Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

スターバックス・ジャングルでのハーンと汗

2006-10-23 13:56:52 | Weblog
午後まで仕事をこなしてから、MoMAの展示を見てくる。Kota Ezawaさんや河原温さんの作品を見るためだ。もちろん彼らの作品は最高だったけれど、かなりまとまった量でみれたRichard HamiltonやJuan Hidaldo、Peter Doigの作品も非常に良かった。楽しみにしていたEija Leesa Ahtillaの作品が見れなかったのが残念。

夜8時からサッカーの試合があるのでそれまでカフェで読書しながら時間をつぶそうと思ったのだが、68st周辺には手ごろなカフェがない。あるのは、スターバックスだけだ。先日、映画監督をやっている友人のフィリップとNYの話をしたとき、「NYはコンクリート・ジャングルだ」と言った際、フィリップが「いや、スターバックス・ジャングルだ!」とやり返されたのを思い出す。でも、本当にスターバックス・ジャングルみたいだ。

仕方なく入ったスターバックスでは人が溢れていて、なかなか席に座れない。やっと10分ほど立ちながら待っていて、2つ席が空いたので、近くでまっていた女性客と同席することに。

「あなた、アーティスト?どこかで見たことあるんだけれど?」向かいの席になった客に聞かれた。「いや、私はキュレーターをやっています」と言うと、どんな展示をしたのか、聞かれた。そこでAnother Expoの話をすると、ああ、あの展示、見たよ。とても良かった、と言ってもらえ、嬉しかった。この方はAniko Erdosiというハンガリー人のキュレーターで、Apex Artで最近展示をしているバリバリの若手キュレーターであった。Drawing Centerのキャサリンとも仲が良く、キャサリンがやっているEurope Lost and Foundの話などで盛り上がる。

アニコはコロンビア大学でアートと国家の授業を持っているAgnes Hellerの教え子らしい。彼女の出身がハンガリーということで、すぐやはり民族の話になってしまった。ハンガリーにおけるロゴスと言語の話になったのだが、ロゴスの話をした際に避けて通れるキリスト教の話になり、イシュトヴァーン1世が西暦1000年にキリスト教に改宗してからのヨーロッパとハンガリーの勢力関係の話になり、また言語と中央アジアと民族の話になった。

しかしなぜハン(汗)という文字を書くのだろう?私には、ババリアという言葉が英語でバーバリック(野蛮)という文字になってしまった様に、言語と密接に結びついたネーションの外部への圧力のように思えるのだ。(知っている人がいたら教えて下さい)

日本に住んでいるアメリカ人と話すと、抵抗のある日本のブランド名でカルピスとポカリスエットがすぐ挙がるが、カルピスは、どうしてもカルシウム・ピス(カルシウム小便)、ポカリスエットはポカリ・汗という、到底飲めなそうなドリンクになってしまう。(ちなみにアメリカでのカルピスのブランド名は、カルピコ)そう考えると、中国人から見て外部の王様に当たる汗という当て字にも、中国人から見た場合、外部の騎馬民族の野蛮人というニュアンスが強いのではないか、という印象を受ける。日本が倭の国(小人の国)となり、越南が南越になれなかった様に。

アニコは乗馬が好きらしく、なんであんなに馬に乗ると落ち着くのだろう、やはり私の祖先が騎馬民族だったからだろうか、という話になった。私には乗馬をしてスッキリする、というその感覚が分からない。そこからJan Assmanの文化的記憶の話になり、そこからは、とりとめのない話になった。

アニコから、グランというセルビア人の老アーティストがSalon de Fleurusというガートルード・シュタインのサロンを復刻させ、SOHOにて活動しているから一緒に行かないか、という誘いを受ける。グランのことはスロベニア人のキュレーター仲間のナターシャから聞いていたが、こんな所でまた遭遇するとは思わなかった。早速、行ってみることにする。楽しみだ。