なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

腹部大動脈瘤破裂

2021年10月01日 | Weblog

 水曜日の当直の時に、心肺停止の84歳男性が救急搬入された。

 自宅の外で倒れているのを家族が発見して救急要請していた。2時間前に見たのが最後だった。体温は戸外にいたこともあり、低下していた。

 搬入要請をした救急隊も冷たくなっていて、難しいと思いますと伝えてきた。心肺停止、瞳孔散大・対光反射消失で、心電図上も心静止だった。

 救急隊は心臓マッサージ(胸骨圧迫)の器械を装着して、挿管もして、点滴も入れていた。そのまま使わせてもらって、アドレナリン注を行った。搬入後も反応はほとんどなく、アドレナリン投与でわずかQRS波形が出たが(脈拍は触知しないPEA)、すぐに心静止になった。

 

 家族・親族が6人来ていた。遅れた来た息子さんに、心肺停止・瞳孔散大・対光反射消失の状態は変わらないことを伝えた。腹部とその分枝に4つの動脈瘤があるという。

 心肺蘇生を続けたが、アドレナリン投与にも反応がなくなった。家族の了解を得て、心肺蘇生術を中止して死亡を確認した。

 心肺停止で搬入された患者さんには必ず新型コロナの検査をすることになっていた。おそらく腹部大動脈瘤破裂と思われたので、簡易な新型コロナ抗原定性検査を提出した。20分後に陰性を確認して、Autopsy imagingを行った。

 頭部CTでは頭蓋内出血はなかった。胸腹部CTで腹部大動脈から腸骨大動脈の破裂と判断される所見があった。動脈瘤は地域の基幹病院の血管外科でフォローされていた。

 両下腿の浮腫・胸水貯留もあったので、うっ血性心不全もあったと思われるが、突然死の原因として動脈瘤破裂と判断した。

 

 大柄な体格で、おそらく急に意識消失して、そんままばったりと倒れたらしい。泥・草(虫も)がかなり付いていて、顔面と右腕の傷から出血していた。便失禁もあった。

 現在、当直の看護師は人員不足からひとりだけになっている。病棟から応援の看護師を呼んで、処置を行った。圧迫だけで止血されず、当方が最低限の縫合を行った。

 ふだんの死後処置は看護師さんにまかせている。今回は大柄で体重もあり、動かすのが大変なので、一緒に処置を手伝った(動かす時に手を貸しただけだが)。

 病院の浴衣を着せられて、搬入時よりかなりきれいな姿になって、迎えにきた葬儀社の車に乗せられて行った。

 

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