老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

身近な言葉の語源  中国の故事などに関するもの その①  ~ 一衣帯水 ~

2024年02月06日 19時42分17秒 | 面白い言葉や語源など

 日本語の歴史からして、中国語や中国の故事などに由来する言葉が結構ありますが、その中には本来の意味を離れ、違った意味で使われている言葉も数多くあります。

 「一衣帯水(いちいたいすい)」もそのような言葉ですが、意味が判りにくいのは、発音する場合に(いちい)+(たいすい)ということが多いのですが、これではこの言葉の意味とは違うということです。

 意味上は「一衣帯+水」と切れます。
「一衣帯(=一つの帯)ほどの水」という言葉で、<一筋の帯のような狭い川・海。その狭い川や海峡をへだてて近接している>という意味になります。(広辞苑)

 

 出典は、李大師・李延寿によって成立した、中国南北朝時代の南朝の歴史書・南史の『陳後主紀(ちんこうしゅき)』で、原文は「我為百姓父母、豈可限一衣帯水、不拯之乎」です。

【読み下し文】では、「我、百姓の父母たるに、豈(あ)に一衣帯水を限り、之を拯(すく)はざるべけんや」 となり、その意味は、「私は、民衆の親の立場にあって、どうしてあんな細い川(揚子江)で隔てられているからと言って、その民を救わないでいられようか。となります。

、意訳しますと、「私は民衆の親の立場にある。隋と陳は長江に遮られているが、そんなものは一本の帯のように細いものだ。その川に遮られているからといって南朝の民を救わないでよいのだろうか。いや、そんな事はない。救わねばならない。」


 二国間の関係が注目を集める時期に、両国の関係が深いことを表す言葉として、しばしば使われる言葉ですが、川ならともかくとして、黄海や東シナ海のような広い海を「一衣帯水」というのは地勢的には少し無理があるのかも知れませんが、文化の面から見ればあり得るのでしょうね。(まさ)

※ この項については、「語源を楽しむ」(ベスト新書増井金典著)や<コトバンク>、<Hatena BLOG>などを参考にさせていただきました。