なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

DNARはどこまでDNAR

2019年12月17日 | Weblog

 S状結腸癌・多発肝転移の84歳女性が入院していた。内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が担当していた。大腸内視鏡検査について消化器科医と相談したが、両側胸水貯留もあり、緩和ケアのみの治療方針になるのでしなくもいいのではと言われていた。

 家族は、患者さん本人には病名を伝えないでほしいと希望していた。病状悪化時はDNARの方針となった。この時期だとできれば年末はいったん退院させたいということになるが、食事摂取量も少なく、退院は難しそうだった。

 それでも一度は自宅退院にという話が出ていたが、日曜日に急変して亡くなってしまった。日直で出ていた若い先生(別の内科専攻医)が対応して、主治医も駆けつけた。

 予想しない急変ともいえるが、DNARの方針だったので、心肺蘇生術はしなかったそうだ。心肺蘇生を行えば、胸骨・肋骨はベコベコになって無残なことになってしまう。効果はなく、穏やかに看取りたいという家族の希望に沿わないことになる。

 月曜日に若い先生に、心電図モニターを見せられた。癌の末期でこんな波形になるでしょうかと訊かれた。洞調律から調律不明の心電図になり、その後に心室細動と判断される波形になっていた。

 癌終末期だと、しだいに徐脈になっていって、PEAのようになるという印象がある。癌終末期と関係なく突発した致死的不整脈であれば、心肺蘇生(除細動)の適応になるだろう。

 癌終末期でのDNARは癌の進行による病状の時ものだから、まだ月の単位で予後が見込める時は、たとえば突然の心筋梗塞発症から心室細動になれば、心肺蘇生・除細動をすることになるか。しかし全身状態が相当に悪化していればどうだろうか。

 どの程度全身状態が悪化・衰弱した時からがすべてDNARの扱いになるのか(ならないのか)、判断は難しいと答えた。

 

 たまたま今年は地域医療研修の内科専攻医がふたり当院に来ている。本当はひとりずつ交代だが、ちょっと事情があった。3月でふたりともいなくなってしまうので、元の内科2名体制に戻ってしまう。

 病院の赤字問題や方針への不満で、他科の医師数人が退職する予定で、病院の中がゴタゴタしている(医療スタッフの不安が渦巻いている)。先週は病院管理者に呼ばれて、何とかするから辞めないようにと言われた。でも、まったくあてはないらしい。もう一人の内科医もそのうち呼んで話をするから、とも言われた。

 そのもう一人に、「そのうち呼ばれるよ」と伝えると、「人がいないのに辞めないでもないでしょう」と、もっともなことを言われた。

 

 

 

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 悪化した肺炎 | トップ | アルコール性肝硬変、肝性脳症 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事