原作を去年読んで面白かったので期待して見た。
寺島しのぶはわりと好きな女優だしこの役には合っていそうと思ったのに、
途中からしんどくなったのは主にヘアメイクと衣装のせいかなと思う。
1960年代後半からの話で時代に合わせてるのはわかるけど、
ほんの5歳くらい下の役を演じてるだけなのに何だか若作り感があって、
常にクルンと上がっている睫毛が不自然でいちいち気持ちに引っ掛かる。
厚化粧してないのに厚化粧感、カマトト感(死語?)が出て、
原作のヒロインより随分メロドラマ的な雰囲気になってしまったような。
ヘアメイク以外でも出家前後の盛り上げ方がやはりセンチなメロドラマで、
大人の恋愛の話なのに上目遣いの甘えた表情と演技が見ていてキツかった。
スチール写真で見ると中々いいんだけどねぇ。
一方で落ち着いた美貌の妻の役の広末涼子は期待してなかったのに思ってたよりよかった。
もっとしっとりしたクラシックな美人の女優がいいと思ってたんだけど、
前半のヘアメイクがもっさりしすぎてダメな以外は案外良いと思いました。
着物のシーンがもう少しほしかったな。
トヨエツが不倫をする作家の役をするのはドラマの「荒地の恋」でも見て
(こちらはねじめ正一の原作もかなり好きだしドラマもよかった)
こういう役にホント合うなあと改めて思った。
どちらも原作の主人公より男前すぎて別の話になりかけるけど、
魅力のある男の役だから仕方ないのか。
と、キャスティングの感想に終始してしまったけど、この映画の原作は、
ベストセラー作家だった瀬戸内寂聴と愛し合う既婚の作家井上光晴とその妻の話を
井上光晴の娘で同じく小説家の井上荒野が書いた本なのです。
もう、内容よりもそういうこと自体が既に興味深いんだけど
井上荒野の小説は前に何か読んで面白かったし、瀬戸内寂聴の小説や
その映画化されたものもいくつか見ていたので、この本も読んでみた。
思ったよりずっと淡々と書かれていて、
いやぁ、やっぱりすごいなぁ、よく書いたなぁと思ったのでした。作家魂か。
心理描写がほとんどない小説で、特に男の像ががいまひとつ掴めなくて
大きなことをたまに言う、酒の席では声がデカくガサツでうるさい振る舞いをする、
チャラチャラとファンの女性に手を出す、とはいえ無頼ではない、
そういう男の魅力が分かりにくかったけど
豊川悦司が演じるのはずるいよね。それだけで魅力的に見えてしまうもんね。
魅力的な女性二人にあれだけ愛されたのだから、本当はどんな人だったのかなぁ。
登場人物のキャラクターは「荒地の恋」の方が好きで、ドラマも大好きだったけど
映画はいまひとつでも小説としては「あちらにいる鬼」の方が好きかもしれない。
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