水曜日は当直だった。午後11時半過ぎに病棟から連絡があった。8月12日から入院して、翌日に地域の基幹病院に転院予定の83歳女性が急に喘鳴が出現して酸素飽和度が低下したという。
これまで喘鳴の既往はなかったらしい。喘鳴は吸気時か呼気時か尋ねると、ちょっと間があって呼気ですと答えた。呼気時だと上気道狭窄になる。
病棟に行ってみると、ゼーゼーという音が聞えた。聴診すると呼気時の喘鳴で両側肺に聴取される。吸気時にひゅっという音が入るが、ぜーゼーという呼気延長があり、一瞬で一気に吸気をするためだった。浮腫はなかった。上気道に狭窄音はない。気管支喘息発作ということになる。
デキサメサゾン8mg点滴静注を入れて、これまで経緯を確認した。1年前から食後に嘔吐するようになっていた。最近は食事をするたびに嘔吐するようになり、内科医院から当院に紹介された。
腎臓内科の若い先生が担当していた。仕事の半分は透析だが、それ以外の内科診療も行っている。
医院での内視鏡では、胃は問題なく、十二指腸内は食残が多く観察困難だった。胸腹部CTでは胃から十二指腸下降脚まで拡張しているが、水平脚のところで狭窄しているように見える。
消化器科医に相談すると、十二指腸が大動脈と上腸間膜動脈で挟まれてしまう上腸間膜動脈症候群ではないかといわれた。単純CTだけなので見えにくいが、拡張しているのはその部分だけなので合っている。基幹病院の消化器内科に相談して、転院の予定となった。
胸部は両側胸水が貯留しているが、肺野は肺うっ血・水腫はなく、慢性的な変化のようだ(心嚢液貯留も軽度にある)。心臓喘息ではないだろう。
ひどい発作の時に、いきなりβ2刺激薬の吸入を行うとかえって刺激で悪化することがある。ステロイドを入れてから吸入するのが無難だ。今回もステロイド投与後にネブラーザー吸入を開始したが、刺激で喘鳴が悪化してしまい、すぐに中止した。
喘鳴は少し良くなったが、ステロイドだけの効果を待つのも頼りない。ネオフィリン125mgの点滴静注とβ2刺激薬の貼付剤(ツロブテロールテープ1mg(2mgの半分)も追加した。(体重が31kg)喘鳴の程度が軽減して患者さんも楽になったという。そのまま経過を見てもらうことにした。
朝に診に行くと、喘鳴は消失して、酸素吸入も止まっていた。患者さんは予定通り転院となった。その日担当医は夏休みで不在だったので、今回のエピソードを診療情報提供書に記載した。
上腸間膜動脈症候群は、本当にそういう病態があるのかとい話もあるようだ。10年以上前に知的障害で施設入所中の極端にやせた中年女性が、上腸間膜症候群の診断で外科手術となった。
十二指腸水平脚で切って上腸間膜の腹側で吻合するという手術で(切除はしていない)、症状は消失した。
開業医になってから普通に生活してる若い女性で、
そんなには痩せてない方を2例経験しました。
エコーで診ると狭窄部で内容物がto and fro movementになってるのが良く分かります。