なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

心因性?

2019年11月18日 | Weblog

 68歳女性がRS3PE疑いで紹介された。先週外来予約の診療情報提供書が来ていて、経過を確認していた。まず違うだろうと思われたが、実際に診察してから考えることにした。

 昨年2月に左肩が痛くなり、上肢を上げにくくなっていた。患者さんの話では、さらに左上腕~前腕まで痛くなったが、上腕~前腕は痛み持続はしていない。また左大胸筋外縁も痛くなったそうだ。右肩の少し痛いが左に比べると軽度だった。右上腕まで痛い時があるという。右大胸筋外縁も痛いことがある。

 左前腕が腫れるというが、熱感はなく、軽度に浮腫はあるかもしれないという程度だった。両手・手指と両足・足趾の症状はない。両側の腰部も痛いというが、歩行や立ち上がりにさほど支障はない。診察室にも普通に歩いて入ってきた。

 症状が出てから、近くの医院を受診して、その後当院の整形外科に紹介されて何度か通院した。X線で有意な変化はない。血液検査では炎症反応は陰性(白血球数正常域、CRP0.0mg/dl)で、RF・抗CCP抗体・抗核抗体は陰性だった。

 関節リウマチではということで、整形外科のリウマチ外来(大学病院から週1回)に回された。DMARDのリマチル(ブシラミン)で経過をみることになった。関節リウマチ分類基準は満たさない。さすがにメトトレキサートは開始できなかっただろう。

 リマチルの副作用の蛋白尿が(教科書的に)出現して、当院の腎臓内科外来(大学病院から週1回)に紹介された。大学病院で腎生検を受けて、薬剤性の膜性腎症と診断された(薬剤性まで診断できるのだろうか)。幸いに薬剤中止で蛋白尿は消失した。

 整形外科ではリリカとアセトアミノフェンで経過をみていたが、症状が続いていた。医院から総合診療科のある病院に紹介してもらった。そこで、RS3PEが疑われるが遠方なので、当院内科で経過をみてほしいと紹介されたという経緯だった。

 今日の症状はというと、左肩が痛くてあまり上げられないのは同じだった。それ以外の症状はほとんどないそうだ。手足の腫脹・熱感・疼痛はない。これまで整形外科で何度も炎症反応が検査されて、血沈も含めてまったく陰性だった。発熱はない。

 リウマチ性多発筋痛症(PMR)は年1~2名が受診するが、RS3PEはこれまでで4~5人くらいだろう。全部普通に炎症反応が上昇して、特に血沈は著明に亢進していた。症状も検査値でも合わない。

 

 何か生活で気になることはありませんか、と訊いてみた。この患者さんは夫・8年前に離婚した息子・孫(女性高校生)との4人暮らしだった。孫のことが気になるという。それに同居はしていないが、高齢になった夫の両親と自分の父親(母親はすでに死亡)の介護の問題があるそうだ。特に自分の父親のところには、毎日行って世話をしている。

 明らかな食欲不振や不眠はないようだが、元気はない。症状が続いて、治療効果がないままにあちらこちらと紹介されているが、律儀に紹介先を受診し続けている。

 左肩は整形外科的な問題があるのだろうが、それ以外の症状は心因性の要素が大きい印象をもった。抗うつ薬ではあるが、痛みのある時によく使用している薬にしてみませんか言ってみた。特に異存はないようだったので、SNRIのサインバルタ(デュロキセチン)で開始することにした。必ずこれが効くとはいえないので、その時は別の治療を考えるので、少し気長に通院してくださいと伝えた。

 同じような年齢で、腰痛・膝痛が続いて、整形外科受診で軽快せず、内科に回ってきた患者さんがいた。寝たきりのようになって入院したが、サインバルタで症状が軽快して退院後に外来通院していた。約半年経過したくらいで、自分で薬をやめてしまっていたが、症状の悪化はないそうだ。いったん治療を休止して経過をみるとになった。

 今回の患者さんはどうなるだろうか。

 

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