何度か肺炎と心不全で入退院を繰り返している83歳女性が、約3週間下痢と食欲不振が続いて受診した。入所している施設からの紹介だった。認知症で何度も職員を呼び(入院すると看護師を呼ぶ)、また夜間不穏があるので施設では困っているようだ(入院すると看護師が困る)。昨年から入院のたびに抗菌薬投与があり、クロストリディウム・ディフィシル感染症かと思ったが、CD抗原・CD toxinは陰性だった。
結局入院で経過をみることになった。輸液が多すぎると心不全が悪化するので、1000ml/日の点滴を持続で入れた。PPIが投与されていたので、collagenous colitisを疑ってPPIを中止した。バイアスピリンも中止してプラビックスに変更した。1週間の経過で下痢は治まって、食欲も出てきた。大腸内視鏡はしていないので確診ではないが、collageneos colitisだったのかもしれない。自然に治まった可能性もあるが。
入院後に利尿剤を中止していたが、次第に浮腫が目立ってきたので、前よりは少ない量で再開していた。退院できそうな見込みがついたと思っていたら、一昨日車椅子に座位になっている時に突然意識消失した。看護師があわててベットに横臥させて、下肢を拳上させると、ゆっくりと意識が戻って会話できるようになった。血液検査と頭部CTは異常なしだった(萎縮が目立つが新規病変はない)。食事もとれていたが、次の日の夕方から横臥していても意識が低下して傾眠傾向になった。呼びかけると、ぼんやりと返事をしてうなづいた。今日になっても状態は変わらない。頭部MRIを行ったが、新鮮な脳梗塞はなかった(出血性病変のない)。ただMRAで見ると、脳血管全体にかなりの狭窄があり、どこが詰まってもおかしくないような血管だった。脳血流低下による症状と判断するしかなかった。持続点滴(1000ml/日)で経過をみるしかないようだ。その旨を家族(娘さん)にお話した。施設の籍が今週で切れてしまうので、施設にもそるとすば再度の申し込みになる(優先順位一番にはしてくれる)。
女性の83歳なので、平均寿命より若くて今時としてはそれほどの年齢ではないが、この方の血管年齢は相当いっていると思われる。足背動脈の拍動も弱く、気が付いたら下肢がチアノーゼにということも危惧される。全体的に寿命かなという気もするので、娘さんにちょっと言ってみたら、同意してくれた。できる範囲では粘ってみよう。
「INTESTINE腸」という雑誌のバックナンバーに「日常遭遇する大腸炎の鑑別ー内視鏡を中心に」があるので、取り寄せた。雑誌の性質上、題名通り内視鏡所見が中心だが、よくまとまっている。
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