昨日このブログで触れた、有名な言葉“肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ”ですが、この発言と新聞報道には大きな間違いがあったようで、2015年の東大教養学部の卒業式で、学部長の石井洋二郎さんが 卒業生に送った式辞の中で、下記のように述べられているようですので少し長くなりますが紹介します。(http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/08/tokyo-university-speech_n_7022498.html)
①まず、この言葉は大河内氏自らの言葉ではなく、19世紀のイギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』という論文からの借用であり、大河内氏の式辞の原稿でもちゃんと、「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」となっていたようです。
②但し、原文は“It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied”で、『功利主義論』の日本語訳でも “満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい”となっており、“肥った豚”とか“痩せたソクラテス”という表現はないようです。
石井氏は、たぶん大河内氏が漠然と記憶に残っていた言葉を、自分の言いたいことに合わせて適当にアレンジしたのではないかと推測されています。
③更に原因は判らないようですが、大河内氏は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって実際には言っていなかったようです。 但し、草稿がマスコミに配布されていたので、そのまま報道されてしまった、というのが真相のようです。
この点については、私の同級生でこの卒業式に出席した記憶力の確かな友人に確認した所、「翌日新聞を見て“こんな言葉聞かなかったよな”と卒業生仲間で話題になった」との連絡がありましたので、その通りのようです。
このように、大河内氏が言ったとされる“肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ”という有名な語り伝えには、三つの間違いが含まれているわけで、この命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないにもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっているようです。
石井氏はこの経過を説明された上で、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせることになり、そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料に当たって真偽のほどを確かめようとはしなくなると、間接情報の恐ろしさに触れておられます。
確かに、石井氏の言われる通りで、私なども新聞やインターネットなどで情報を得ることが多く、出来るだけ他の情報源もチェックするようにしていますが、このような情報過多の時代では全てが正しい情報に基づいているという自信が持てない時も多々あります。
その都度全ての直接に生の資料に当たったりすることは難しいので、出来るだけ複数の情報源に当たり一層厳しい情報チェックを心がける以外にないでしょうが、政治分野や自分の知識の及ばない科学の分野などではそれにも限度があることを承知しています。
但し、それを危惧して意見を言えなくなる方が恐ろしいので、出来る限り間違いのない情報を得た上で、それに沿った意見発信を心がけて行くしかないでしょう。(まさ)
①まず、この言葉は大河内氏自らの言葉ではなく、19世紀のイギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』という論文からの借用であり、大河内氏の式辞の原稿でもちゃんと、「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」となっていたようです。
②但し、原文は“It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied”で、『功利主義論』の日本語訳でも “満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい”となっており、“肥った豚”とか“痩せたソクラテス”という表現はないようです。
石井氏は、たぶん大河内氏が漠然と記憶に残っていた言葉を、自分の言いたいことに合わせて適当にアレンジしたのではないかと推測されています。
③更に原因は判らないようですが、大河内氏は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって実際には言っていなかったようです。 但し、草稿がマスコミに配布されていたので、そのまま報道されてしまった、というのが真相のようです。
この点については、私の同級生でこの卒業式に出席した記憶力の確かな友人に確認した所、「翌日新聞を見て“こんな言葉聞かなかったよな”と卒業生仲間で話題になった」との連絡がありましたので、その通りのようです。
このように、大河内氏が言ったとされる“肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ”という有名な語り伝えには、三つの間違いが含まれているわけで、この命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないにもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっているようです。
石井氏はこの経過を説明された上で、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせることになり、そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料に当たって真偽のほどを確かめようとはしなくなると、間接情報の恐ろしさに触れておられます。
確かに、石井氏の言われる通りで、私なども新聞やインターネットなどで情報を得ることが多く、出来るだけ他の情報源もチェックするようにしていますが、このような情報過多の時代では全てが正しい情報に基づいているという自信が持てない時も多々あります。
その都度全ての直接に生の資料に当たったりすることは難しいので、出来るだけ複数の情報源に当たり一層厳しい情報チェックを心がける以外にないでしょうが、政治分野や自分の知識の及ばない科学の分野などではそれにも限度があることを承知しています。
但し、それを危惧して意見を言えなくなる方が恐ろしいので、出来る限り間違いのない情報を得た上で、それに沿った意見発信を心がけて行くしかないでしょう。(まさ)