する資料を集めようと頑張ってみたのだが、まとまった資料というのが成立しておらず、点在する資料を集めて行く上で彼への興味はさらに増し、彼の死が何とも悔やまれたのであった。松澤さんに、ぜひ消滅、オブジェを消す、つまり客体を消す、ということは、主体そのものを消滅する、という反近代的なアプローチであり、それを漢字や仏教という枠組みにおいてやろうとしているのですか?そんな話をしたかった。

私は憲法を扱う上で、必然的に近代の問題、さらに主体性の問題を扱っているが、これは松澤さんが作品のテーマとしていたものと、極めて近いと思う。「主体」の概念の固定から生まれたものが、オブジェ=客体だが、松澤氏は反近代的な手法として、オブジェを消す、すなわち主体を消す、という芸術的手法を取ったのだろう。ダダは第一次大戦期の中立国であるスイスのチューリヒにて、近代の延長線上に世界大戦を招いてしまった近代化やキリスト教に対する絶対的な「NO」として機能したのだが、松澤氏はその「NO」を、オブジェの「消滅」、さらに主体の否定の手法として仕様し、さらに「ギャーテーギャーテー」という、三蔵法師が漢訳さえ否定した、というあまりにも神々しいサンスクリット語を直訳として引用し、日本の反近代を掲げたのではないか、と私は考えている。

諏訪にてご遺族の方とお話する中で、故人である松澤さんの人柄が伺えるエピソードをいくつも伺え、とても有益であった。特に、松澤さんが他者に対してネガティブなことを一切言わなかった、ということは、松澤さんを知る友人の多くから聞かれるコメントと共通するが、こういうポシティブなアーティストが芸術的手法としてダダを選ぶ、というのを私は何度か目にした気がする。大変興味深い。

ご遺族の方から多くのお話を伺った後、父と合流し、そのまま静岡の実家へと帰る。日本に帰国していたにも関わらず、どうしても時間が取れずにまだ帰宅できていなかったのだ。久しぶりに家族全員で合流し、ご飯などを食べ、つかの間のリラックスを楽しむ。

その後、鎌倉のフレーム屋さんを経由して、東京へと帰ってくる。展示準備が大詰めだ。あと一息。頑張ろう。

アトミック・サンシャイン展、ゆっくりと前進中

2008-07-24 01:17:54 | Weblog
日本語掲載用のリーフレット制作作業が大詰めだ。膨大な作業だが、皆さんの協力を得ながら少しずつ進んでいる。

さらに、それと並行して、作品のインストールに必要な道具を全て集め、アーティストへのインタビュー記事の編集を行ったり、作品の販売活動を未だに継続したり、展示作品をコレクターさんから借りてきたり、友人のアーティストの展示オープニングに足を運んだり、結婚を控えた従兄弟と久しぶりに会食したり・・・と、とにかく走り回っている。しかし、着実に展示が形になりつつある。あと少しだ。

今日の朝は、毎日新聞社によるインタビュー掲載の為、原美術館にて展示開催中の照屋勇賢さんの取材に立ち会う。勇賢さんもハードなスケジュールの中、なんとかやっている様で頼もしい。展示開催中、展示会場の空間を飛んでいる蝶々が、少し弱ってしまっていたのだが、その蝶々を美術館の人たちと勇賢さんが大切そうに世話をしているのが印象的だった。オオゴマダラの羽の音、さらにその色が印象的だった。

渋谷に移動し、ウェブマガジンCinraによる大浦信行さんへのインタビューに立ち会う。大浦さんの問題の作品が生まれた背景を、若い人たちにわかってもらおうと、丁寧に説明する。こういう一連の作業も、共同作業という感じで、楽しい。あと少しだ。

マガジン9条 この人に聞きたい2+ボランティアさんとの飲み会

2008-07-18 13:41:41 | Weblog
マガジン9条 この人に聞きたい 渡辺真也さんに聞いた(その2)がアップされています。こちらをご覧になって下さい。

このインタビューを読んだ人からの応援メールなどもマガジン9条から送って頂き、元気が出る。マガジン9条の人たちは、本当に気さくで気の利いた人たちなので、気兼ねなくお話ができて、とても心地よかったことを思い出した。

