この症例も66歳男性の化膿性脊椎炎だが、部位は胸椎。1か月前に山間の診療所から、発熱が続くとして当院内科に紹介になった。初診で診た先生から相談されて、左右にまたがっているのが奇異な印象だったが、肺病変として地域の基幹病院呼吸器内科に紹介してもらうことにした。
その後に当院の整形外科外来に回されてきたという。診断は胸椎化膿性脊椎炎だった。最初にCTを見た時は脊椎に注目していなかったが、よくよく見れば胸椎がちゃん?と壊れている。化膿巣が前側に張り出していて、腰椎であれば腸腰筋膿瘍となるべきところが、胸椎なので後縦隔に突出してきていた。
紹介先では外来で血液培養2セットを提出して、入院ではなく、経口抗菌薬による外来治療になっていた。そして解熱して炎症反応が軽快してすぐに当院整形外科外来に紹介していた。
血液培養2セットからは黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出されていた。抗菌薬はオグサワ(オーグメンチン+サワシリン)で、おそらく菌が検出される前にエンピリックに処方してたもののようだ。黄色ブドウ球菌(MSSA)ならば通常他の抗菌薬になると思うが、これで効いている。
紹介された当院の整形外科外来では、2か月分の抗菌薬(同じメニュー)を処方して、次回予約は12月に入れていた。外来治療にしたことも、2か月分処方したことも、対応としてどうかと思うが、そもそもはよく検討しないであっさり丸投げした当方に問題がある。今回の学会でまったく同じ症例が出ていたので、1か月後の今だったら、きちんと胸腰椎MRI・血液培養・心エコーを行う(はず)。
この患者さんは首都圏のラーメン屋に住み込みで働いていたそうだ。アルコール多飲があり、今年アルコール性肝硬変で病院に入院した。腹水と浮腫があったらしい。3か月経過して退院するように言われたが、年齢的に仕事も難しくなり、地元の当地に戻ってきて兄の家に同居させてもらった。
診療情報提供書を持って来なかったので、診療所では残っていた薬を見て、利尿薬少量とウルソを処方していた。昨日はその診療所から、事情がよくわからないので、ふだんの処方も当院からお願いしたいという内容で再度紹介された。当地に戻ってからは禁酒を継続している。
外来を受診した時のCTを見ると、画像上は肝硬変とは言い難い(組織学的には肝硬変なのだろう)。腹水も浮腫もなく、肝機能も正常域なので(ChEが低めで、A/G比からγ-グロブリン高値はある)、処方は中止してよい状態だった。
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