なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

脚気心?

2015年06月30日 | Weblog

 今月の初めに64歳男性が下肢の浮腫と息切れ(低酸素血症)で循環器科に入院した。胸部X線で心拡大・胸水貯留はないが、両側の肺動脈拡張を認めた。心エコーでは、左室機能は正常だったが、右心系の拡張があり、三尖弁逆流症を認めた。肺高血圧症から右心不全を呈していると判明した。判明したが、肺高血圧症の原因が不明だった。原発性肺高血圧症とするよりは、慢性肺血栓塞栓症が疑われたが、確診はつかなかった。

 37~38℃の発熱があり、両側足関節炎があった。肺高血圧症といえば混合性結合組織病ということで、内科に相談がきた。膠原病らしい症状は他にはなくて、足関節のみだと偽痛風などの関節炎を考えた方がいいのではないか。肺炎などの感染症もなさそうだった。入院してから、循環器科で利尿薬(ラシックス)、コアテックなどを使っていたが、症状は改善しなかった(酸素吸入2~3L/分で酸素飽和度は十分保たれる)。緊急ではないが、見込みもつかないし、年齢的には何としても改善させなければならない。ここは大学病院で精査・治療を依頼してはということになった。

 大学病院循環器内科から週1回応援に来てもらっていて、来てない日でも電話で直接相談できる(今の医局長は昔当院で研修医だった先生)。2日後に大学病院に転院することになった。その後の経過を訊くと、改善が見られないという話だった。大学病院でも治療に難渋する症例だったのか、やっぱり送って良かったと話していた。

 それが昨日になって、脚気心だったらしいと循環器科医から聞いた。疑った経緯や治療の詳しいことはわからないが、症状はかなり改善したそうだ。「えっ、そうだったんですか」と驚いた。脚気心では普通は両心不全になるので、肺高血圧症になるのかと思った。思ったが、脚気心で肺高血圧症を呈したという症例報告は案外あった。当然ビタミンB1投与で回復している。

 当院入院時にビタミンB1の投与はしていなかった。入院してから食事は全量摂取だったから、普通はしない。ただ、この患者さんは独身で、食生活は問題があったのかもしれない(裕福な家系らしいが、自称俺ははぐれものと言っていた)。詳しいことは大学病院から返事が来てみないとわからないが、とにかく改善して良かった(送って良かった)。

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