先日はボランティアさん、そして来日中のアーティスト、エリック・ヴァン・ホーブと一緒に、恵比寿にて食事会。よく考えると、実行委員会のミーティングの際は、どうしても実務的な話が多く、こういったソーシャライズの機会が限られていたなぁ、と思う。

9条と芸術の関係について、いろいろ聞かれるので、ひたすらそれについて、コンテクストを通じて説明するが、それがどうしても上手く行かない、という情況も多々ある。日本で哲学をやっている人たちは、どうやってその理解者たちとコミュニケーションを取っているのだろうか、と不安になる。しかし、いろんな事をお話することができ、楽しかった。

今は、カタログ日本語版の最終編集と、パネル・ディスカッションの質問状の準備などで、ひたすらパソコンの前に座って準備する。

真面目に文章を書くときは、一人、集中力を高めて行く。久しぶりに経験する、孤独な快楽。

大阪大学でのレクチャー+堺巡り+エリック来日

2008-07-14 00:24:16 | Weblog
10日のお昼に大阪に移動。夕方から始まる大阪大学でのレクチャーまで少し時間があったので、大阪万博の跡地である千里の丘にて太陽の塔を見てくる。万国博覧会という強力な国家権力と同一化することによって生まれた、岡本太郎による壮大なパブリック・アート・プロジェクトを見ながら、関心する。残ったのは丹下ではなく、太郎だった、ということは、ちゃんと考え抜かなくてはならない事だろう。と同時に、友人から送られて来た、今年初めに撮影された、逆立ちしたダダカンのヌードフォトを見ながら、感慨深い思いにひたる。

夜は大阪大学にて、アトミック・サンシャイン展に関するレクチャー+懇親会。大阪でのトークは、東京で行うトークよりも、人と人との距離が近い感じがする。社交辞令的な話にはほとんどならず、一対一の人間の会話になるのが楽しく、そして興味深くもあった。

11日の日は仕事を済ませた後、堺へと向かう。自由都市であった堺に、千利休が飛ばされた、ということが何を意味するのか、現地にて考えて見たかったのだ。美術研究をしているものです、と自己紹介しつつ境の観光センターに問い合わせをすると、ボランティアガイドの方が、利休屋敷跡にて井戸の中を見せてくれた。貴重な体験だった。

その後、南宗寺へと向かい、利休の墓参りをしようとしたのだが、一番奥の茶室とお墓の部分は、午後4時までの公開期間中に間に合わず、見学できず。本当に残念だったけれど、利休に「出直して来い」と言われているかの様であった。この南宗寺、神仏習合の傾向が大変強く、寺の中にいくつもの神社があり、その狛犬が中国風だったのが印象的であった。

その後、タクシーで仁徳天皇稜へと向かう。稜の周りを一周して、体感サイズを図る。その後、市役所の21階の展望室より仁徳天皇稜を俯瞰したのだが、その大きさと存在感がかなりのものであったことを実感する。自由都市であった時代の堺、そして天皇家の町であった堺が、かなり特異なものであったことを証明している。

その日の夜は、新大阪のNPO団体Remoが主催する、フランコ・ベラルディ氏が発表する反G8のデモの様子などを伺う。私は正直、反G8のデモはそれほど良く理解できていないのだけれど、いろいろと貴重な意見を伺うことができた。ちゃんと考えて行きたい問題だ。

土曜日は横浜へと移動し、デザイナーの相澤さんと、編集者の神部くんと、日本語版リーフレット製作に関する打ち合わせを行う。相澤さん、そして神部くんの献身的な努力もあり、出来上がり間近。楽しみだ。

日曜日の今日は、作品の再製作の為来日しているアーティストのエリック・ヴァン・ホーヴとブレックファースト・ミーティングを行い、そのまま製作へと入る。実行委員会のコアメンバーである林田茜さん、さらにその家族の全面協力の下、作品の買出しから製作まで、多岐に渡り協力して頂く。皆からの協力があり、少しずつ展示が出来上がっていく。皆に感謝の気持ちでいっぱいだ。

横浜での茂木さんと勇賢さんの対談+近況

2008-07-08 11:31:34 | Weblog
3日の日に名古屋の実行委員会の方にお会いし、展示の進行状況をお伝えした上で、ファンドレイジング用の作品を購入して頂き、一泊させて頂く。4日の日には横浜へと移動し、横浜美術館にて”茂木健一郎×照屋勇賢 クロストーク:太陽(ティーダ)―もうひとつの「顔」”のモデレーターを勤めて来る。

