教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

歴史を学ぶこととは?―時間を認識する力を育てる

2021年01月06日 18時40分13秒 | 教育研究メモ
 歴史は時間の認識を可能にする。我々は、1分1秒の時間を日常的に認識できる。しかし、1日以上の時間を認識するには、いったん記憶を呼び戻し、それらを思考・解釈しなければならない。1年単位、10年単位、100年単位というように、時間の単位が大きくなればなるほど、我々は時間を認識することが難しくなる。それを可能にするのが歴史である。
 大きな単位の時間を隔てた記憶や、自分が実際に経験しなかった他者や社会の記憶は、歴史家の編集・解釈した歴史の物語や、史料を手掛かりにしなければ認識できない。自分の記憶や思い込みに頼るだけでは、長い時間を経てしまった真実に近づくことはできない。適切な物語や史料を適切に用いれば、事実をより詳しく深く認識し、真実に近づくことができる。歴史を学び、様々な過去の物語を理解し、史料操作の方法と資質能力を身につけることによって、我々はより長い時間を認識することが可能になる。
 我々は「今」という時間を認識することができるが、我々が生きている世界は「今」だけで構成されていない。世界は、1年、10年、100年を経た時間すなわち「過去」によって構成され、これから1年、10年、100年と経ていく時間すなわち「未来」を構成していく。「過去」を認識することは容易ではないが、歴史を学ぶことによって可能になる。1年、10年、100年の単位で時間を認識できるようになることは、「未来」を認識(予測)するために重要なことであろう。1年、10年、100年前を認識する能力は、1年、10年、100年先を認識する能力と関係しているのではないか。今を生きる人間は、歴史を学ぶことによって時間を認識する力を育て、過去と未来を見通すことを可能にするのではないか。
 歴史は、過去ー現在ー未来という時間を見通しながら、よりよく生きるために学ぶのだ。
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