これの前の時間にに上映してる映画を見るつもりで
「イーダ」はその後ついでに見るつもりだったけど
前の映画が満席だったので「イーダ」だけを見るために時間つぶしをすることに。
なんとなく、がっかりしながら見たんだけど
いやいやいやいや、これは素晴らしかった!
細々した仕掛けがあるわけでもない、わりとシンプルな直球勝負なんだけど、
なんとも丁寧に完璧に作ってある。感服。
一番前の席しか空いてなくて見上げて見たので、もう一回見たいくらいです。
登場人物の誰にも全く共感できない映画もあって、
でも共感できるというのは常に必要なことではないので、
それはそれでいい映画もあるんだけど
「イーダ」は個人的に全部の人にしみじみ寄り添いたくなってしまう。
主役は二人の女性、あと男性がひとり。
もう一人過去にひどいことをしてしまった男性が少し出てくるけど
その暗い罪を背負った男性にさえ、憎しみは覚えず
ただ歴史が悲しいだけなのは、わたしが外側の人間だからかな。
場所的にも時間的にも。
ポーランドで迫害されたユダヤ人の話なのです。
でも歴史の大きな問題を扱っているけど、この監督は、
これはひとりの人間のアイデンティティの映画だというようなことを言ってます。
そういう風に見るといいとわたしも思う。
一人の小さな人間の中にも、大きな歴史は入っているものだし。
60年代初頭のポーランドで、修道院で育った孤児のアンナは、ある日
叔母の存在を教えられ会いに行くよう言われる。
そこで、自分がイーダという名のユダヤ人だと知り、
叔母と一緒に自分の両親の死の真相を求めて叔母の車で旅に出ます。
両親の最後、一緒にいた男の子、そして生き残った自分について・・・
途中、サックス吹きの男の子と知り合い、惹かれあったりするんだけど
そういう場面で流れるコルトレーンのジャズが、
端整でクラシックで静かなこの映画の画面に、
ちょっと不思議な感じにしっくりきて、とてもいいです。
この主役の二人の女性が、どちらも、わたしは好きです。
イーダはまだ青い若さにあふれている年だけど、
静かで控えめで、でも信仰ゆえか揺るがず強い女性のようで、
濁ったものを何も感じさせない人です。
この役者さんすごくいい。凛として中も外もきれいな人に見えます。
イーダの叔母さんは、きれいな人ではないけど、
何がそんなに重いのかつらいのか、一体何があったのか、その苦しさが、
やけくそな自暴自棄には見えないくらいの抑えた描写と演技で、
それがあのラストを一瞬唐突に思わせつつも納得させる。
この人の苦しさも、静かに胸を打ちました。
この叔母と姪の関係の中で、気持ちは通って
ほのかな暖かさが生まれるのは救いだけど、
でも決して誰にも癒せない傷のせいで、
特に叔母の方の心の中に残ってた、誰とも分かち合えない孤独や
何もかもへの拒絶、絶望、が寂しい。切ない。
最近見たポーランド映画といえば、3年ほど前の、やはり黒白の映画
→「木漏れ日の家で」を思い出すけど、
ああ、確かにあの映画と同じくらいの完璧さだったわ。
映像に全然破調がなく、厳かな雰囲気が漂いとてもきれいで、
どことなく舞台っぽくも見えて、不思議な感じの現実感と非現実感がある。
木の床を踏む硬い靴の音が耳元で聞こえそうに思う。
どのシーンも、絵になります。










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