Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

世界における事象の点と点

2008-02-26 08:00:41 | Weblog
ロシア大統領選で当選が確実とされているメドベージェフ第1副首相が、セルビアのコシュトニツァ首相と会って、コソボの独立を認めないことを正式に述べたと言う。それはそうだ。スラブ人として、弟分に当たるセルビアの顔に泥を塗るようなことはできないだろう。さらにロシア側からは、セルビアにおけるガスプロム系の会社によるパイプライン設置に関しても話が出た様である。ガスプロムは時価総額世界第三位の企業で、オレンジ革命の際にも大きな役割を担ったことから、西ヨーロッパ諸国とスラブ系ブロックの対立構造として理解すると、理解しやすいかもしれない。

コソボの問題を考えていると、私の中で点と点として存在している世界中の多くの事象が、少しずつ繋がって来る気がする。最近、こんなことを考えていた。

現在、共和党の大統領候補として名が挙がっているロン・ポールの主張が、とても興味深い。彼はとても「アメリカ」の保守(すなわちユダヤ系ネオコンではないアメリカの保守、という限定的な意味)という印象があるのだが、同時にその主張は極左とも思えることがあり、不思議である。

彼はFRBが持っている貨幣発行の権限を、アメリカ国家に戻す、と宣言している。これは、ヒラリーが国民皆保険を目指している様なものとはケタの違う、まさに革命的な行為であると思う。とにかく凄い公約だと思う。

JFケネディは、FRBの持っている貨幣発行の権限を国家内に戻そうとしたことから殺害されたのではないか、という説は根強く残っている。これは意外と思われるかもしれないが、そもそも、アメリカには、建国以来、中央銀行は存在しない。20世紀初頭にアメリカの銀行の手形割引問題が発生するまでは、連邦準備銀行という制度そのものが存在しなかった。そして、このシステムを作ったのが、ジョン・D・ロックフェラー、ポール・ウォーバーグとJPモルガンに後押しされてウィルソン大統領であり、その決断は、議会の休止中に決定される、というきな臭いものであった。

私は、ケネディがこの貨幣発行の権限を国家がコントロールすることを主張したことと、彼がアイリッシュ系のカトリックであることとは、何らかの関係がある様な気がする。プロテスタンティズムの倹約の精神が、貯蓄と銀行機能の発達を生み出したのを、カトリックの彼は斜めから見ることができたと思うのだ。

ロン・ポ-ルのリバタリアンの思想というのは、日本の既存のリベラリズムの議論からは一線を画していると思う。またリバタリアンの代表としてミルトン・フリードマンの名前が挙げられるが、彼も中央銀行による金融政策の実施を政府に戻す、ということを主張していたと思う。

(ここで私が分からないのは、私は連邦準備銀行というシステムの上にニクソン・ショックが起き得て、その延長線上にミルトン・フリードマンのマネタリズムの議論が成立すると思うのだが、間違っているだろうか?)

しかし、今後なんらかのファンダメンタルとリンクした価値を持っていないドルという貨幣の価値が暴落してしまう可能性は高い。もし、そうしたらどうなるのか?私はそれを考えていたのだが、一つ解決策があることに気づいた。

連邦準備銀行の機能を停止し、貨幣発効権を州政府に譲渡すれば良いのだ。

そもそも、ドルそのものがアメリカの中央銀行の貨幣ではなく、株式会社が所有するある種の発行券である。あくまでこの券が、連邦政府の調整券として機能しているのである。そして、もしもこの貨幣そのものが暴落してしまい、使用価値を持たなくなってしまったのであれば、連邦政府とリンクしている貨幣を廃止し、州が発行する州貨幣へと移行すれば良いのだ。そうすれば、最終的に州が発行する貨幣は州の経済ファンダメンタルを反映する様になり、その貨幣は最終的に他の州とリンクして行くであろう。ユーロ発生直前のヨーロッパの様な状況が発生するだろう。

しかし、そんな事が果たして可能なのか、と思った際、最高のケーススタディとして重要なのが、ソビエトの崩壊である。

ソビエトという連邦共和国という一つの国家が破綻し、混乱が起きたにも関わらず、僅か10年後には、独立した周辺国家も含め、立派な資本主義国になっているではないか?!これはもしかしたらシミュレーションではないのか、と勘ぐってしまうほどだ。

アメリカの実体経済はドルの現在の流通量の10分の1である、とトニー・ブレアのブレインであったアンソニー・ギデンスは書いていた。しかし、彼らが現在、世界最大となったロンドンの金融市場を作ってきたのではなかったか?

