sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:ブラインドスポッティング

2019-10-30 | 映画


友達が、いい!いい!と続けて二回見たりしてたので、じゃあわたしも見てやるか、と。
夕方の大雨のせいか、映画館も空いてた。
映画はすごい緊迫感で見て疲れたけど、そんなに緊迫しないで見たらよかった。
前情報なしで、褒める友達の言葉だけ信じて見に行ったので
次にどんな不条理なことや誤解や暴力や揉め事や絶望が出てくるのかと
すごくはらはらしながら、見てしまったのです。
予告編観ると、ユーモアのちシリアス、というか、シリアスさを際立たせるために
ユーモアの前振りをするタイプの映画かなと思うけど、実際の全体のトーンは
そんなに怖い感じにはならなくて地味なユーモアをそのまま受け取れば良かったみたい。
いい意味で緊張感を失わない映画になっていたということなのか、
個人的には緊張する映画はしんどくて苦手だけど、すごく良かったです。

たとえ黒人の街でも、黒人が誰でも抱えている危険や不安からは逃げられないし、
常に罪をかぶるのも罰されるのも黒人なのだということを、
3日のあいだに2人の主人公に起こること、感じ方の違い、などを通して描いてあります。
スパイク・リーっぽいと別の友達が言ってたけど、確かに少しそんな感じかな。
予告編では映画全体の大雑把な構図が見えた気がするけど、
映画本編はもっとずっと丁寧に描き込まれてます。
主演の男の子、すごくいい。この子のラップ調での言葉がすごく良い。
その親友の白人の子は短絡でバカっぽくて、友達のことを考えてない振る舞いに
最初からハラハラするけど、後半までそれは続きます。
幼馴染の親友としてわかり合ってるはずの二人。
でも、同じように貧しくて、同じように育ち生きていても、
白人側が気づかない場面でも、黒人側は差別による危険を忘れることはひと時もなく
常に骨身にしみて感じなきゃいけないということがよくわかる。
それに気づかず、黒人に同化してるつもりの白人の無頓著さ無神経さも。

一方で、白人の子も貧しい白人としてこの街で生きていくために、より肩を怒らせ
より黒人の価値観や言動を取り込もうと苦労はあるんだけどね。
でも、同じように貧しい虐げられた弱者だ仲間だという意識を白人にもたれても
黒人としては、何言うてるねん、って感じになるよね、そりゃ、と思った。
オークランドが地元で黒人のコリン(ダヴィード・ディグス)は保護観察期間の残り3日間を無事に乗り切らなければならない。コリンと、幼馴染で問題児の白人マイルズ(ラファエル・カザル)の2人は引越し業者で働いている。ある日、帰宅中のコリンは突然車の前に現れた黒人男性が白人警官に背後から撃たれるのを目撃する…。これを切っ掛けに、2人はアイデンティティや、急激に高級化する生まれ育った地元の変化などの現実を突きつけられ、次第に2人の関係が試されることとなる。コリンは残り3日間耐えれば自由の身として新しい人生をやり直せるのだが、問題児マイルズの予期できぬ行動がそのチャンスを脅かす…。
(公式サイト)
この覚えにくいタイトルは「絶対盲点」のことで、
主人公の元カノが見せる「ルビンの壺」の絵に関連しています。
一つの壺にも、二人の向かい合った横顔にも見える黒白のだまし絵。
タイトルとしてはいいと思うんだけど、日本では聞き馴染みがなくてわかりにくいのが残念。

映画の舞台となったオークランドについては、こだわりがあったようで以下サイトより
60年代の公民権運動が世間を騒がせるなか、オークランドはブラック・パワー・ムーブメントやブラック・パンサー党の中心地となったため、革新的な共同体意識が生まれ、アメリカの中でも独特な方向へと進むこととなる。現在では、白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系というアメリカで最も多様な人種が住む街となっている。結果、高級化が進んだオークランドでは、イキった人たち、ビーガン・フード・トラックや小洒落たアート・ギャラリーなどが増え、急激に高級住宅街と化した“新しいオークランド”は、今までの伝統や生活を脅かすものだった。

映画の中で新参のお気楽な白人との衝突が描かれますが、なるほどそういう背景なのね。