なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「ブラッシュアップ急性腹症 第2版」

2019年03月09日 | Weblog

 「ブラッシュアップ急性腹症 第2版」窪田忠夫著(中外医学社)を読んでいる。実際に診療している外科医なので、実感できる内容になっている。研修医にお勧め。中外医学社の本は、これまで紙質が厚くて粗雑で印刷が薄いというものが多かった(この本の第1版も)。この本は紙質が薄くて良く、印刷もしっかりしていてカラー写真もきれいだ。

 コラムで私見を述べておられるのが納得の内容だった。まず「イレウス」について。日本では従来、腸閉塞を機械的イレウス(腸管の閉塞あり)でも麻痺性イレウスでもイレウスと称しているが、国際的には、腸閉塞は腸管の閉塞のあるもので、イレウスは麻痺性イレウスでのみ使用している。単に「イレウスです」と言ってしまうと、そこから原因検索に向かわずに思考が止まってしまう危険がある。腸閉塞と称すれば、そこから必然的に腸管閉塞の原因検索に向かうようになる。著者は「イレウス(という用語の)撲滅運動」展開中だそうだ。

 次に「胃腸炎」について。そもそも胃腸炎という病気はあるのかと著者はいう。ウイルス性・細菌性腸炎の症状は、腹痛・嘔吐・下痢だが、この場合の嘔吐は腸炎に付随した症状であり、胃の炎症ではない(まあ何度も嘔吐すれば結果的に胃粘膜の発赤・びらんは生じるか)。胃炎は胃炎でまた違う疾患だ。

 そして「便秘」について。腹痛で受診した患者さんの腹部X線で大腸内の便が目立つと便秘と診断してしまう。そこで浣腸をして排便の有無にかかわらず症状が(ちょっとでも)軽快すると、帰宅としてしまう。1~2日便がなくて、X線で大腸の便が目立つだけで、腹痛の原因を便秘をしてしまっていいのか。他の疾患を見逃しているのではないか。

 昭和な感じの著者が隣にいてアドバイスしてくれるような印象の記載になっていて、とてもいい。自分の記載に自分でつっこみを入れたりしているのも面白い。そもそも急性腹症の本自体あまりないし。

ブラッシュアップ急性腹症 第2版

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