こういった自称と日本の現状は無関係ではない。慎重に見極めて行きたい領域である。

スペインはコソボの独立を承認するか?

2008-02-21 05:17:03 | Weblog
コソボ情勢が動いている。ヨーロッパにおいて、仏・独・英・伊がコソボの独立を認めることになった。

しかし、ここで問題となるのは、スペインの対応である。スペインは、おそらくヨーロッパ最大の独立問題を抱えている。つまり、バスクとカタルーニャの問題である。

仏・独・英・伊に続き、スペインはヨーロッパの一員として、コソボを独立国として承認することを迫られるであろう。しかし、もしもスペインがセルビアの承認無しに行われたコソボの一方的独立を指示した場合、バスクやカタルーニャが一方的に独立宣言した場合、それを批判することはできない。特にバスクに関しては民族的にも言語的にもスペイン人とは異なる訳で、その状況はコソボのそれと似ている。しかも、コソボとカタルーニャは、2008年には自主憲法の施行を準備しているはずだ。

この構図は、1989年の天安門事件とドイツ統一の状況と少し似ている。天安門事件の際、中国政府の蛮行に対して国際的非難が高まったにも関わらず、中国政府の対応を評価した東ドイツ政府の対応に不満を感じた東ドイツ人たちが、東側からベルリンの壁を壊して行き、それがドイツの統一に繋がった経緯がある。

もしもバスクやカタルーニャが独立を宣言した場合、それはある種、EUの崩壊をも意味する様な気がする。EU憲法の制定ではなく、いわゆるミクロネーションの為の独立憲法制定が、先行してしまうのである。

私には、憲法による国民規定と、国民国家というシステムが、どうしても古いものの様に思われてならない。私は今後、21世紀中に世界そのものが連邦化して行くのではないか、と考えているが、その前には、「国民」の問題と、国家という信用とリンクした貨幣の問題が大きく横たわっている。

メイプルソープ事件の最高裁判決に思う

2008-02-19 13:42:11 | Weblog
メイプルソープの写真集に関する最高裁判決があった。そして、最高裁での判決は、二審を破棄、わいせつ書籍に当たらない、という判決であった。

私には、忘れられない記憶がある。高校2年生の頃、わずかばかりのお小遣いを使って、静岡から早朝発の鈍行列車に乗って、新宿のデパートでやっていたメイプルソープ展を見に行った。確か、パティ・スミスやテレヴィジョン(ロックバンドの方です)、ウォーホルの流れでメイプルソープに興味が湧き、見に行ったのだ。そして、そのデパートでの展示を見て、素直に綺麗な写真だと思った。そして、メイプルソープがアメリカで何故スキャンダラスな扱いを受けていたのか、理解に苦しんだ記憶がある。

そして高校3年生になる春休みの頃、親にワガママを随分と言って、半ば無理やりイギリスに一週間、旅行させてもらった。当時の私はTrainspottingという映画にハマっていて、どうしてもエディンバラとロンドンを見ずにはいられなくなってしまったのだ。

その旅の帰り、何気なくフライトまでの暇つぶしに、とヒースロー空港の本屋さんにあった美術コーナーへと向かった。そこでたまたまメイプルソープの写真集を見たのだが、大変な衝撃を受けた!新宿のデパートで展示されているのとはまるで異なった作品が、その本には納められていた!男性器にナイフを突き立てている様な写真には、正直度肝を抜かれた。

その後日本に帰国して調べてみて、日本の税関でメイプルソープを猥褻物だと判断され本を没収された人が不服に思い、裁判を起こしている、というケースがあることを知った。そして私は、その驚きを当時開設したばかりのホームページにアップした記憶がある。その文脈は、いくら何でも猥褻物として禁止しなくても良いではないか、そんな語り口だった。私はいまでもそう思う。いくら何でも、世界標準の美術品に対して猥褻物とは・・・そして、この税関の行為に対して不服に思った人は、メイプルソープの芸術性を守る為に最後まで戦ったのではないか、そう思う。

しかし、猥褻物の裁判が最高裁で覆されたのは、とても画期的なことだと思う。日本の司法制度も、時流に合わせて変化したということだろうか。または、世界の美術館が美術品として収集しているものを猥褻物と認定してしまったことに、何らかの後悔があったのかもしれない。

