Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

沖縄入りしました

2009-03-05 09:12:37 | Weblog
おとといの夜、関西空港から那覇空港へとフライトする。沖縄入りの回数が増える度、複雑な思いが募って行く。

以前、沖縄出身の学者さんに、
「私は沖縄が好きです」
と言った際、それだけで随分怒られた記憶がある。私は、「沖縄が好きだ、という人に対して、それを批判するのはおかしい」、と随分反論したのだが、沖縄入りの数が増えるにつれて、彼が怒ったのも分かってきた気がする。

深夜のタクシーで、おもろまちにある滞在先に向かうと、カーステレオの中から遠藤賢司の「カレーライス」が流れてきた。沖縄の湿った、生暖かい空気と、エンケンのかすれた声が交差し、私の周りからなかなか離れてくれなかった。

昨日は美術館にてミーティングを行った後、写真家の石川真生さんのご自宅に伺い、展示について丁寧にお話する。展示趣旨をご理解頂いた上で、私の希望する写真をスタジオにて一緒に選ぶ。真生さんが非常に協力的だったので、とても嬉しかった。

その後、作品制作のリサーチをする為、アメリカの軍払下げ品のお店を回って、どんなものがあるのか、見て回る。結論から言うと、何でもあって、びっくりした。マシンガンが(not for sale)のタグと一緒に置いてあって、これ、大丈夫なのかな、なんて思ったり、パラシュートが売っていて、いったい誰が買うのだろう、なんて思った。Dog Tagと言われる、米兵が死んだとしても、身元証明に使われているシルバーのタグを彫るサービスがあったりして、所変わればいろんな商売があるものだなぁ、なんて妙に関心する。

お店の前で、上半身裸のティーンエイジャーの米兵たちが、重低音のステレオの音を聞きながら、ビールを飲んで騒いでいた。これじゃ、地元との軋轢は絶対に無くならないな、そんな風に思った。

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2 コメント

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沖縄 (下田晃平)
2009-03-06 11:51:23
いつもブログ楽しく拝読させて頂いています。以前ある作家の方から「作家はドリーマーではない」と教えられたと書かれていらした事はとても深く私の中で響いています。話の前後がわからないので渡辺様とその作家の方がどんなお話を話され渡辺様がそのお話からどんな事を感じられたかを教えて頂ければとても嬉しく感じます。私は学芸員やキュレイターのお仕事は決して交通事故を起こす事ではないと感じています。作る人は時代や世の中の多くの方が同意し受け入れているあり方とは違うものの見方を引き出す事をする方々なので、意図しようがしまいが交通事故を起こしてしまうかもしれません。その態度に共感しつつ少し距離をとって作り手の意図を適切に扱い、世の中に新しい気づく機会を提示する、そういうお仕事が学芸員やキュレイターのなさる事だと感じます。さて渡辺様がある学者の方とお話をしていた時渡辺様が「沖縄が好きだ」と仰られた事に対して、学者の方が怒ったのでその時は「好きだと言ったって良いのではないか」と反論されていましたが、何度か沖縄に足を運ばれる度に学者の方の怒られる事がわかる様な気がしてくると渡辺様は仰られています。その心境の変化はいつどの様に生じたのでしょう?その気づきにどの段階でどの様に気づかれたのか、渡辺様の中ではっきりされているのでしょうか?例えば後半で若い米兵が半裸で音楽を流してビールを飲んでいる様子を描写されていますが、様々な認識や見解のズレが無関心のまま放置されている様子を沖縄に足を運ぶ度に渡辺様は感じ、その無関心に対して学者の方は腹立たしさを感じられているのではと感じられる様になったのでしょうか?私は東京に住んでいます。沖縄にはまだ一度も行った事がありません。しかし渡辺様だけでなく違和感も含めて色々な視点で沖縄については語られています。それは米軍基地がありリゾート地でもあり、多層的な背景があるからでしょうか?ですが北海道はどうでしょう?北海道についてもロシア、レポ船や北方領土、アイヌ等様々な私が知り得る限りでも要素がありますが、沖縄程語られているという実感が私にはありません。語られてはいます。ですが情報として私が享受する上での頻度の落差を感じます。勿論意識的に沖縄をとか北海道とかと個人的に知ろうとすればその落差を改善或いは片寄りも意識する事は出来るでしょうが。そして勿論渡辺様が企画される展示を沖縄で行うという目的があるからこそ、沖縄に足を運ばれ沖縄を感じる機会があってそれをご自身のブログにお書きになられているだけなのでしょうが。脈略の無い事を長々と書いて大変失礼しました。代官山での展示楽しく拝見させて頂きました。東京でまた展示される事がありましたら拝見したく感じています。これからもブログ読ませて頂きます。色々教えて頂ければとても嬉しく感じます。宜しくお願いします。
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Dreamerとは (真也)
2009-03-07 11:00:45
匿名性を重視する作家さんであった為、それが誰であったか、という具体的なお話はできません。しかし、彼は、イスラエルをテーマとした映画というのが多数作られているにも関わらず、イスラエルが極右政権というのを選出してしまう現状において、映画が社会的影響を持てる、と考えている作家がいるとしたら、そいつはDreamer(否定的な意味での夢想家)である、と述べていました。そこで、彼が引用していたのが、Cesare Paveseの「猫だけが知っている」という言葉でした。

「私が沖縄が好きだ」と発言して、沖縄の学者の方に怒られた事がわかる様な気がしてくるのは、私と沖縄との距離感が無くなって来たからだと思います。以前、その学者さんの関係者とご一緒した際に、「シーミーがあるので、今度沖縄に帰ります」とお話しており、私が「シーミーって何ですか?」と聞くと、その学者さんに、「真也くんは沖縄のことを知らないから」と返されたことがありました。(もちろん、この会話にも多くの複線があるのですが。。。)

当事者である沖縄の方は、(沖縄のことを知らないくせに)「沖縄のことが好きだ」なんて言えるのか、ということがあると思います。沖縄出身の方で、沖縄が好きな人ほど、外部の人で「沖縄のことが好きだ」という人に対して、複雑な感情を抱くと思うのです。


>私は東京に住んでいます。沖縄にはまだ一度も行った事がありません。しかし渡辺様だけでなく違和感も含めて色々な視点で沖縄については語られています。それは米軍基地がありリゾート地でもあり、多層的な背景があるからでしょうか?ですが北海道はどうでしょう?


北海道と沖縄は関係ない、と、私のお付き合いのある沖縄の作家さんは答えるでしょう。それこそ、沖縄を分かってない、と言われてしまうのは目に見えています。それが、沖縄の当事者性の難しさです。

下田晃平さんも、もしもこのテーマに本当に興味があるのでしたら、とりあえず4月11日のオープニング・シンポジウムにいらっしゃいませんか?私が文面にしてもなかなか伝わらないこと、または文章にならないこと、そういった重要なことが分かるのではないか、と思います。
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