横浜美術館でのトークの前に、茂木さんと「本気でやりましょう」と言っていた甲斐もあり、茂木さんも普段よりもずっと真剣に話をしてくれたと思う。そして、勇賢さんも自身での作品解説を含め、積極的にトークへと参加して下さり、ト-クは大変盛り上がった。私はモデレーターという立場にも関わらず、かなり自分の話をしたことで、茂木さんに「ポリフォニーがない」と批判されたが、まあ、そんなもんでしょう(笑)このトークの様子は、youtubeへとアップしますので、しばらくお待ちを。また、その打ち上げでは、天野太郎さんと初めてちゃんとお話をする機会があり、とても有意義だった。

5日の朝には、Tokyo Art Beatさんのユミソンさんがインタビュアーとなり、勇賢さんと私へのインタビューを行ってくれる。ユミソンさんは自らのバックグラウンドを話しながら、勇賢さんと私の創造へのビジョンなどについて、丁寧に伺ってくれた。2時間ほどに及ぶインタビューであったが、記事になるのが楽しみだ。

その後、神楽坂で皆で柳川を食べた後、一仕事してから、北海道旅行の直前に東京へとやってきていた両親と、久しぶりに会う。私はせっかく日本に帰ってきているにも関わらず、多忙極まり、まだ両親に挨拶ができていなかった。本当に親不孝モノだ。しかし、一緒にお酒を飲みながら、父、母、姉と鍋をつつくことができ、幸せだった。

その後、編集者の友人で、実行委員会に参加してくれている神部と神田にて合流し、日本語版リーフレットの翻訳文章をファイナライズする。神部の積極的な提案その他もあり、日本語版はA1版のリーフレットとなりそうなのだが、素晴らしいものになりそうだ。そんなことを協議しながら、久しぶりにあった親友と夜まで飲む。

アジア・ソサエティーでのパネル・ディスカッションを編集して下さっているコロンビア大学のキャロル・グラックさんとコミュニケーションを続けながら、仕事をこなして行く。その後、昨日はNadiffの恵比寿新店舗のオープニングに伺い、展示の告知をしつつ、多くの方に挨拶を差し上げる。本当にいろいろな人にまとめて会えて、有意義だった。

「アトミックサンシャインの中へ」を巡る対話 @ 大阪大学 7/10 (木) 18時20分~20時過ぎ

2008-07-08 11:11:31 | Weblog
美術展覧会「アトミックサンシャインの中へ - 日本国平和憲法第九条下における戦後美術」を巡る対話 @ 大阪大学
キュレーター 渡辺真也氏を迎えて

本年8月6日から8月24日の間、日本国憲法を巡る美術展が東京で実施されます。今回、その展覧会のキュレーションを担当する渡辺真也氏をお迎えする機会を持つこととなりましたので、お知らせさせていただきます。

「戦後の国民・国家形成の根幹を担った平和憲法と、それに反応した日本の戦後美術を検証する試み」(展覧会コンセプトより)についてご説明いただき、その後、参加者の皆さんとディスカッションの時間を取りたいと考えています。

展覧会のテーマ、インディペンデント・キュレーターの仕事など、様々な角度から渡辺氏にお話いただこうと考えておりますので、ご興味のおありの方は是非ともご参加ください。

アトミックサンシャインの中へ
日本国平和憲法第九条下における戦後美術 ホームページ
http://www.spikyart.org/atomicsunshine/indexj.html

日 程:2008年7月10日(木)
時 間:18時20分~20時過ぎ
事前申込:不要(無料)
場 所:大阪大学文学部メディアラボ
住所:豊中キャンパス文学部美学棟4F(豊中市待兼山町 1-5)
当日連絡先:06-6850-6719 または
090-9218-0275(メディアラボ久保田)

アクセス:添付地図ご参照(阪急石橋/モノレール芝原駅より各徒歩 15分程度)
http://www.osaka-u.ac.jp/jp/annai/about/map/toyonaka.html
(38番向いの棟4F)
*万一エレベータや扉が施錠されている場合は外階段をご利用ください

主 催;久保田テツ(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター)
tet@cscd.osaka-u.ac.jp
協 力;大阪大学文学部メディアラボ