また、これは私の勝手な意見だが、日本の税関の役員は、性器を出している、ということが猥褻だと思ったのではなく、普段見慣れていない黒人の性器を見た際に。「猥褻物」だと勝手に判断してしまったのではないか、と勘ぐってしまう。この税関役員は、日本の舞踏ダンサーが性器を露出したものであっても、全く同じ対応をしただろうか?もし私の立てた仮説が当たっているとしたら、それは紛れもない黒人差別である。この税関役員は、国家公務員という役職において、しかも国際空港という場でそういった差別的行為をしたことに対して、何らかの処罰を受けるべきではないか、と私は考える。

ちなみに以前ブログに書いた、現在ベニス・ビエンナーレのパフォーマンス・アート部門のディレクターを務めるイスマエル・イボさんは、メイプルソープの写真の最後のモデルである。イボさんも初めてメイプルソープのスタジオで黒人のMale Nudeを見た際には衝撃を受けた、という話は、とても興味深いものであった。80年代のニューヨークが見てみたい気がする。

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わいせつに当たらず メイプルソープ写真集で最高裁判決

2月19日11時41分配信 産経新聞

 男性器の写真が掲載された米国の写真家、ロバート・メイプルソープ氏の写真集が、輸入禁止のわいせつ書籍に当たるかが争われた訴訟の上告審判決が19日、最高裁第3小法廷であった。那須弘平裁判長は、税関の輸入禁止処分を認めた2審東京高裁判決を破棄、わいせつ書籍に当たらないと判断し、税関の処分を取り消した。判決は裁判官4人の多数意見。

 最高裁が、下級審のわいせつ書籍認定を否定するのは、過去に例がないとみられる。

 那須裁判長は、写真集について「メイプルソープ氏の写真芸術の全体像を概観するもの」と判断。また、芸術的な観点から編集されていることや、384ページの写真集のうち、男性器の写真は19ページにとどまっていることなどを総合的に考慮し、写真集は性欲を刺激するようなわいせつ書籍に当たらないと結論づけた。

 堀籠幸男裁判官は「性器が露骨に画面中央に大きく配置されている場合は、その写真がわいせつ物に当たることは刑事裁判実務で確立された運用。この写真集の一部写真にわいせつ性があることは否定できない」と反対意見を述べた。

 問題となった写真集は「MAPPLETHORPE」。米国の著名な出版社が発行し、国内では原告の男性の会社が平成6年に販売を始めた。約900部が売れ、国会図書館にも収蔵されている。

 判決によると、男性は11年、国内で出版したこの写真集を米国に持ち出した後、再び国内に持ち込もうとした際、成田空港の税関で、関税定率法に基づく輸入禁止品に当たるとされた。

コソボの独立宣言に思う

2008-02-18 18:04:23 | Weblog
最近、考えることが多すぎて、頭が混乱している。それは世界情勢があまりにも混沌としていて、それが私の思考に、寝ても冷めても影響を与えてしまっている。

その一つが、コソボの情勢だ。コソボの独立に対して、私は反対だ。これはNATO空爆の結果もたらされたある種の必然なのかもしれないが、コソボの人たちがアルバニア系住民による単一民族国家を作ろうという狙いがある限り、これは失敗に終わるだろう。これでは、コソボが現代的な国民国家以前に戻ってしまう可能性がある。さらに、大セルビア主義を否定した上でコソボが独立国として認証された後、そのアルバニアの正当性の上にコソボとアルバニアが併合し、大アルバニア主義を復活させてしまっては、元も子もない。それこそ、ナチがオーストリアを民主的に併合したのと同じ現象に近いものが発生しかねない。法治国家としての国民国家の失敗だ。すなわち、法治国家でやる限り、全ての国民は法律下におけるネーション定義の元、全て平等に扱わなくてはならないのに(ルナンによるネーションの定義だ)、そのネーション定義が「アルバニア語」や「イスラーム」という狭義のものとなり、新たな迫害を生みかねないのだ。

そしてアルバニアに対して、日本を含む世界が、何せ知らなすぎる。何故、CIAが資金提供してまでUCK(コソボ解放軍)に体力を付けさせて、セルビア軍と戦わせたのか、そこに対して国際社会はちゃんと見極める必要がある。そして、何故、コソボの独立に対して、ロシアとセルビア、さらに中国が難色を示しているのか、それも知る必要がある。ユーゴの空爆と、東欧のカラー革命は全て繋がっている。私はそう考えている。資本主義の次の段階だ。

