Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

鈴木邦男さんの新刊:「蟹工船」を読み説く+展示ポスタープラン

2009-03-19 09:39:41 | Weblog
鈴木邦男さんから本が送られて来た。いつも新刊本が出る度に、ご丁寧に送って下さる。本当に礼儀正しくて、そして優しい人だと思う。(どうして日本の左派の中には、こういった礼節を重んじる人が、なかなか出てこないのだろう?)

魂の革命家 小林多喜二 「蟹工船」を読み説く

というものなのだが、さすが鈴木邦男さんが書いただけあって、一味違った切り口となっており、勉強になった。

大正から昭和にかけて、田中智學が創設した「国柱会」という日蓮宗を元にした国家革新の運動体があったのだが、その会員には石原莞爾や宮沢賢治がいた。

(国柱会と言えば、八紘一宇という言葉を生み出したことでも有名だが、私がマレーシアのジャングルにて、戦争体験をした現地の老人から聞いた歌は、「ハッコウイチウノー」という歌であった。)

鈴木邦男さんは、宮沢賢治に対して、「君は作家になった方が良い」と諭してくれる国柱会の幹部がいたが、小林多喜二に対しては、そういったことを諭してくれる共産党の幹部はいなかった為、彼をオルグやルポに使い、死なせてしまった、勿体ないことをした、と述べているのが印象的であった。

さらに、田中智學の三男が、石原莞爾や宮沢賢治とも懇意であり、100万部を売上げた『天皇とプロレタリア』を書いた里見岸雄であり、この本の中で、里見は天皇が体制側、資本家側のものとされ、労働者を反天皇に追いやっている、という現状を憂いでいた、と言う。非常に興味深い。

左派の思想家も、保守思想をちゃんと押さえておいた方が良いと思うのだけれど、今の私くらいの世代の思想家は、戦前から戦後にかけての保守思想をどれくらい勉強しているのだろうか、と疑問に思った。鈴木さんの様な方が身近にいると、全く異なる側面から物事を捉えて語ってくれる為、とても参考になる。

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昨日は横浜にあるデザイナーの相澤幸彦さんの事務所に伺い、「アトミックサンシャインの中へ in 沖縄」ポスターのファイナル版を仕上げてくる。相澤さんには、いつも夜遅くまで頑張ってデザインして頂き、本当に恐縮だ。おかげ様で、素晴らしいものができそうだ。相澤さん、お疲れ様!



「蟹工船」を読み解く
鈴木邦男
データ・ハウス

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