sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

「未知の鳥類がやってくるまで」

2024-01-25 | 本とか
だいぶ前に某SNSでフォローしている人がこの本のことを何か書いてらして、
とても興味深かったのですぐにわたしも買った本を、やっと今頃読んだんだけど(積読の沼が深い)
本当に本当に面白かった。わーっと興奮するのではなく、静かに沁みいるのでもなく、静かに興奮する感じ。

最初の「行列」という掌編は、粗筋というものもないスケッチ風の短い描写なのだけど、
ただただ、まばゆいほどのイマジネーションが次から次へと描写されていき、
この短くも幻想的な話を読んだ後では、もう2度とわたしの空は同じ空ではなくなってしまった。
これからわたしは青く広い空を見る時きっといつも、
金糸銀糸で織った美しい服の小さな子供や黒い毛の猿、異形の動物や動物でない生き物を探してしまうだろう。
この先ずっと、空を見るたびに、そのどこかを横切っている何かが今日は見えないかと探してしまうだろう。
ほんの10ページの小説に、わたしの空を一生変えてしまうようなすごいイマジネーションが詰まっているのです。
私が幻想小説慣れしていないせいでいちいち感動するのかもしれないけど…

国同士が詩で戦う話も、そう聞くと幼稚な設定に思えるけど幼稚なところはひとつもない見事な話になってたし、
何を聞いても答えてくれる人が出てくる話は(いわゆるホラ話なのかもしれないけどすごいイマジネーション)
自分もそういう人と巡り合いたいし、自分自身そういう風に物事の続きや始まりの前を
途方もないイマジネーションで紡ぎ出せる人になりたかったなと思ったりした。
他の短編もバラエティに富んで、不安や不穏の匂いのものもあれば どことなくのどかなものもあるけど、
どれも素晴らしくて、読んでいる間、自分の何かを広げてくれる文学というものに
とっぷりと浸れる至福の時間でした。
帯に書かれている言葉が本当であることに感心するけど
>空想とは無限であるということをしばらく忘れていた(岩井俊二)
>何でできているのかわからない、でも異様においしい謎のアメを、口の中で転がしながら、ずっとずっと溶けないでいてくれればいいのにと願う、そんな本。(岸本佐知子)

わたしが無知で普段ほとんど幻想小説やSFを読まないので知らなかっただけで、
作者の西崎憲さんはうちにも2冊くらいある文学ムック「たべるのがおそい」の編集長で
ファンタジーノベル大賞の受賞もされてる方だったのね。
翻訳と音楽もされる方のようです。

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