また、ヨーロッパにイスラム教国が、アルバニアとボスニアに続いて誕生することが、どういう影響を持つのか、見極める必要がある。これはトルコに与える影響も大きく、場合によってはヨーロッパのヨーロッパ製、すなわちキリスト教性そのものが揺らぐ可能性があり、それはEUのアイデンティティにも影響を与えかねない。

また、コソボの中心地に立てられた、コソボ出身のアルバニア人でありながら、東方正教会の修道女となったマザー・テレサの銅像の行く末に対して、慎重にならなくてはならない。もしもコソボがアルバニア系住民の単一民族国家となるのなら、と想像すると、本当に恐ろしくなる。しかし、既にコソボ南部では、世界遺産となっている東方正教会が破壊されているという。アフガニスタンにおける仏像を破壊したタリバーンと、コソボ独立を推進し東方正教会を否定するUCK系の組織が、私の中で重なる。また、タリバーンもCIAに育成された組織だったことが思い出される。

今まで、私はコソボ出身のキュレーターたちと必死にコソボ独立の可能性が孕む危険性について話して伝えたことが、どれだけ伝わったのか、疑問が残る。彼らは情報を持っていない。しかし、会話そのものには可能性がある。そう信じて、また彼らと話す機会があったら、話してみたい。

それにしても、頭が痛い。

オープニングとスペシャル・イベントの写真をアップしました

2008-02-16 05:27:34 | Weblog
実行委員会のホームページの方に、オープニングとスペシャル・イベントの写真をアップしました。ぜひご覧になって下さい。近日中にビデオもアップしたいと希望しています。

なお、展示カタログ、発売中ですので、ぜひご興味のある方はご購入の方をよろしくお願いします。


ニューヨーク展、ついに終了

2008-02-14 15:56:33 | Weblog
ようやく展示のクロージングが完了した。展示してあった作品を全てパッキングし、作品は美術館またはアーティストに、機材は協力して下さったギャラリーへと返却した。撤収作業の際にも、多くのボランティアさんが手伝いに来て下さり、本当に助かった。

ようやくニューヨークでの展示が終わった、と思うと、ちょっとホっとして、腑抜けになってしまった。搬出用のトラックを返却すると、今年初めての雪が降り始め、なんだかセンチメンタルな気分になり、辞めたはずのタバコを一本もらって、ふかした。

展示の最後の週には、多くの遠方からのお客さんやジャーナリストの方が詰め掛け、対応に追われた。また展示を見て下さった人たちから多くの激励のお手紙を頂、大変励まされた。

展示に興味を持ってくださったジャーナリストの方々は、アート寄りの人よりもどうしてもアカデミズム寄りの方が多く、やはり憲法と戦後日本という硬派なテーマを扱ったことが、観客の二分化(アート系とジャーナリズム系)に現れている気がした。私としては美術の文脈で勝負しているつもりなのだが、なかなかそう捉えられていないことは、残念ではあるが、仕方ない事なのかもしれない。

私も、使い果たしてしまいそうな体力を少しずつ回復しながら、日本への巡回展への準備へと移りたいと思う。その様子はまた追ってブログにてご連絡差し上げます。

戦争体験の記憶としての9条と、日中ギョウザ問題

2008-02-07 08:20:03 | Weblog
戦争体験の共有の記憶としての9条は、これからの世代においてネーション的「共有」とはならないだろう。なぜなら、戦争体験そのものを追体験する環境すら整っていない為、戦争を抑止する為の装置としての9条が、その根底(戦争体験→戦争はいやだ→戦争を回避したい、という国民レベルの一致)から共有できなくなってしまうのだ。その良い例が、共産主義反ナチスパルチザンを経験したという歴史の共有から生まれたユーゴ・ナショナリズム(ナチスの傀儡はいやだ→共産主義パルチザン・南スラブ民族の統一戦線→無宗教、共産主義思想の国民レベルの一致)の崩壊が、チトーの死という共有体験の喪失と一緒にもたらされたことからも伺える。

