sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:工作 黒金星と呼ばれた男

2019-10-10 | 映画


心斎橋でしかやってなくて、見逃してた「工作」をやっと宝塚の映画館で見た。
見逃した作品を近くの映画館で少し後でやってくれるのは、本当に助かる。

でもわたし、スパイ映画とかスリルとかサスペンスとか超苦手なので
見始めて途中までハラハラドキドキしんどくて仕方なかった。
あまり前知識なしに、スパイものだからアクションのある
スマートでスタイリッシュでスピードのあるタイプの映画かと思ってたんです。
同じファン・ジョンミンが出てたヤクザ映画の「新しき世界」みたいなのを想像してたのね。
でも全然違って、もっと重苦しい感じで、なんともじっくりと渋い映画でした。
ハラハラドキドキ部分も重苦しくて本当に疲れて、見にきたことを後悔しかけたけど
後半主人公が自分の任務に疑問を持ち始めたところからすごく面白くなって
ラストシーンは男の理想と友情に泣きました。うう。いい男たちだ。
いや、ほんと、ナイーブでもなんでもやっぱり、理想がなくちゃねと改めて思う。

主役のファン・ジョンミンはこれまで5本くらいの映画で見てきました。
上にあげた「新しき世界」ではチャラチャラしてむやみに明るいお調子者のヤクザを。
号泣映画「国際市場で逢いましょう」では時代に翻弄されながら
家族のためにひたすら働く良き息子、良き夫、良き父を、
「ベテラン」ではひょうひょうと大きな悪と戦う刑事を演じていて、
最初は特に気に留めてなかったもののいつのまにかすっかり惚れてしまった俳優さん。
すらりとしてバランスのとれた体格に、ちょっとぼんやりした優しそうな顔。
時々見せる、迷子のようなキョトンとした無垢な目がとても印象的で、好きだわぁ。

しかし、アクションもないし、暴力や拷問のどぎついシーンも一切入れずに
この長さを地味で渋く見せても退屈させなかったのには感心する。
恋愛要素もありません。めっちゃ硬派のかっこよさ。
俳優も脚本もいいけど、興味深かったのは北朝鮮の描写。
映画の中の北朝鮮の光景や金正日の大豪邸はどうやって撮ったのだろう?CG?と思ってたら
セット作ったのね。すごいリアリティ。いや北朝鮮行ったことないけど。メイキング画像↓


お話は、
南北朝鮮の緊張高まる1992年、軍人だった主人公は北朝鮮の核情報を得るための工作員に。
この辺、あっさり一瞬で描かれてて、スパイになるための逡巡や躊躇とか捨てたものとかが
一切描かれてなくて、最初キョトンとしてしまった。すぐにスパイとしての話になります。
コードネームは黒金星(ブラック・ヴィーナス)。香港映画っぽい。
事業家として北京に行き、北朝鮮のものが欲しいとあちこちでいいふらし
とうとう外貨の欲しい北朝鮮と接触できるようになる。
偉い人たちとつながって、とうとう金正日とも会うことに。
ここまでは、多少のドキドキはあるけど淡々と進むんです。主人公も別に苦悩はない。
どんな状況でも冷静に粛々と任務を果たしていく。
でもこのあと1997年の韓国で、野党の台頭で危機に面した政権が選挙に勝つために
密かにたくらんだ作戦に主人公が気づくところから、ぐんと面白くなります。
自分の理想も、そのためのこれまでの努力も、北朝鮮側の交渉相手との友情も
国の平和も、なにもかもを無駄にしてしまうその作戦に対して主人公は・・・

やはり、いい男は苦悩がよく似合う。
そして、軍事独裁政権は敵が必要なんだなぁと思う。
それは決して国民のためなんかじゃなく権力者の保身のためでしかないんだけどね。
嫌韓嫌中をあおる今の日本政権が何をしたいのか、よくわかる気がする。