老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」の真実 ~続~

2017年10月14日 19時05分05秒 | その他
 昨日述べたように、大河内氏が言ったとされる“肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ”という有名な言葉には、意外なエピソードがありました。

 実際に発言されなかったとはいえ、原稿には記載のあったこの文言は、恐らく石井氏が推測されたように「大河内氏が漠然と記憶に残っていた言葉を、自分の言いたいことに合わせて適当にアレンジされた」のでしょうが、やはり大河内さんとしても他人の言葉なり文章を引用或いはその意訳を利用する場合は最低の確認と注釈が必要なことは当然でしょう。


 それでも尚、この言葉は私たち世代には未だに忘れられない不思議な響きを持っていると思います。

 即ち、この言葉が話題になった1964年3月と言うのは、私もそうなのですが大学入学と共に安保問題の渦中に巻き込まれ、連日デモに参加したりして、否応なく政治的な関心が強くなった世代が、何とか大学を卒業して社会人になる時期だったのです。

 この時に当たり、当時の東大の総長が“学生時代の貴重な経験を忘れずに、社会に出てもエリートを目指すのではなく、社会の動きに目を配り、底辺を見つめた行動をせよ”と呼びかけたメッセージだと思いましたし、私のように東大以外の大学の卒業生も、新聞で講じられたこの言葉を深く噛みしめたと思います。

 原文の“It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied”がどのような文脈の中で書かれたのかは判りませんが、少なくともこの文節だけを取り上げると、当時の卒業生に贈るメッセージとしては“肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ”というのはピッタリの意訳だと感じられ、この言葉の重みは私たち世代に深く印象に残っています。(まさ)