日本で、戦争体験の共有ができなかった背景の最大の要因として、サンフランシスコ講和条約の際に韓国、北朝鮮、中華人民共和国側と日本が講和条約を結ばずに日米安保を半ば強制的に結んでしまい、アジアでの戦争体験そのものを、対話・講和を通じて共有できなかったことに由来する。まさに「戦後レジーム」である。

ドイツは地続きであった為、侵略した周辺国と和解することなくして復興することは不可能だったが、日本の場合は朝鮮戦争による特需や、アメリカ側の資本主義ブロックに加ることにより、復興することができた。しかし、それに続き、アジアと正面から向き合うことがなかった。そういった歴史の最大の軋轢が、最近話題のギョウザ問題にも現れている気がする。そして、日本国内での議論の多くは、海の向こう側にいる大文字の「他者」すら見えていない。

まず、戦争体験を共有していない私達の世代にとって、9条を理解するための方法は何があるのだろうか?

9条のガンジー主義的側面の意義のみを唱えている人も、ガンジー主義が崩壊に至った過程に関しては、言葉を持っていない様に思える。また、ガンジーのジャイナ教的なエクストリームな思想は、日本の思想とはかなり異なるので、国民レベルでの実践は不可能だと思う。(また、誤解を恐れずに言えば、「民主主義」を声高に唱える人達も、とりあえず「民主主義」、すなわち多数決そのものがナチズムやブッシュ政権を生んでしまったことに対して、言葉を持っていない。)

国連主義の根底となっている、カントの、他者を手段ではなく目的として扱う、という思想は、私は極めて極右的な発想が極左的な平等主義と一致したものと考えるのが正しいのではないかと考える。(これは、パレート配分の考えと一致し、そこで初めて「民主主義」の議論の過程に至れると思うのだが、想像力そのものが欠落しているので、そういった話になっていない気がする。)

もし、ギョウザ事件を例に、極右的発想と極左的発想の一致という点からの「他者を目的として扱う」ことにより平等主義に至るものとして、議論を展開してみよう。

日本は技術集約性に特化した加工貿易国であり、労働集約性の結実である農業が衰退しており、食糧自給率が低く、全ての食料を日本国内でまかなうのは不可能である。結果、生産費の安い中国に食料を依存しなくてはならない、そして中国から食料を輸入したい、という「目的」がある。

中国は、自国での技術集約性が発展途上であり、結果、豊富な労働力から生み出される労働価格の優位を利用し、労働集約的な第一次産業系の製品に特化し、それを輸出することによって商売をするしかない。つまり、労働力の高い国、日本に食料を輸出したい、という「目的」がある。

ここでお互いの利害が一致し、貿易が発生する。そこで、今回のギョウザの問題が発生した。

お互いの利害が一致している限り、この貿易は継続すべきである。問題は、この国家の利権を侵害した問題が、どこでどう起こったのかの真相究明を、中国と日本の双方でしっかり真相究明し、問題の発生した箇所に刑罰を与え(国家は暴力の独占機関!)、お互いの国民が輸出、輸入を信頼の元に築ける様に最大限の努力をするべきだ。そうすれば、双方の「目的」が一致する。

ここでは、いわゆる「極右」の思想(自己の利益のみの追求)と、「極左」の思想(平等主義)というのが貫徹していると思う。カントの言う、他者を目的として扱うことは、極右と極左の思想と一致している(この表現の元になっているのが、デカルト主義(右と左という軸の発生)と日本の戦後レジームだと思う)

中国製ギョウザの事件を発端に、短絡的な中国叩きや中国製品ボイコットをする日本人たちは、その自身の哲学を徹底して、身の回りから全て中国製品を取り除くべきだ。そうしなければ、この批判者は労働価格の格差をフリーライドしながら、中国叩きという全くもって無責任な言論に終始してしまう。しかし、身の回りから中国製品を取り除くことは不可能だと思う。

そして、極端な日本叩きをする中国人たちは、その自身の哲学を徹底して、身の回りから全ての日本製品を取り除くべきであり、ギョウザを日本に輸出する業者に対しても同じ批判をするべきだ。そうしなければ、この批判者は労働価格の比較優位による金銭的享受をフリーライドしながら、日本叩きという無責任な議論をしているに過ぎず、こんな言説は聞くに値しない。

ここで、中国と日本の間に横たわるのは、やはり戦争体験の共有と戦争責任、という戦争の記憶の問題として映る。そこが問題の根幹だと思う。

そして、ギョウザの件を煽っているメディアが、どこから来てやっているのか、日本と中国双方の人たちが慎重になって見極める必要がある。伏線として、

1.竹島の領土問題が日本と韓国の保守政治家の密約における茶番であったことが産経新聞のスクープで明らかになった
2.北方領土問題は日露関係が良好化した際に、アメリカ側から持ち出されている
3.日本と中国が仲たがいすると、得をするのは誰?損をするのは誰?

