あちこちで山吹の花が咲き始めました。目にも鮮やかな黄色の花が、日陰でも咲いてくれていますが、私には「ヤマブキ」には忘れられないエピソードがあります。
◆暫く前の事ですが、ある高齢者施設で中庭に空地があり何を植えようかと職員さんと相談していると、“ヤマブキを植えて欲しい”との意見がありました。
◆私は、ヤマブキといえば、あの太田道灌の逸話の「山吹」だと思い、“あの黄色の花が咲くヤマブキですね”と答え、職員さんも頷かれたので苗の手配をかけました。
◆翌日その担当者と会う機会があり、“ヤマブキの手配できました”と連絡した所、“良かった、私あのヤマブキで作るキャラブキが大好きなんです”との言葉があり、私は“???”。
おかしいと思い、再度確認して見ると、職員さんがヤマブキと呼んでいたのは、実は“ツワブキ”で、九州の一部などでは野生のツワブキをヤマブキと呼ぶことが判りました。
◆早速、苗の手配が変更できたので、事なきを得ましたが、ややこしい植物名もあり、自分の思いこみでの判断だけでなく、相手との確認が必要なことを改めて知らされた経験でした。
尚、ヤマブキについては、野生のフキ(山蕗)を指すこともあり、山吹/山蕗/ツワブキをはっきりと区別する必要があるでしょう。
(山吹)バラ科の植物で、黄色の一重又は八重の花を付けます。
・実を付けるのは一重の花だけで、八重咲きの山吹は実を付けませんので、太田道灌の逸話に出てくるのは八重の山吹でしょう。
・太田道灌といえば直ぐに思い出す、“七重八重花はさけども、山吹の実の一つだになきぞ悲しき”という歌を、太田道灌の作品と誤解されている方が結構多いのですが、この歌は後拾遺和歌集に収録されている兼明親王作の歌で、太田道灌が雨宿りに訪れた農家で、娘さんがこの歌を引用して、蓑が無いことを詫びたという故事で有名になりました。
・白い花を付ける、同じくバラ科のシロヤマブキという花もあります。
(山蕗)一般にフキと呼ばれているキク科の植物で(野生のものをヤマブキという所もあります)、春先に食べるフキノトウはこの蕗の花茎です。
(ツワブキ)同じく、キク科の植物で、黄色い花を付けます。
西日本に多く野生し、園芸植物としても楽しまれますし、キャラブキはこのツワブキの葉茎を煮込んだ料理です。上述通り、「ヤマブキ」と呼ぶ地域もあるようです。
※一重のヤマブキとツワブキの写真は青木繁伸(群馬県前橋市)撮影のものを引用させていただきました。(まさ)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/fd/f2a57ab2687564d6447d2532b29b3f2e.jpg)
お馴染みの八重のヤマブキ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/a4/625a83ae72fda19c14f999093ae6da32.jpg)
一重のヤマブキ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/c5/98cae54472d0e46788655e4042029796.jpg)
ツワブキ