Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

今宵はデュシャンと一緒にハロウィーンを

2006-10-30 03:33:51 | Weblog
土曜日も朝から世界連邦で通訳。イタリアが国連安全保障理事会の枠をEUに譲渡する、という件に関して、識者で意見交換が行われた。長時間にわたる通訳だったので、とにかく消耗した。

その後、家で仕事を済ませてから、夕方から招待されていたアジアソサエティーの展示を見に行く。シンガポールのプリント工場と連携して行われた作品群であったが、そのクオリティの高さに惹かれた。特に照屋勇賢さんの作品は、美しかった。

その後、アジア・ソサエティからタクシーに飛び乗って、ハーレムのアポロ・シアターに移動。DJスプーキーことポール・ミラーのDJを見に行く。友人達にDJスプーキーを見に行くんだ、という話をしていたら、みんな行きたがって、結局7人の大所帯になってしまった。

ポールとは先日一緒にご飯を食べたりと、何度かご一緒しているのだが、本当に頭の良い人だ。ここまで「この人は頭が良いなぁ」、と思える人は、本当になかなか会えない。パフォーマンスも半分レクチャーじみたもので、デュシャンの話やダダイズムの話をしながら、演奏が進んでいく。フラッシュプレイヤーを使ったVJと、まるでおもちゃの様にターンテーブルを回すポールは、文句なしにかっこ良かった。貫禄ですね。

その後、みんなでご飯を食べていたら、一緒に演奏を見たアーティストのミカエルが、デュシャンの講義の音声ファイルを持っているからみんなで聞こう、ということになり、アパートに移動、デュシャンの講義を拝聴する。確かに皆が言う通り、デュシャンの語りは、とても知的、刺激的である。その後、皆で意見交換しながら、とりとめのない話になる。周りがみなハロウィーンで盛り上がっている夜の中、なんとも渋い時間を過ごした。


また最近、友人のアーティストが、ある人物に、作品がホーミ・ババが扱っている美学の問題に似ているから、調べてみなさい、という提案を受けたらしい。ババの名前はポストコロニアル批判の学者として私も知っていたが、ちょっと興味があって調べてみると、彼がパールシーとしての背景を持っていることが分かった。

パールシーとは10世紀頃、ゾロアスター教からイスラム教への改宗を拒否した民族の末裔のことであり、インドには10万人程度住んでいるマイノリティの人たちらしい。10万人程度のマイノリティでありながら、財力・文化力はかなりのものだそう。

さらに面白かったのは、フレディ・マーキュリーがパールシーであったという点。彼は当時イギリス領だった、タンザニアのザンジバル島のストーン・タウンに、パールシーの両親の間に生まれたそう。その後イギリス政府の役人として働いている父親の関係、それとザンジバール革命の影響でインドに移り住み、ボンベイ郊外の高校に通ったという。つまり、普通のイギリス人ではないわけだ。私は高校時代クイーンが大好きでよく聞いていたのだが、あのボヘミアン・ラプソディに見られるフレディの世界観がどこかれ来るのか、非常に疑問に思っていた。しかし、こういう背景を知ると、少しずつその理由が分かってくる気がする。