後は皆さんで考えるしかない。

また、9条を守ることに対するテーゼは、ネーション的な敗北の記憶よりも、「被爆」という、もう戦争をするのが不可能、という極限を限界した国民が選んだ戦争回避の為のシステムとして、とりあえず機能してきた、ということを内外に理解してもらうくらいしか方法は無いのかもしれない。つまり主権国家として戦争できない、ということが戦争回避のシステムとして機能しえる、ということだ。しかし、その裏には日米安保と、その必然としてのアジアの不安定化がセットになっていることを、議論から外してはならないと思う。

そして最後に。ネーションそのものが幻想であることを、全ての世界の国民が理解することが肝心である。主権国家、すなわち国民国家そのものがヨーロッパの発明品であることを、忘れてはならないと思う。

Patrick Burnsによるアトミック・サンシャイン展レビュー

2008-02-06 01:58:55 | Weblog
国連に関する記事をよく書かれているジャーナリストのPatrick Burnsさんが、"Into the Atomic Sunshine"展示レビューをShiftマガジンの英語版に寄稿して下さいました。とても良く書けた、素晴らしい文章になっていると思います。

Shiftマガジンの表紙からの記事へのリンクも、格好いい!

また全ての展示レビューをまとめて、HPにアップしようと希望しております。しばしお待ちを。

スパイラルジェッティが危ない!

2008-02-03 05:49:51 | Weblog
ユタ州にあるロバート・スミッソンの代表作「Spiral Jetty」が、ソルトレイクにある油田開発の為に破壊されそうになっており、文化人たちが抗議活動を行っている、という情報を頂きました。私はスミッソンは大好きなアーティストの一人で、大学院時代にはスミッソンで論文を書いたこともあります。(私のユタでのスパイラルジェッティ体験はここで読めます。)

私は現地に行って驚いたのですが、ソルトレイク市に住んでいる人たちで、スミッソンの名前、さらにスパイラル・ジェッティについて知っている人たちはごく僅かでした。おそらく、単純に文化遺産として、地元で正当な評価を受けていないのが、今回の開発に関する問題だと思います。

プロテスト団体の人たちは、ユタに電話やe-mailで抗議している様です。正式な抗議の時間は過ぎてしまいましたが、今でも遅くないと思います。(私も電話にて、開発前に文化遺産を保護する側と、開発する側の公開討論をする様に訴えました)

興味、関心のある方は以下の文章をご覧になって下さい。それでは、また。

渡辺真也

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January 30, 2008
Spiral Jetty threatened by energy development

UPDATE: 1/31: Comment period extended.

Nancy Holt, Robert Smithson's widow, recently sent an email out detailing specific threats to Smithson's masterpiece, Spiral Jetty. Click below to read it -- and please take action before 7 pm ET Wednesday.

Yesterday I received an urgent email from Lynn DeFreitas, Director of Friends of the Great Salt Lake, telling me of plans for drilling oil in the Salt Lake near Spiral Jetty. See Attachments. The deadline for protest is [today] Wednesday, at 5PM. Of course, DIA has been informed and are meeting about it today.

I have been told by Lynn that the oil wells will not be above the water, but that means some kind of industrial complex of pipes and pumps beneath the water and on the shore. The operation would require roads for oil tank trucks, cranes, pumps etc. which produce noise and will severely alter the wild, natural place.

If you want to send a letter of protest to save the beautiful, natural Utah environment around the Spiral Jetty from oil drilling, the emails or calls of protest go to Jonathan Jemming 801-537-9023 jjemming@utah.gov. Please refer to Application # 8853. Every letter makes a big difference, they do take a lot of notice and know that publicity may follow. Since the Spiral Jetty has global significance, emails from foreign countries would be of special value.

They try to slip these drilling contracts under the radar, that¹s why we found out so late, not through notification, but from a watchdog lawyer at the Southern Utah Wilderness Alliance, the group that alerted me to the land leasing for oil and gas near Sun Tunnels last May.

Thank you for your consideration of this serious environmental matter.