石田衣良著『ブルータワー』徳間文庫 2008.3.15初版 762円+tax
オススメ度★★★★☆
【世界を破滅させたものの名は<黄魔>ウイルス たった一人で殺人ウイルスと闘う平凡な男と冒険の物語】と本の帯にある。
さてその舞台なのだが200年後の未来の新宿であり、そこに現代から、主人公である瀬野周司はタイムスリップする。タイムスリップの方法が奇抜というか我々の想像を越えたものである。
彼は末期の脳腫瘍つまりガンに侵されており手術も受けられない状況に有る。その痛みが耐えられなくなる瞬間にタイムスリップする、というものだ。
ここで「なぁ~んだ、バカらしい!」と思ってしまえばそれまでの話で終わってしまうので、ここは著者石田衣良にだまって乗せられるしか術は無いわけだ。
著者である石田衣良氏には珍しく完全なSF小説なのであるが、巻末の解説を読むと同氏は元来SFがお好きであったとのこと、意外である。
200年後の世界は中国が東西に分裂し戦争をおっぱじめるのだが、追い詰められた西の中国がインフルエンザを改造した殺人ウイルスを生物化学兵器として使用したことにより、敵も味方も壊滅寸前の状況に陥れることになってしまった。
何故なら死亡率が8割を越えるこの殺人ウイルスの対抗ワクチンを誰も開発できないからであった。ウイルスの遺伝子構造に細工をしてワクチンが出来てもその時点で別のウイルスに変貌してしまう、というモンスターであったからだ。
さて、その200年後の世界にスリップする、と言っても瀬野周司の意識だけがスリップするわけで、取り憑く宿主というのがセノ・シューなる人物。
ブルータワーという2kmもの高さになる「ノアの箱舟」的な存在で、このタワーにいる限り殺人ウイルスの脅威から逃れることができる。
だがその世界は垂直構造がそのまま人間の階層社会を形成しており、内部では“階級闘争”の真っ只中にあるのであった。セノ・シューはその世界でのトップ30人の中に入るエリートの一人であった。
200年後の人々は悪魔のウイルスから逃れたい思いでせめて名前を厄除け代わりにするかのごとく、20世紀の暴走族が好んで使用する漢字を乱用する。
これではまるで劇画の世界のようで鼻白むではないか。
ま、そんなことはさておき、瀬野周司はなんでまたこんな世界に送られるハメになったのか?実は彼はこの破滅的世界を救う伝説的な救世主なのであった。
恋ありアクションありの大冒険活劇的要素をたっぷりと含んだ作者渾身の一作に、だまされたと思い読み進めると、それなりに楽しめるから不思議だ。
小難しい理屈を持ち出さずに石田衣良氏の壮大なエンタメをお楽しみあれ!
オススメ度★★★★☆
【世界を破滅させたものの名は<黄魔>ウイルス たった一人で殺人ウイルスと闘う平凡な男と冒険の物語】と本の帯にある。
さてその舞台なのだが200年後の未来の新宿であり、そこに現代から、主人公である瀬野周司はタイムスリップする。タイムスリップの方法が奇抜というか我々の想像を越えたものである。
彼は末期の脳腫瘍つまりガンに侵されており手術も受けられない状況に有る。その痛みが耐えられなくなる瞬間にタイムスリップする、というものだ。
ここで「なぁ~んだ、バカらしい!」と思ってしまえばそれまでの話で終わってしまうので、ここは著者石田衣良にだまって乗せられるしか術は無いわけだ。
著者である石田衣良氏には珍しく完全なSF小説なのであるが、巻末の解説を読むと同氏は元来SFがお好きであったとのこと、意外である。
200年後の世界は中国が東西に分裂し戦争をおっぱじめるのだが、追い詰められた西の中国がインフルエンザを改造した殺人ウイルスを生物化学兵器として使用したことにより、敵も味方も壊滅寸前の状況に陥れることになってしまった。
何故なら死亡率が8割を越えるこの殺人ウイルスの対抗ワクチンを誰も開発できないからであった。ウイルスの遺伝子構造に細工をしてワクチンが出来てもその時点で別のウイルスに変貌してしまう、というモンスターであったからだ。
さて、その200年後の世界にスリップする、と言っても瀬野周司の意識だけがスリップするわけで、取り憑く宿主というのがセノ・シューなる人物。
ブルータワーという2kmもの高さになる「ノアの箱舟」的な存在で、このタワーにいる限り殺人ウイルスの脅威から逃れることができる。
だがその世界は垂直構造がそのまま人間の階層社会を形成しており、内部では“階級闘争”の真っ只中にあるのであった。セノ・シューはその世界でのトップ30人の中に入るエリートの一人であった。
200年後の人々は悪魔のウイルスから逃れたい思いでせめて名前を厄除け代わりにするかのごとく、20世紀の暴走族が好んで使用する漢字を乱用する。
これではまるで劇画の世界のようで鼻白むではないか。
ま、そんなことはさておき、瀬野周司はなんでまたこんな世界に送られるハメになったのか?実は彼はこの破滅的世界を救う伝説的な救世主なのであった。
恋ありアクションありの大冒険活劇的要素をたっぷりと含んだ作者渾身の一作に、だまされたと思い読み進めると、それなりに楽しめるから不思議だ。
小難しい理屈を持ち出さずに石田衣良氏の壮大なエンタメをお楽しみあれ!
正直、とても楽しめました。