sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

「わたしのペンは鳥の翼」

2024-01-16 | 本とか
最近は新聞の書評や広告を見て本を買うことも多い。
職場で昼休みなどに新聞を読んでる時に気になって、そのまま同じフロアの本屋へ。
徒歩30秒くらい。近い。
書評になってるようは本は結構おいてあって、そのまま買えてすぐに読めるのはすごく良い。

この本は新聞の下の方にあった小さい広告で見かけて気になったけど、
本屋にはなかったのでネットでポチッと買いました。
最近は本屋の翻訳小説の棚がとても縮小されていて、なんならうちの本棚の方が多いくらいです。
わたしが若い頃は翻訳文学の棚は今よりずっと大きかったのになぁ…

さて、この本ですが短い掌編ばかりなのでお風呂で1、2編ずつ読んで2週間ほどで読了。
アフガニスタンの女性たちの書いた短編集です。
作者は18人で23篇。でも、状況的に作者紹介はできない、という。
2021年にタリバンがアフガン全土を支配する前に書かれた話なので、今の状況はもっともっと酷いけど、
この小説が書かれた頃も女性たちには十分ひどいことがたくさんありました。
現在のイスラム教の全てが女性の現代的な人権を認めていないわけではないと思いますが
原理主義的な政権や、あるいはもっと小さく保守的な村などのレベルでは大きく制限され
抑圧に苦しむ女性は多いように思います。
タリバン復権以前の女性たちのそういう状況を、ここではいくつもの視点と切り口から読むことができます。
でも日常のささやかなスケッチ風の話や希望を失わない話も少しはあって、
どこでも誰にでもそれぞれの日々の生活があるのだということが少し想像できるようになってる。
それって映画で見たムスリムの女たちの生活や姿のイメージを何度も思い出させて、
映画がなければうまく想像できなかったかもしれないなとも思いました。
映画や映像が小説から広がる想像力の邪魔になることも多々あるけど、
現実が想像より大きかったりカラフルだったり不思議だったりすることはよくあって(世界は広い)
フィクションでもノンフィクションでも、イスラム社会の話を映画で時々見てきたことが
わたしの場合、この小説を読んだ時の想像と共感を支えてくれました。

アフガニスタンの主要言語、ダリー語とパシュトー語で書かれたものを英語に翻訳されたこの本は
紛争などによって疎外された作家を発掘するプロジェクト「Untold」がアフガンの女性作家を公募し
100人200人の女性が大変な苦労と工夫をして送ってきた作品から選ばれました。
(プリントアウトした作品を持っていると危険に晒される可能性もあった)

窮屈だけど素敵なブーツを買ってもらった少女の話、
仕事に行くのに毎日文字通り命懸けで通勤をするテレビ局の女性、
男性上司に搾取されセクハラされる労働者女性、
最愛の夫を亡くし好きでもない夫の兄との結婚を強要される女性、
自爆テロをした少女の夢と幻想、
夫とその妻にいじめられ折檻される第二夫人、
なんとしても学校に行き学ぶことを励ましあった親友を亡くす女子学生…などなど、
絶望的な状況のつらい話が多いけど、それでも前を向く女性の話も少しだけあります。
昨日も今日もつらく明日なにがあるかわからなくても、それでも生きていく女性たちの短編集。
それぞれの作品は文学的な価値としては、ばらつきがあるように思ったけど
どれにも切実さが溢れ、女性たちの生活や人生を感じさせることに成功していると思う。
この短編集からいくつかをオムニバスで映画化したものが、すごくすごく見たいです。

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