min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

東直己著『旧友は春に帰る』

2011-04-24 17:57:36 | 「ア行」の作家
東直己著『旧友は春に帰る』 早川書房2009.11.20 第1刷 2,000円+tax

オススメ度:★★★☆☆

先月、たまたま押入れの中で見つけた東直己著“ススキノ探偵シリーズ”の第一作である「探偵はバーにいる」を暇にあかせて読んでみた。
この作家の初期作品である同書はある種の新鮮な魅力を発散させており、改めてこの頃の同氏の作品は良かったのになぁ、と感慨にふけったものである。
この“ススキノ探偵シリーズ”も本作をもって第10作目となるのであるが、タイトルにある“旧友”とはなんと第一作で登場したモンローであった。もし、上述のようにたまたま第一作目を再読しなかったら急には思い出せない存在であった。
そのモンローであるが、25年前のある事件を契機に彼女は沖縄へ行ったはずであった。そんな彼女から一通の手紙が届いた。手紙に彼女の携帯電話番号とメルアドが記されていた。連絡を取ると、いきなり「お願い。助けて」ときた。
いま泊まっているという夕張のホテルに向かうと、ホテルの前には見慣れた札幌のヤクザの車が2台止まっており、ロビーには地元ヤクザに混じり琉球なまりのヤクザ者が何人か屯している。
モンローの口からは「とにかく無事に北海道から出たい」ということで、理由の真相を打ち明けようとはしない。
それからというもの、俺の献身的とも言えるモンローへの手助けが行われる。なんでそこまでしてやるのか!?と思われるほどの「無償の行為」であり、これは彼女に対する愛情なのかはたまた友情なのか?
俺に限って言えば、そのどちらでもない。いわば「俺の流儀」「俺の生き様」とでも言おうか、“俺流自由人”としての筋の通し方とでもいおうか・・・・
ともあれ、モンローが逃げている理由は最後の最後まで明らかにされないのであるが、物語はそんな事の真相よりも、俺の周囲の常連たちの消息を語ることによって構成されていると言っても過言ではない。
ヤクザがらみで桐原が登場し、ホテルからの脱出にはアンジェラが車を運転する。
それに今やちょっとしたレストランのオーナーとなり、深夜のパーソナルなFM放送局を運営し自らDJをやる高田も健在であるし、北日の松尾も登場して情報元となる。その他諸々このシリーズで登場した人物たちとの交情がたくみに活写され、あいかわらず俺がススキノという狭い盛り場を舞台にしぶとく生き抜いている様が面白い。
いまや本シリーズの楽しみはススキノとここに集まる常連たちの“今”を知ることだけなのかも知れない。




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1 コメント

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Unknown (アリーマ)
2011-05-03 01:59:27
実はワタシもやっとここに辿り着いたところで・・・(笑)。
この作家、最近作はすべからく同窓会ノリになるんですね。
まあそれはそれで、独特な魅力はある、とは思います。
このノリは嫌いじゃないので、畝原のシリーズより好きです。
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